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406 不穏な気配

 エルフの里へ向けて王都を発ち、順調に進んでいた。聖女が率いているだけに、関所などもフリーパス状態で通れている。

 魔物も襲ってくる様子はないし、このまま何事もなければ良いのだが。



「今更だけど、学園長。エルフの里ってどういう所なの?」


 雑談がてらに、学園長にエルフの里について聞いてみた。キリシェさんからある程度聞いてはいるけど、やはり出身者からも聞いておきたい。


「そんなに特別な所でもないわよ。森に囲まれた自然豊かな土地ってくらいかしらね。他種族を受け入れるようになってから発展してきているけど、王都に比べたらまだまだよ」


 王都が都会なら、エルフの里は田舎ってところか。

 幻獣人族の里も自然に囲まれた所だったし、似たような感じかな?


「エルフの里には世界樹っていうのがあるって聞いたけど、それは特別じゃないの?」


 まあ、幻獣人族の里にあった神樹と同じような存在なのだから、特別だろうけど。

 ゲームなんかでも世界樹といえば生命の源だったり、世界創造とか色々と凄い力を持つものだからな。

 葉っぱを使って、死人を生き返らせることとかはできないだろうか?


「そうね、特別と言えば特別かしらね。この世界のすべての生命を創り出したとされている大樹よ。エルフはその世界樹の守り人として遣わされたと言われているわ。もっとも伝承でそう言われているだけで、本当なのかはわからないのだけど」

「え、わからないの?」

「エルフの歴史は何千、何万年、何十万年と続いているからね。そこまで昔の記録は残っていないのよ」


 まあ、エルフは長寿の種族のイメージがあるし、歴史が長くても不思議じゃない。

 つまり世界樹も、少なくとも何十万年も前から存在しているということかな。


「フム、世界樹という大層な名を持っているから、何か特別な力がありそうだな」


 アイラ姉もオレと同じことを思ったようだ。

 神樹以上の力を秘めているんじゃないかな?

 もしかしたら世界樹も迷宮化したりするのだろうか。世界樹の迷宮······この呼び方はなんか色々と危険な気がするのは何故だろうか。



「そうね。けど、世界樹にはエルフの中でも長老様や限られた人しか近付けないようになっているから、私にも世界樹の力については詳しくはわからないのよ」


 やはり一般人などは簡単に近付けないようになっているようだ。

 まあ、神樹もそんな感じだったから当然といえば当然かな。


 神樹とどう違うのか気になるし、世界樹をこの目で見てみたいと思ってたんだけどな。









 それから休憩に小さな村をいくつか経由しながら、国境を越えてエルフの里のある領域までやってきた。

 しばらくは特に変わりない風景が続いたが、エルフの里に近付くにつれて、不穏な雰囲気となってきた。


「かなり濃密な邪気が広がっているでありますな······皆、足を止めるであります!」


 ルナシェアが周りの神殿騎士達に行軍を止めるよう指示を出した。

 素人目に見てもヤバいと感じるくらいに、濃い邪気が充満している。

 並の人間ではこの空間にいるだけでも厳しそうだ。事実、神殿騎士達の中にも体調を崩して、今にも倒れそうな人達がいる。



 ルナシェアが「聖」魔法で邪気を浄化するが、範囲が広すぎて、すべてを浄化しきれない。

 オレとアイラ姉も手伝ったが、一時的に浄化できてもすぐに邪気が元通りに充満してしまう。


 邪気発生の元を絶たなければ、これを消すのは無理っぽいな。


「フェニア、学園長。体調は大丈夫?」

「ええ、私は大丈夫よ」

「アタクシも問題ありませんわ、レイさん」


 オレは二人に問いかけた。

 二人とも言葉通り、特に問題はなさそうだ。

 エルフは邪気に対して耐性が高いのかな?

 (全状態異常無効)スキルを持つオレとアイラ姉も、もちろん問題ない。

 ルナシェアも聖女だから邪気への耐性が高く、平気そうだ。


「ソールド殿は?」

「ぬぅぅ······すまぬ、少々身体が重く感じる······」


 だが、他の神殿騎士達はそうはいかない。

 アイラ姉がソールドさんを気遣うが、目に見えて顔色が悪い。

 これは思ってた以上にヤバい事態になっているかも。





「············これより先に進むことは許さぬ」


 体調を崩した神殿騎士達を介抱していると、濃密な邪気の中から異様な集団が姿を現した。

 魔人族と思われる集団だが、身体に継ぎ接ぎしたような縫い目があったり、歪な見た目をしていて、さらには身体のあちこちに妙な紋様が浮かんでいたりと、見るからに普通ではない。


 オレ達に対して警告のような言葉を発しているが、目に光がなく正気とは思えない。

 こいつらが神将ダルクローアの傀儡兵って奴らか?



 正直、想像していたより不気味な軍団だ。


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