閑話⑯ 〈おまけ〉魔道具専門店〝トゥラヴィス〟での出来事 〜前編〜(※)
※(注)引き続き変態男が登場します。
下ネタ続きでスミマセン。
(リーアside)
今日のお店の営業はお休みにして、わたしは新作の魔道具作りに励んでいます。
今でも売り上げは上々なのですが、やはりもっと上を目指したいですからね。
残念ながら、お姉様の作った魔道具の売り上げはいまいちですし。
そういえば先日、お姉様の魔道具を試験運用してくれる学生の方がいましたわね。
お姉様の魔道具を使って色々な魔法実験を行うと言っていましたが、大丈夫でしょうか?
まあ、お姉様の作った物はイレギュラーな効果を発揮したりしますが、致命的な事故が起きたことはありませんし、評判も悪くないので、そこまで心配していませんが。
――――――――――カランカランッ
誰か店に入ってきたようです。
店はお休みなので、買い出しに行っていたお姉様が帰ってきたのでしょうか?
ずいぶん早いような気もしますが。
もう少しで新作の魔道具作りも一段落するので、そうしたら休憩を取ることにしましょう。
さて、こちらの魔道具に魔力を送り込んで······。
――――――――――ムニュッ
おや? 何やら触り心地が変ですわね。
こんな柔らかく、弾力のある物ではなかったはずですけど······?
なんだか妙に温かいですし。
わたしは顔を上げて、魔道具を確認しました。
「それは魔道具ではありません。手を放してもらえますかな?」
「············っっっ!!!???」
いつの間にか目の前に半裸の男性がいたので、思わず叫んでしまうところでした。
そこにいたのは、以前にもお会いしたことのある正義の仮面と名乗る人物です。
そして、わたしが手にしていた物は、この方の言う通り魔道具ではありませんでした。
魔道具作りに集中していたため、気付きませんでしたわ。
わたしが何を掴んでいたかを口にするのは恥ずかしいので、想像にお任せします。
················初めて触れてしまいました。
もちろん、まともに見たこともありませんけど。
「······今日はお店はお休みなのですけど、何か御用でしょうか?」
わたしは平静を装い、仮面の人物に問いました。
先ほど誰かが店に入ってきた音はお姉様ではなく、この方だったのですね。
本来、半裸(ほぼ全裸)の不審者が現れたら、町の衛兵に即通報するものですけど、この方は一応、面識がありますし、それなりの有名人ですからね。
「実は学園より、貴女の店の魔道具で問題が起きたため、そのことについてお話しに来ました」
仮面の人物の話によると、例のお姉様の魔道具を試験運用してくれることになった学生の方が、学園内で問題を起こしてしまったそうです。
幸い、大事には至らなかったそうですけど、学生に高価な魔道具を簡単に渡さないようにとのことです。
やはり問題が起きましたか······。
正直、予想はしていたので驚きはありませんが。
ですが後日、学園に謝罪しておいた方が良さそうですわね。
「それは申し訳ありませんでしたわ。一応、学生の方には注意事項を伝えていたのですが」
「魔道具の実験をしたいと言うのであれば、私が協力しましょうか? 見たところ、新作が色々とあるようですので」
仮面の人物から意外な提案がありました。
確かに新作の魔道具はまだまだあり、協力してくれるというのは大変嬉しい限りです。
「よろしいのですか? 新作のほとんどは魔物退治や護身用など、攻撃的な物ばかりなのですが」
学生の方に渡したのは、あくまでも暴走しても大きな事故にはならないであろう物ばかりでした。
今、わたしが作っている物は、冒険者ギルドにでも試験運用を依頼しようと思っていたのですが、協力してくれるのなら手間が省けますわ。
わたしの作った物はともかく、お姉様が作った魔道具はスウォンさんくらいしか進んで使ってくれませんからね。
「ええ、構いませんよ。ならば私は不審者役を務めましょう。魔道具を駆使して私を撃退してみてください」
仮面の人物は自信満々に言いました。
不審者役というか、見た目は完全に不審者ですけどね。まあ、この方は相当な実力者です。
攻撃用魔道具の実験にはうってつけと言えるでしょう。
「そういうことでしたら、お言葉に甘えさせていただきますわ。では外の実験用スペースに移動しましょうか。実験はそちらで行いますから」
今回作った魔道具は、格上の相手を撃退するための物ですから、この方にも通じるかもしれません。
ついでに、魔道具を駆使してこの方の正体を暴いてしまうというのも面白いかもしれないですわね。