412 改めてエルフの里へ
エイミとミールを村に連れて行った後、オレは元の姿に戻って、何食わぬ顔で再び帰ってきた。
アイラ姉に勝手な行動を取ったことを怒られたが、正体がバレたわけではないようで助かった。
帰ってきた時、ルナシェアの視線が少し気になったけど、気の所為だよな?
「「ごめんなさい······」」
目を覚ました二人はアイラ姉のお説教を受けることになり、最後は素直に謝っていた。
二人の気持ちはなんとなく理解できるけど、やっぱり勝手な行動で心配させたんだからケジメは必要だろう。
「言いたいことはまだあるけど、ともかく二人とも無事でよかったわ」
学園長が二人の謝罪を受け入れた。
二人が見つかってホッとしている様子だ。
「貴女達の気持ちはわかりますけど、勝手なことをするのは関心しませんわよ。正義の仮面様に感謝すべきですわね」
フェニアも二人に対して悪く言わなかった。
フェニアも似たような行動を取ろうとしていたような気はしたが、敢えて突っ込まないでおこう。
それよりも正義の仮面という言葉に反応して、ミールのオレに向けてくる視線が痛かった。
エイミも何かを思い出して顔を真っ赤にしているし、もうあの姿になるのはやめた方がいいだろうな。
とはいえ、なろうと思ってあの姿になったことは一度もなく、いつの間にか勝手になっているんだよな······。
どうすれば、この呪いのマスクを捨てられるのだろうか?
「それにしても、レイさんや学園長達だけでなく、ルナシェアさんや神殿騎士の方々まで来ているとは思いませんでしたよ」
「改めてエイミ殿、ミール殿、ご無事で何よりであります。お二人にも現状の説明をさせていただくであります」
ミールがそう口にして、ルナシェアが二人に現在の状況説明をした。
まずは神託のこと。
エルフの里に近付くにつれて濃度を増す邪気、それによって神殿騎士達が体調を崩し、この村に引き返してきたこと。
そして傀儡兵と思われる集団のことなどなど。
「やっぱり、あの邪気の濃さは異常だったよね······。森に精霊様の気配もなかったし、何が起きてるんだろ······」
エイミ達も邪気の中で傀儡兵と遭遇したらしい。
傀儡兵達のレベルは70くらいで、エイミとミールには問題ない強さだったので追い返せたそうだが。
「二人は体調を崩したりはしなかったか?」
「あれ以上長く浴びていればわかりませんが、今のところは問題ありませんね」
アイラ姉の問いにミールが答えた。
強がりとかではなく、ステータスを見ても異常はない。やはりエルフは邪気に強いのかな?
「あまり悠長にしていられないでありますな。神殿騎士達は一時的にこの村に待機していてもらって、小生達は再びエルフの里に向かうであります」
どうやらアイラ姉の説得により、ソールドさん達はこの村に残ることを納得したようだ。
ソールドさんは一緒に行けない自分の不甲斐なさを嘆いていたけど、仕方無いことだろう。
神殿騎士達がいるのならエルフの里に近い、この村の心配はいらなそうだな。
「あの······わたし達は······?」
「一緒に行ってはダメでしょうか?」
エイミとミールがおそるおそる問う。
勝手な行動を取ったことは充分反省しているみたいだ。
「心配しなくても、初めから連れていくつもりだったわよ。でも、アイラさんにも言われただろうけど、もう先走った行動は取らないでちょうだいね」
学園長が二人の同行を了承した。
アイラ姉達も異論ないようだ。
もちろんオレも反対する理由はないし、これで心配ごとがなくなり、エルフの里の件に集中できるな。
皆、体調は万全だから準備が整い次第、すぐにエルフの里に向かうことにした。
「ところでレイさん。先ほどのお返しは後日、しますので覚悟しておいてくださいね」
ミールがそんなことを耳打ちしてきた。
先ほどのお返しとは何のことか、などと惚けても意味はないだろうな······。
どさくさ紛れに忘れてくれるかと期待したが、そうはいかなかったか。
エイミとミールが戻ってきてホッとしたけど、新たな心配事が増えてしまったかな。
まあ、ミールもそんなセリフを言えるくらいには余裕が出来たみたいだし、ポジティブに捉えておくことにしよう。