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408 有益な情報

 邪気を浴びて体調を崩した騎士達を休ませるために、最寄りの村まで引き返した。

 幸いにも重症者はいないので、しばらくすれば全員完全回復するだろう。

 ここはエルフの里から一番近くの村だが、まだここまでは邪気の影響は出ていない。



「ソールド殿も他の騎士達も、すでに軽い体調不良くらいに回復している。一応、薬と治癒魔法を使っておいたが、命の心配はなさそうだ」


 アイラ姉が騎士達の現状を話す。

 邪気を浴びたということで、何か特殊な症状を引き起こさないか心配したが、問題ないみたいだな。


「神殿騎士は皆、邪気に対しての耐性は高いはずでありますが、先ほどの邪気の濃度は異常でありました」


 リヴィア教の神殿騎士達は、聖女ほどではないが女神の恩恵を受けているようで、そういった状態異常系の耐性は高いらしいが、それでも体調を崩してしまうくらいヤバい濃度だったのか。

 これでは体調が回復しても、もう一度邪気を浴びれば再び倒れてしまうだろう。


「聖女様のルナさんはともかく、レイ君やアイラさんも大丈夫そうね」


 学園長がオレ達の身体を気遣ってくれた。

 オレもアイラ姉も状態異常系なら、スキルのおかげで問題ない。


「学園長とフェニアは、本当に大丈夫なの?」


 心配なので、一応聞いてみた。

 レベル的に二人は神殿騎士達とそんなに変わらないはずだが、邪気の影響はまったく出ていないように見える。


「アタクシ達エルフは精霊様の加護を受けていますから、病気の類いのものには強いのですわよ」


 フェニアがそう答えた。

 ということは神殿騎士達が受けている女神の恩恵よりも、精霊の加護の方が効果は上なのか。



「じゃあ、神殿騎士達はこの村に待機していてもらって、オレ達だけでもう一度エルフの里に向かう?」

「そうすることも考えた方がいいでありますな······。長く浴びていれば犠牲者が出る濃度でありましたし、あの場に足を踏み入れるのは、耐性が低い者には自殺行為でありますな」


 ルナシェアが難しい表情で考える。

 聖女を守るべき神殿騎士達が、その聖女を置いて安全な場所で待機というのは、ソールドさんとかは納得しないかもしれないな。

 無理してでも付いてくると言い出しそうだ。


 考え方を変えればエルフの里に近く、邪気の影響を一番に受けかねないこの村を神殿騎士達に守らせる、ということにもできるけど。

 そう言ってソールドさん達を納得させるか?



「そういうことも考慮して、今後のことをソールド殿達と相談してくる。レイとフェニアは村人から情報を集めておいてくれ。くれぐれも先走った行動を取らぬようにな」


 アイラ姉、ルナシェア、学園長は今後の話し合いのため、騎士達の休憩場に戻っていった。

 オレとフェニアはそういう話し合いでは基本、やれることはないので村人から何か有益な情報を得られることを期待して、村の中を周ることにした。


「フェニア、エルフの里のことが心配かもしれないけど、今はできるだけ情報を集めることにしよう」

「大丈夫ですわ、レイさん。お父様やフェルお兄様なら、きっと里を魔王軍の手から果敢に守ってくださっていますから」


 本当ならすぐにでもエルフの里に向かいたいだろうけど、フェニアは力強くそう答えた。

 エイミとミールも、フェニアのようにしてくれればよかったのだけど。




 この村はそれほど大きくなく、話を聞いて回るだけなら、そんなに時間はかからない。

 余所者には冷たい、閉鎖的な村というわけでもないので、割とすんなり村人から話を聞くことができた。

 聖女のお供だったことも影響しているのかもな。


「さあ、特に妙な話は聞かないねえ」

「最近、あまりエルフの姿を見かけなくなったとは思っていたが」


 この村は里の近くということもあり、エルフと交流があるらしいが、最近は音沙汰がないとのことだ。

 とはいえ違和感を感じるほどではなく、言われてみればというくらいだそうだが。


 つまり、この村にはエルフの里で異変が起きていることは伝わってないようだ。

 邪気の影響もほとんどないし、やはりエルフの里周辺のみで異変が起きているみたいだな。





 ある程度村を回ったが、有益な情報はあまり得られそうにないと思っていたところで、気になる話を聞けた。


「そういえば騎士様達が戻ってくる少し前に、エルフの姉妹が来ていたな」

「急いでいたみたいで、すぐに出ていったがな」


 ついさっき、エルフの双子の姉妹が村に寄ったらしい。特徴を聞くと、まず間違いなくエイミとミールのことだった。二人もすでにこの周辺まで来ていたのか。

 時間的に見て、今すぐ追えば見つけられるかもしれない。


「悪いフェニア、ちょっと二人を連れ戻してくる」

「レイさん、それならアタクシも······」

「二人を見つけたらすぐに戻ってくるから、フェニアはここで待ってて」


 アイラ姉には先走った行動を取るなと言われているが、放っておくわけにはいかない。

 フェニアにはアイラ姉達への伝言を頼んで、オレは二人を追うために村を出た。




 探知魔法の索敵範囲を最大まで広げると、反応があった。オレ達が傀儡兵と遭遇した場所から、そう離れていない場所にエイミとミールと思われる反応がある。

 ただ、二人の周囲が多数の敵対反応に囲まれている。多分、傀儡兵に襲われているのだろう。




 すぐに助けに行こうと駆け出したオレの手には、()()()()が無意識に握られていた。





次回、ちょっとシリアスじゃなくなるかもしれません。

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