表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
564/736

415 表面上の平穏

 王都から連れて来た人形娘(パールス)によって、エルフの里を覆っていた結界は解除され、先に進めるようになった。

 結界が消えても敵が現れる様子はないが、周囲を警戒しながらエルフの里を目指していく。


「――――――ウチもこのまま付き合うで〜。また結界あったらウチに任せてな〜」


 パールスもそのまま同行することになった。

 まあ、用が済んだからもう帰ってというのも酷い話だからな。

 パールスの現在のレベルは950で、オレ達の中でもかなり高レベルな部類なので、戦力としても頼りになる。

 サフィルスやヴェルデ、それにメリッサに比べたら勝手な行動も取らないし、そういう心配もあまりない。

 というわけで、パールスを加えて進んでいく。




 結界の先も森が続いている。

 若干、先に進むにつれて邪気が薄まってきている気がするな。

 邪気で満たされているのは精霊の森の方で、エルフの里自体はそれほどでもないのかな?


「学園長殿、このまま真っ直ぐに進めば良いのか?」

「ええ、もうすぐ道が拓けて、里の入口が見えるはずよ」


 アイラ姉の問いに学園長が答えた。

 同じような景色が続いていたので、ちゃんと進めていたのか怪しかったが、大丈夫のようだ。


 MAPを確認しても邪気の影響かわからないが、表示にノイズのようなものが走り、見づらいんだよな。

 完全に見えないわけじゃないんだけど。

 こんなことは初めてで、エルフの里がどうなっているのか不安を覚える。







 そうして先を進んでいくと学園長の言った通り道が拓けて、エルフの里の入口にたどり着いた。

 周りは森に囲まれ、大きな木で出来た家がいくつか見える。

 オレの中のエルフの里のイメージ通りの光景だ。

 他にも人族の町にあるような普通の建物も並んでいて、他種族を受け入れた生活をしているのもわかる。


 ただ気になったのは、ここから見えるエルフの里は思っていたよりも()()()()()だったことだ。


 普通というのは、魔物などに襲われて荒れ果てているわけでもなく、日常の穏やかな雰囲気だということだ。

 周囲を謎の結界で覆われて、邪気が蔓延している状況で、平穏な光景というのは逆に違和感しかない。


「見たところ、異常はないように見えるでありますな······」


 異常はないと言っているが、ルナシェアもオレと同じように違和感があるようだ。


「フム、何事もないのは良いことだがな······。油断はするなよ」


 とりあえずは状況把握のために、エルフの里に入ることにした。

 特に見張りがいるわけでもなく、すんなり中に入れた。エルフの里はそれなりに発展した町並みだ。





「お、外からのお客さんか? エルフの里にようこそ!」


 里の住人の姿もちゃんとあり、オレ達を見るなり声をかけてきた。

 友好的な様子で敵意は感じない。


「久しぶりに帰ってきたのだけど、何か問題は起きていないのかしら?」

「問題? 見ての通り、里は平和そのものだよ」


 学園長の問いに一般エルフはそう答えた。

 他のエルフ達も普通の様子で、何か起きているという感じはしない。

 こちらの心配は杞憂だったのだろうか?



「············絶対におかしいです。ワタシ達を見ても、なんの反応も示さないなんて」


 オレの後ろで、ミールがボソッつぶやいているのが聞こえた。

 エイミとミールは父親が里で事件を起こしたために、住人からかなり嫌われているという話だったはずだが、里のエルフ達は何か言ってくるようなことはない。


 エイミとミールを見ても、いきなり罵倒されたりすることもない。

 本来なら喜ぶべきことのはずだが、ミールには相当に異質に見えるみたいだ。

 エイミもビクビクしながら、里の住人達の様子を伺っている。



「フェニア!? それに学園長達まで······どうしてここに?」

「フェルお兄様!? よかった······無事だったのですわね」


 そう言って現れたのは、フェニアの兄であるクラスメイトのフェルケンだ。

 フェニアが兄の顔を見て安堵している。


「無事? 一体何の話だ?」

「フェルお兄様、学園再開までには戻ると言っていたではありませんか!? ずっと連絡も取れなくて本当に心配していたのですよ!」


 気丈に振る舞っていたが、明らかにフェニアは兄の無事を心配していたからな。

 泣きそうな顔でフェルケンに怒鳴っている。

 対するフェルケンは意味がわからないという表情なのが気になるが。


 鑑定魔法で確認してもフェルケンに異常は見られない。だが、違和感があるのは確かだ。



「フェルケン、これから長老様に詳しい話を聞きにいくから、貴方も一緒に来てくれるかしら? フェニア同様、私も貴方に聞きたいことがあるのよ」

「ええ、学園長。私は構いませんが······」


 学園長が有無を言わさぬ口調でフェルケンにそう言った。フェルケンは首を傾げているが、学園長の言葉に頷いた。



 思ってたよりも平和そうでよかったと言いたいが、やはり何が起きてもいいように、まだ警戒しておいた方が良さそうだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ