50 グランドヒュドラ討伐
「シノブ! スキルスティールであの竜のスキルを奪うことはできないか?」
「やってみるでござる!」
シノブがオレの言葉に頷き答えた。
シノブのスキルスティールは3つの条件を満たすことで相手のスキルを奪うことができる。
①対象がスキルを使用する所を目視する。
②対象のレベルを上回る。
③対象に継続して1分以上触れ続ける。(対象が生命活動を停止していた場合は無効)
①と②はすでに満たしているはずだ。
[シノブ] レベル345
〈体力〉12880/12880
〈力〉11090〈敏捷〉15500〈魔力〉9690
〈スキル〉
(全状態異常無効)(薬物錬成)
(魔法・スキル付与)(獲得経験値10倍)
(スキルスティール)(同時詠唱)(暴食)
(各種言語習得)(異世界の絆〈1/5〉)
これが今のシノブのステータスだ。
ステータス的にはあの竜を圧倒的に上回っているのだ。
ちなみに、シノブのスキルがいくつか増えているのは(スキルスティール)を使って手に入れたものだ。
(同時詠唱)はユーリの持っていたスキルを
(スキルスティール)でもらったのだ。
その後(魔法・スキル付与)を使いユーリに返した。
スキル付与はシノブの持っているスキルを他の誰かに与えることができる。
しかも与えてもシノブのスキルは無くならない。
はっきり言ってチートである。
ただスキル付与は何でも無条件に与えられるわけではないようだった。
実際ユーリ達に(全状態異常無効)や
(獲得経験値10倍)のスキルを与えることは出来なかった。条件を満たしていないらしい。
オレも(スキルスティール)が欲しかったんだが付与出来なかった。
まあ今はそんなことはいい。
それよりもあの竜を倒すことが先決だ。
(スキルスティール)を発動させるには、あとは③を満たす必要がある。
「「「グオオアアアッ!!!」」」
正気を失って暴れ回る奴に1分以上触れ続ける······か。
結構難しそうだ。
だがそれなら足止めすればいい。
足止めに丁度良い奴らがいるしな。
オレはアイテムボックスからある物を取り出した。
「召喚! グラム、そして眷属達!」
オレがそう言うと目の前に巨大なゴーレム達が姿を現す。
[グラム] レベル123
〈体力〉17200/17200
〈力〉2120〈敏捷〉1060〈魔力〉880
〈スキル〉
(暴食)(自己再生)(限界突破)
(各種言語習得)
コイツは以前シノブとユーリが倒したという迷宮の守護者だ。
オレが取り出したのはダンジョンコア。
これに魔力を注ぐことで迷宮の守護者、および眷属を召喚し使役することができる。
今、召喚したのは守護者のグラムとミスリルゴーレムとアイアンゴーレムを五体ずつだ。
召喚するのにかなりの魔力を必要とするので、シノブが自分が使うよりオレが持っていた方がいいと渡してきたのだ。
他に魔導ゴーレムやロックゴーレムなどもいるが足止めにはこれで充分だろう。
ちなみに守護者はグラトニーゴーレムだからグラムと名付けた。
というより、いちいちグラトニーゴーレムと呼ぶのが面倒だったのでそう略しただけなのだが、いつの間にか鑑定で出る名前もグラムになっていた。
「マスター、御命令を」
グラムがオレに向けて言葉を発した。
エコーのかかった男だか女だかわからないような声だ。
グラムは初めから喋れたわけではなく、シノブのスキル付与で(各種言語習得)を与えてから言葉がわかるようになったのだ。
他のゴーレムは条件を満たしていないらしく付与出来なかったので喋れるのはグラムだけだが。
「眷属と一緒にあの魔物の足止めを頼む。倒さなくていい、動きを封じてくれ」
「了解マスター、命令実行」
オレの命令でグラム達ゴーレムが動く。
グラムのレベルは123。
ステータス的にはあの竜といい勝負だ。
初めて召喚した時はレベル105だったのだが子供達や冒険者、騎士のレベル上げに戦わせている内にグラムもレベルアップしたのだ。
どうやらオレ達人間のように普通にレベルアップするらしい。
「「「グオオオオッ」」」
アイアンゴーレム、ミスリルゴーレムが八つの首の注意を惹き、グラムが胴体を押さえつけた。
わずかにグラムの方が力負けしている。
だが足止めには充分だ。
「シノブ、今だ!」
「承知でござる!」
グラムが動きを押さえている間にシノブが竜の首の一つにしがみついた。
頭上にしがみついているので竜の鋭い牙は届かない。他の七つの首はゴーレム達が押さえる。
これで1分間耐えればいい。
「「「ガアアアッ!!!」」」
アイアンゴーレムが2体破壊された。
ミスリルゴーレムも何体か弾き飛ばされたが、こっちはなんとか耐えたようだ。
まあ破壊されても問題はない。
ダンジョンコアに戻して、しばらく休ませれば元通りに修復されるからな。
竜はシノブを振り落とそうと暴れるがグラムが押さえつける。
よし1分経ったぞ。
〈スキルスティール発動。(全属性耐性〈大〉)
(強化再生)を手に入れました〉
鑑定で見るとシノブのメニュー画面にそう表示されていた。成功したが(並列思考)だけは奪えなかったようだ。
スキルの使用する所を見ていないからかな。
〈(全属性耐性〈大〉)は上位スキル
(全状態異常無効)に統合されます〉
続けてそんな表示が出てた。
(全状態異常無効)って(全属性耐性〈大〉)の上位スキルだったのか?
だとしたら思ってた以上にすごいスキルみたいだな。
「とう! でござる」
スキルを奪ったシノブが竜の頭にオリハルコンの小太刀を突き刺した。
「「「グアアアッ!!?」」」
お、再生しないな。
奴のステータス画面からも(並列思考)以外のスキルは消えていた。
再生しなければもう大したことはないな。
「はあっ!」
アイラ姉が追い打ちをかけるように胴体に刀を突き刺した。もう奴の体力も尽きる寸前だ。
「アルケミアさん、トドメを! 今なら魔法一撃で倒せるはずだ!」
「え、ええっ!?」
強力な魔物は倒しても邪気を撒き散らすとかいう話だったし、トドメはアルケミアに任せた方がいいだろう。
まあオレ達も「聖」属性魔法は使えるから邪気を消すことはできるんだけど。
アルケミアは事態を飲み込めずオロオロしている。
「アルケミアさん、早く!」
オレがもう一声かける。
「わ、わかりましたわっ! ――――――――――ディヴァイン·ジャッジメント!!!」
すぐに気を取り直したアルケミアは素早く魔法の詠唱を始めた。
そして一気に「聖」の上級魔法を放った。
「「「グアアアッ!!!???」」」
聖なる光が降りそそぎ、竜を滅していく。
命の光を失いその巨体が倒れた。倒せたようだ。
死体はアイテムボックスにしまっておこう。
古の竜となると素材としても使えるかもしれないしね。オレのスキル(素材召喚)は魔物の素材は出せないんだ。
〈レベルが上がりました。各種ステータスが上がります〉
お、レベルアップした。
アイラ姉、シノブ、スミレもレベルアップしていた。
トドメを刺したアルケミアは特に大幅にレベルが上がっていた。
さて、竜は倒せたし頂上まであと少しだ。
聖女の試練ももうすぐ終わりかな。