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400 エイミとミールの父親

「そうそう、これも伝えておかなあきませんな。ダルクローア様が率いる傀儡兵の中に、あんさんらの父親の姿もありましたわ」


 レッテルの爆弾発言に、エイミとミールの表情が変わった。特に滅多に表情を変えないがミールが、今は目を見開いて驚いている。


「············どういうことですか、レッテルさん? 父様はすでに亡くなっているはずですが」


 ミールが深呼吸をして、無理矢理に自分を落ち着かせてからレッテルに問う。

 ミールの言うように、二人の父親はエルフの里で暴れて、最後には討たれたという話だったはずだ。

 オレは直接その場面を見ていたわけではないが、そう聞いている。


「バルフィーユ様から聞いとるけど、あんさんらの父親は元魔王候補のデューラ様やろ? 傀儡兵の中に明らかに同じ容姿の方が確認出来たんやわ」


 確か二人の父親は魔人族であり、名前はデューラだと聞いた覚えがある。

 元魔王候補とか初耳だが。

 もしかして二人の父親って、魔人族の中でも結構偉い人だった?

 いや、今はそんなことはどうでもいい。


「さっきから気になっていたけど、傀儡兵ってなんなんだ?」


 エイミとミールが目に見えて混乱していたので、オレは別の疑問を口にした。

 こっちもこっちで気になっていたからな。

 名前からして操り人形みたいなのを想像する。

 ゴーレム系の軍団だろうか?


「ダルクローア様に精神を破壊されて、自分の意思を失った者や無理矢理に強化改造された同胞達の············スンマセン、これ以上の情報開示は勘弁してください。あの方の情報喋り過ぎると、ワイも傀儡兵のお仲間入りさせられかねないんで。ともかくダルクローア様の意のままに動く強力な兵隊達、と思っといてください」


 ダルクローアについて話して、そのことがソイツの耳に入るとレッテル自身、マズイことになりかねないらしい。これだけ情報を話して今更な気はするが、それなら仕方無いか。


 とりあえずは、なんとなくだが想像ついた。

 要はダルクローア(そいつ)の操り人形みたいな集団ってことだな。

 人形といってもトゥーレミシアの人形(ドール)軍団と違い、なんとなく嫌悪感を覚えるが。



「父様は生きていて、ソイツに操られているということですか?」

「スンマセン、そこまではなんとも······。それらを調べてる最中にエルフの里を覆う結界が発動したんで、ワイの情報もここまでなんですわ」


 レッテルも情報収集の途中でそういう事態になってしまい、今はどうしようもないようだ。



 確かエイミとミールの話では父親は魔人族だが、家族想いの優しい人物だったと聞いている。

 そんな人物が突然、エルフの里で暴れて惨劇を引き起こした。

 まるで何者かに操られていたように。


 以前、学園長から聞いた話では、洗脳や精神魔法の類いで操られた形跡は確認出来なかったらしいが、事件の黒幕と思われる人物は神将という魔王を上回る実力者だ。

 痕跡を残さずに対象を操れても不思議じゃないな。


 つまりは、二人の父親はダルクローアに操られてエルフ達を殺害したのか。

 最終的に討たれたと聞いたが、その後死体がどうなったのかは聞いていない。

 母親と同じ墓には入れなかったという話だったか。


 実は死んではおらず、今もダルクローアの操り人形として生かされている状態なのか?

 それともすでに死んでいて、ゾンビのような存在なのか?


 最悪なのは、二人の父親は娘であるエイミとミールにも本性を隠していて、ダルクローアとは最初からグルで、自分の意思でエルフの里を陥れようとしていた、という可能性もあるが······。

 二人が慕う父親が、そんな人物ではないと思いたいな。



「お父さん······」

「父様······」


 さすがにエイミとミールにとって、今の情報は衝撃的だったのだろう。

 どう言えばいいのか、かける言葉が見つからない。



「ワイからの話は以上になります。情報料はバルフィーユ様よりすでに受け取ってるんで、ご安心を。ワイは種族差別しない主義なんで、報酬さえ貰えれば、どんな情報でも手に入れまっせ。これを機会に今後ともよろしゅうお願いしますわ」


 レッテルが礼儀正しく一礼する。

 良い情報······かはわからないが、色々と知ることができた。悪い奴じゃなさそうだし、情報屋としてはかなり有能みたいだな。

 クラスメイトの報道部所属のリーフィと気が合いそうな気がする。



「ほな、ワイはこれで失礼します。さ、一式ちゃん、行こか」

「············要望を受諾」


 レッテルに声をかけられ、初めて一式と呼ばれている女の子が口を開いた。

 感情が見えない機械的な声だな。

 一式は雑な感じに、レッテルの服を掴んだ。


「······次の目的地への移動を開始します」

「ちょ、一式ちゃん······!? もうちょい丁寧に扱ってく······」

「それでは······離脱します」


 一式の背中から翼が現れ、レッテルを掴んだまま飛び上がった。まるで荷物を運搬しているみたいだな。

 抗議の声をあげるレッテルを無視して、あっという間に飛び去っていった。

 レッテルの悲鳴が木霊していた。

 なかなかに良いコンビなのかもしれない。




 それよりもレッテルからの情報により、エルフの里がマズイ状況なのがわかった。

 エイミとミールの父親も関わっているみたいだし、放っておくわけにはいかないな。


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