418 心霊現象?
エルフの里にあるエイミとミールの実家に来たのだが、家の中に何者かの反応がある。
ただ、あると言っても反応が薄くて、はっきりしていない。どういうことだ、コレ?
「どうしたのですか、レイさん?」
「家の中に誰かいるっぽいんだけど······」
ミールの問いに曖昧に答える形になってしまった。探知魔法でこんな反応を見るのは初めてだから正直、本当に誰かいるのか自信が持てない。
「わたし達の実家は昔、住んでいた時から誰も近寄らなかったけど······。ハーフとはあんまり関わりたくないって」
地雷になりそうだから詳しく聞けないけど、エイミが言うには両親がいた時から、わざわざ訪ねる人も少なかったようだ。
学園長みたいにそれでも親しくしてくれる人もいたようだが、かなり少数派だったらしい。
まあ、それよりも今は家の中に誰がいるのかだ。
家や周囲の様子を見る限り、生活感はなく誰かが住んでいるとも思えない。
「――――――ん〜、ウチにはそれらしい気配は感じられんわ。主人はんの気の所為ちゃうんか?」
パールスも首を傾げている。
うーん、確かに探知魔法で見なければ、人の気配なんてまるで感じられない様子だ。
エイミとミールも久しぶりの実家の様子を確認したいようなので、とりあえず中に入ってみることにした。
家に鍵はかかっておらず、出入りは自由に出来るようになっている。
いきなり何者かが襲いかかってきても対処できるように、慎重に扉を開けたが、特に何も起こらなかった。
「ここが二人の実家か······」
家の中を見た感想は、良くも悪くも普通という印象だった。
貴族の屋敷のように豪華な物が飾られていることもなく、不要物は一切置かれてない少し寂しい感じだ。
まあ何年も空き家となっていたので、それが普通なのだろうけど。
エイミとミールが昔を懐かしみながら、家の中を見て回っている。
オレとパールスは二人の邪魔をしないように後に続いた。中は所々、埃が積もっていて何年も人の出入りがない状態だ。
今は探知魔法で反応もなく、誰かいるような気配はない。パールスの言うように気の所為だったのかな?
「それが二人の両親?」
二人の両親の寝室だと思われる部屋に、仲良く肩を並べている男女の絵が飾られていた。
この世界には写真がないから、思い出を残すために誰かに描いてもらったものだろう。
女の人はエイミとミールによく似ていて、二人が年齢を重ねて大人になったような容姿だ。
父親と思われる男性は肌が少し黒ずんでいる、長身の整った容姿で、かなりの美形だ。
父親は魔人族という話だが、優しそうな印象でエルフの隣に立っていても違和感はない。
お似合いのカップルに見えるな。
「そうです。父様と母様は子供だったワタシ達が見ても、少し引くくらいに人目をはばからずに仲が良かったですね」
「うん······どうして、あんなことになっちゃったんだろ······」
どうやら相当なラブラブカップルだったらしい。
そんな父親がエルフの里で暴れた挙げ句に、愛する妻を手に掛けることになるなんてな。
一体何でそんなことになったのだろうか?
――――――――――ガタンッ
そう考えていたところに別の部屋から物音が聞こえた。今のは気の所為ではなく、皆にも聞こえたようだ。
「隣の部屋からですね······。レイさんの言う通り、やはり誰かいるのでしょうか?」
感傷に浸っていたミールが表情を引き締めた。
エイミも同じように音のした方を警戒する。
「――――――ん〜、変やな。ウチには生物の気配は感じられへんで?」
パールスが言う。
生物の気配は感じられないって、もしかして幽霊でもいるのか?
ゾンビとかいる異世界だし、幽霊がいても不思議じゃない············のか?
改めて探知魔法で確認しても、やはり反応はない。
ネズミのような小動物や虫の反応も見られないので、確かに生物はいないっぽい。
立て掛けられていた何かがバランスを崩して、倒れただけかな?
一応、音のした部屋を確認しておこう。
今度はオレが先頭になって、エイミ達が後に続く。
問題の部屋に入ってみたが、やはり誰かいるわけでもなく何もない。
――――――――――!! ――――――――――!!
と思っていると、今度は部屋のあちこちからラップ音が響いてきた。
もう、どう見ても完全に気の所為じゃないな。
「わかりました、あそこに何かいます。(神眼)の効果を最大にすると見えますよ」
ミールが部屋の隅を指差す。
(神眼)はあらゆる物事を見極めることが出来るというスキルだが、そういえばあまり意図して使ってなかったな。
ミールに言われた通りにしてみると、部屋の片隅にさっきまで見えなかった白いモヤのようなものが現れた。
コイツが心霊現象の原因か?