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396 学園長へ報告

 放課後になり、オレとアイラ姉、そしてエイミとミールと一緒に学園長室に訪れた。

 神樹の精霊の言っていたことについて相談するためだ。


「お待ちしておりました、マスター。どうぞ、お入りください」


 学園長室の扉をノックすると、長い黒髪をなびかせたメイドさん、グラムが出迎えてくれた。

 グラムは学園で働くメイドさん達の長で、ディリーとアトリ達の上司にあたる人物だ。

 オレが一応、グラムのマスターなのだが今は学園長の秘書として活躍している。


 昨日の内に学園長に相談があると、グラムに伝言を頼んでいたので、オレ達が訪ねてくるのを学園長もお待ちかねだったようだ。




「話は聞いているわ。それで相談したいことって何かしら?」


 学園長室に入り、リプシースさんに軽く挨拶を済ませる。学園再開に向けてかなり忙しかったらしく、学園長の表情には、少しばかし疲労が残っている。


「お忙しそうなところ申し訳ない、学園長殿。実は私達も休学中に色々あり、気になる情報を手に入れたので学園長にも話しておきたいと思いまして」


 アイラ姉が事情を説明する。

 休学中にスミレの故郷に行っていたこと、神樹の迷宮での出来事、そして魔人族の神将トゥーレミシアから聞いた情報などなど。

 直接、神樹の精霊の話を聞いたのはエイミとミールなので、二人からも色々と補足してもらった。




「············スミレちゃんの故郷、それに神樹。そんなことがあったのね」


 情報が多すぎたようで、学園長は頭の中で一つ一つ整理している。


「学園長殿、エルフの里とやらで何か異変が起きたような情報はありませんか?」

「正直、学園関係の仕事が忙しかったから、詳しくはわからないわね。エルフの生徒が何人か里帰りした話は聞いているけど、緊急事態が発生したような連絡は、特に受けていないわ」


 連絡する手段はいくつかあるようで、エルフの里で異変が起きた場合、学園長の耳に入るようだが、少なくとも今はエルフの里で何か起きたような連絡は入っていないみたいだ。



「エイミ、ミール。精霊様がそう警告していたのね?」

「はい。今すぐ何か起きるような言い方ではありませんでしたが、警戒するべきだという話です」


 学園長が改めて二人に聞き、ミールがそう返した。エイミもウンウンと頷いている。



「わかったわ。私からも里に連絡を取って確認しておくわ。ありがとうね二人とも。レイ君、アイラさんも」

「私達の力が必要であれば、遠慮なく言ってほしい。出来る限りの協力を約束します」


 ある程度情報交換をして、オレ達は学園長室を後にした。緊急事態が起きているならアイラ姉が力を貸すと約束していたし、オレも役に立てるなら協力しようと思う。


 今のところは何か起きたような様子はないみたいだし、学園長からの情報待ちになるな。






 その後はアイラ姉とも別れて、オレ達は学生寮の自室に戻ってきた。

 昨日からまた学生寮に住んでいるが、懐かしさを感じるくらいに、この部屋に馴染んでいたみたいだ。

 学生寮(こっち)では、再びエイミとミールとの同室での生活となる。



「エルフの里のことも気になりますが、ワタシ達はワタシ達のやるべきことをしましょう。明日からは本格的に授業が再開されますからね」


 ミールの言うように、明日から再び学園生活が始まる。エルフの里のことは学園長に任せて、オレ達は明日の準備を進めた。


「エイミやミールはエルフの里のことは心配?」


 二人は精霊の警告をどう思っているのだろうか?

 二人にとって、エルフの里はあまり良い思い出がない所だったはずだからな。

 親しい知り合いもいないようだし。


「正直に言ってしまえば、あまり思い入れもありませんし、気にしてはいませんね。ただ、里には母様の墓があるので荒らされるようなことがないかは心配です」


 ミールが淡々と答えた。

 エルフの里に母親の墓標があるのか。

 まあ、当たり前か。

 けど、現状では二人は母親の墓参りに戻ることすら難しいようだ。


 ちなみに詳しくは聞かなかったが、父親の方は()()()()()なので、墓標がエルフの里に置かれることは許されなかったらしい。


「························」


 両親の話をしているせいか、エイミは暗い顔で俯いてしまっている。

 もう、この話題はやめた方がよさそうだ。


「姉さん、いくら久しぶりのレイさんとの同棲生活が楽しみだからって緊張しすぎですよ。もっとリラックスしてください」

「え······ち、ち、違うよ!? わたしが考えてたのは、そのことじゃなくて······!? レ、レイ君とまた一緒になるのも、少しは楽しみにしてたけど······い、いや······そうじゃなくて············!!?」


 ミールの言葉に、エイミがハッとしたように慌てふためきながら答えた。

 テンパってはいるが、いつもの調子を取り戻して、少しは元気が出たみたいだ。

 ミールもわざとあんなふうに言ったのかな?

 



 そうなんだよな。

 またエイミとミールと同室、つまりは女の子と一緒の部屋で過ごすんだよな。

 あわあわしているエイミを見ていたら、なんだかオレまで緊張してきてしまった。

 再開された学園生活は平穏に過ごせるだろうか?



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