410 仮面の人物の新たなお仕置き?(※)
※(注)引き続き変態男が登場しています。
(エイミside)
精霊の森に入ると、霧で視界が一層悪くなってきた。森の中なのに精霊様の声も聞こえず、気配もまったくない。
嫌な予感がどんどん強くなってくる。
や、やっぱり一度引き返した方がいいんじゃないかな?
そう言おうとした時、ミールが足をつまずき転んでしまった。
けど、ミールの目の前に何かあったみたいで、それがクッション代わりとなって怪我しないで済んでいた。
でも何にぶつかったんだろ?
霧が少し晴れて、前の方が見えるようになる。
「ひぃやあっ······!? あ、貴方は!?」
ミールがぶつかった物の正体がはっきり見えた。
正確には物ではなく、わたし達がよく知る人物だった。黒いマスクに下着一枚の姿をした男の人······。
な、なんでこの人がここにいるの!?
しかもクッション代わりとなってミールを支えていたのは、仮面の人の下着だった。
つまりミールは仮面の人の下半身に顔面から······。
「やっと見つけましたよ、お嬢さん方。怪我はありませんか?」
仮面の人がわたし達にそう声をかけた。
え、もしかしてわたし達のことを捜していたの?
でも、どうして······?
「レ······正義の仮面さん、どうしてこちらに?」
体勢を整えたミールが仮面の人に問いかけた。
あんなことになってたのに、よくそんな冷静にしていられるね······ミール。
「貴女達がここにいるのがわかり、急いで駆けつけて来ました。お二方がいなくなって、他の皆さんも心配していましたよ? さあ、帰りましょう。最寄りの村に皆さんも待機しています」
他の皆さんっていうのは、レイ君や学園長達のことだよね?
レイ君達もエルフの里を目指して、この近くまで来ているみたい。
やっぱり勝手な行動はマズかったんじゃないかな?
「そのことに関しては申し訳なく思っていますが、ワタシ達もジッとしていられなかったんです。謝罪は後ほどしますから、先に進ませてもらえませんか?」
ミールの気持ちもわかるけど、一度レイ君達と合流した方がいいんじゃないかな?
ミール、冷静に見えて結構焦ってる気がするし。
「そうはいきません。今の貴女は冷静さを失っています。焦る気持ちも理解できますが、一度頭を冷やすべきです」
「ワタシは冷静でいるつもりですけど」
わたしも仮面の人の言う通りだと思うよ。
でもミールの気持ちも理解できるんだよね。
あの時の真実がわかるかもしれないんだから、焦っちゃったりもするよ。
「では無理にでも連れ戻すことにしましょうか。お二方とも他の皆さんを心配させた罰としてお仕置きする必要もありそうですし」
仮面の人は実力行使でわたし達を連れ戻すつもりみたい。というかちょっと待って。
お仕置きって······それって、まさか?
「残念ですが、正義の仮面さんのお仕置きはワタシには通用しませんよ? こんな時でなければ寧ろ望むところですけど」
いやいや、待って待ってミール。
わたしは平気じゃないし、望んでもいないよ?
「それならば貴女は別の趣向でのお仕置きとしましょうか······とうっ!」
仮面の人がそう言うと、何も持っていなかったはずの手からロープが現れ、ミールに向けて放った。
ロープはまるで生き物のようにミールに絡みつき、縛り上げた。
よくわからない独特な縛り方で身体を強く締め付けていて、すごく痛そう······。
「う······くっ、こういう趣向ですか? ワタシにこんな趣味はないのですけど、これはこれで······」
なんかミール、気持ち良さそうじゃない?
なんだかノリノリになってるような気がするし、いつの間にか仮面の人のペースに乗せられてるよ。
「さあ、貴女はもっと表情を動かした方がいいでしょう。これに耐えられますかな?」
「え、何を······? ひゃうっ!? ちょ、ちょっと待ってください······それは反則······」
仮面の人が何をするつもりなのかと思ってたら突然、縛り上げられたミールが奇声(?)をあげた。
よく見るとミールを縛っているロープがウネウネ動いて、身体をくすぐっている。
魔力操作でロープを動かしているのかな?
というか、お仕置きってそういうのもあるんだ······。
ミールはくすぐりには強いはずなんだけど、仮面の人の攻撃には耐えられないみたい。
「ひゃうっ······くくっ······ま、待ってください············レイさ······くふっ、ひ、はははっ」
うわあ······こんな時に言うことじゃないけどミールが声をあげて笑ってるところを見るの初めてかも。
なんだかすごく新鮮······。
そのまま仮面の人がミールをくすぐり続けた。
しばらくするとロープの動きが止まっても、ミールはくすぐったそうに痙攣していた。
「あ、ひっ······ワタシが、悪かったですから······も、もうその辺で······ふふっ、やめ······」
「これでお仕置きは完了です。皆さんを心配させたことを反省してください」
とうとうミールが降参して負けを認めた。
こんなことをしていたからか、さっきまでの暗い気分が吹き飛んじゃったよ。
なんだかんだでミールも納得したみたいだし、一度戻ってレイ君達と合流した方がいいよね。
そう思っていたら仮面の人が今度はわたしの方に近付いてきた。
「さあ、貴女にも皆さんを心配させた罰が必要でしょうな。お仕置きを受ける覚悟はよろしいですかな?」
え? わ、わたしも······!?
た、確かにミールを止められなかったし、一緒についてきちゃったんだから同罪かもしれないけど。
ま、まあ······少しくすぐられるくらいなら······。
「貴女は通常のお仕置きで済ませましょうか。では、お覚悟を」
そう言って仮面の人がゆっくりと距離を縮めてきた。え、通常のお仕置きってまさか······?
待って待って、それはちょっと······。
ミ、ミールと同じお仕置きじゃダメなのかな!?
わたしはミールと違ってそれは慣れてないよ!?
頭が混乱して、うまく言葉が出ないわたしに構わず仮面の人がどんどん近付いてくる。
正確には仮面の人の下の部分がもう目の前に······。
「ひぃやあああーーーーっっ!!!???」
わたしは仮面の人の通常のお仕置きを受けて、そのまま意識を失った。