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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑦ 13 マティアの決断

――――――――(side off)――――――――


「俺の目的、悲願は前魔王フィーネ様の復活だ」

()魔王? それって話しでよく聞く、当時の勇者に討ち倒された魔王のことかな?」


 ユウがガストに問い返す。

 ガストは過去の勇者を思い出し、苦々しい表情を見せる。


「そうだ。強さと気高さを兼ね添えたあの御方は、当時の忌々しい勇者の卑劣な罠に嵌められ、その身を封印されてしまわれたのだ」

「封印された······ってことは前魔王(その人)は死んだんじゃなくて生きているんだ」

「その通りだ。そしてフィーネ様が復活なされれば、今の魔王など蹴落として、再びあの御方の天下となる······!」


 ガストは勇者に倒されたという過去の魔王を崇拝しているようで、崇め讃える言葉が止まらない。

 ユウは真剣に話を聞いていたが、テリア達はガストの前魔王に対する、あまりの崇拝ぶりに引いていた。




「ア、アンタが前の魔王を尊敬しているってのはわかったわ。けど、それとマティアが何の関係があるのよ?」


 黙って聞いていたら話が終わりそうにないので、テリアがたまらず口を挟んだ。


「マティアはフィーネ様の肉体の一部と魔力を与えられ、作り出されたクローン生命体だ。マティアのデータ解析を行い、同様の波長を追えばフィーネ様の封印された場所を特定することができる。そしてマティアの()()()()()すれば、封印を解くことも可能だろう」

「クローン? マティアの能力を解放?」


 ガストの言葉にユウが首を傾げた。

 それ以上はさすがに詳しく話す気はないようだが、今の話からマティアの力で前魔王が封印された場所を特定し、そして封印を解くことができるということが推測出来る。



「一人で盛り上がっておるが、そんなことをさせるわけなかろう。過去の魔王が復活すれば、魔人族の脅威が増すことになるのじゃからな!」


 シャルルアがたまらず叫ぶように言った。

 だが、ガストは涼しい表情だ。


「お前達にとっても悪い話ではないはずだが? フィーネ様は()()()()と違い、他種族に対して寛容だ。無意味に侵略し、陥れることはないだろう」

「何言ってるのよ。過去の魔王も他種族を侵略してたから、勇者に倒されたんでしょ。どっちも対して変わらないわよ」


 テリアに言わせれば、過去の魔王も今の魔王も他種族の脅威であることに違いはない。


「まあ、ぼく達は過去の魔王にも、今の魔王にも会ったことがないからね。どっちがいいかなんて判断できないよ。ぼくから言えるのは、これ以上マティアを好きにはさせない、それだけだよ」


 ユウが聖剣を突きつけ、そう言い切った。

 ガストは不安そうにユウに触れている、マティアに目を向けた。


「マティア、お前はどうしたい? 俺と共に来るか、その小僧と共に行動するか。好きな方を選ぶがいい」

「············アタシは······うっ······」


 ガストに睨みつけられると、マティアは頭を抑えて言葉に詰まる。


「ユウ様ぁ、そいつ()()()()を洗脳しようとしてますよぉ!」

「マティアよ、其奴の言葉に惑わされるでない!」


 ミリィとシャルルアがガストを止めようと動く。

 しかしユウがそれを止め、マティアの言葉を待った。


「マティアはどうしたい? マティアの好きなように答えればいいんだよ」

「············ユウ」


 ユウに声をかけられ安心したのか、マティアの表情が緩んだ。

 そしてガストの目を見てハッキリ答えた。


「アタシはユウといっしょにいたい。ユウだけじゃない。テリアたちも、さわがしいけどいっしょにいるとあんしんできるから」

「······騒がしいは余計でしょ。まあ、いいけど」


 テリアがボソッと突っ込む。


「クククッ······まさか俺に対してそこまで言うとは。やはり()()()されたのは間違いないようだな」


 マティアが拒絶の反応を見せたというのに、ガストは興味深そうにするだけで、落胆した様子はない。

 寧ろ、予想通りといった反応だ。


「マティアはこう言ってるよ? それでもマティアを無理に連れて行くつもりかな?」

「いや、先ほども言ったように今の俺は戦う術を持ち合わせていない。力ずくで連れて行くのは厳しいだろうな」


 やけに素直な様子を見せるのを逆に不審に思うユウ達だが、ガストは本当に抵抗する意思がないようだ。


「――――――あれ? ガストはそれでいいの、いいの? 実験体ってのに、あんなに執着していたのに?」


 プルルスが首を傾げて問う。

 ちなみにグライスの方は、まだ両手と膝をつき落ち込んでいる。


「出来れば手元に置いておきたいが、お前達が使い物にならん状況では諦めるしかなかろう。すでにフィーネ様を探し出すのに必要なデータは取ってあるので、当面の問題はない。それにこの小僧······今代の勇者と行動を共にさせた方が()()()()()()なるかもしれんしな」


 意味深な笑みをうかべるガストに、テリア達はさらに不信感を募らせる。


「ユウ、絶対コイツ何か企んでるわよ」

「ここで倒しちゃった方がいいですよぉ、ユウ様ぁ!」


 テリア達が魔力を高めて戦闘態勢に入る。

 ガストが何を企んでいるのかわからないので、油断ないように構えた。


「そもそもマティアを諦めたのが本当だとしても、お主をむざむざ逃がすつもりはないわ! ここで捕えて、後でたっぷり尋問してくれるぞ」


 シャルルアも同様にガストを逃さない態勢だ。

 ジャネンも無言で構えている。



 予想通りと言わんばかりにテリア達に取り囲まれて尚、ガストは余裕の態度を崩さなかった。



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