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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑦ 9 簡易研究所

――――――――(side off)――――――――


 プルルスの案内で、マティアを拐った魔人族の男がいるという場所までたどり着いた。

 ジャネンは霊獣(カオスレイヴン)を建物の入口付近に降り立たせる。


 簡易研究所と呼んでいた建物は、名の通り簡素な造りをしていて規模も大きくなく、少し広めの屋敷といった雰囲気だ。




「レーデの森にあった施設と同じ感じね。あれより造りはかなり質素だけど」

「入口はやっぱり鍵がかかっていますねぇ」


 テリアが建物を見てそう言い、ミリィは入口の扉をガチャガチャいじっている。

 鍵はユウとテリアの(物質具現化)スキルで簡単に作り出すことができるので、扉はすぐに開かれた。


「――――――おお〜、ユウ君達って便利なスキル使えるんだね、だね。ボクは鍵開けるの面倒くさくて、そういう扉はいつも破壊しちゃってるのに〜」

「あははっ、無理矢理開けるのは良くないと思うよ、プルルス?」


 プルルスの言葉にユウは笑いながら答えたが、他の皆はあえて突っ込まなかった。




 ユウ達は警戒しながら中へと侵入する。

 建物の中も必要最低限な物しか置かれていなく、殺風景な部屋ばかりだった。


「研究所という割に、ほとんど何もないのう。見張りくらいは何かしら居ると思っておったのじゃが······」


 人の気配も生活感もない様子に、シャルルアは逆に不気味さを感じていた。


「いや、さっそくお出ましのようだぞ」


 少し広めの部屋に入ったところでジャネンが言う。それと同時に部屋に置いてある容器の中から何かが飛び出してきた。

 以前にレーデの森の施設で見たのと同じ、何種類もの生物を継ぎ足したような、異形の姿をした魔物だ。


「前に見たのと同じね······」

「相変わらず気持ち悪い魔物ですねぇ」


 テリアとミリィが魔物の姿を見て嫌悪感を示す。


「なんじゃコヤツらは······。どう見ても普通の魔物ではないぞ」

「どうやら、いくつもの魔物を組み合わせて、新たな生物を作り出そうとしたようだな」


 初めて見るシャルルアも二人と同じ反応をして、ジャネンは冷静に魔物を分析する。


「――――――この魔物、ガストは失敗作とか言ってたね、ね。確か、細かい命令は聞かないみたいだけど、今みたいに動くものに反応して襲いかかるらしいから、侵入者対策には一応使えるって話をしてたかな、かな?」


 プルルスが異形の魔物について、そう話した。

 ユウ達は全員魔物を前に身構えているが、プルルスは呑気な様子で見守っているだけだ。

 ユウ達の邪魔も手助けもするつもりはないようだ。



――――――――――!!!!!



「この程度の魔物、戦うまでもない。せめて苦痛なく眠らせてやろう」


 ジャネンの瞳が光り、睨まれた魔物達が次々と石化していく。

 ジャネンは(魔眼)スキルで睨んだ相手に、あらゆる状態異常を与えることができる。

 格下の相手ならば、どんなに数が多くても問題ない。


「すごいよ、ジャネン。さすがだね」

「大したことではない」


 ユウの称賛の言葉に、ジャネンは表情を変えずに答える。満更でもないように見えるのは気のせいではないだろう。


 しかし次の瞬間、表情を変えた。



――――――――――!!!!!



「がはっ······!?」

「ジャネン!?」


 どこからかユウに向かって飛んできた魔法攻撃をジャネンが庇い、まともに受けてしまう。

 ジャネンはかなりの勢いで壁に叩きつけられた。


「敵か······どこじゃ!?」

「周りには何もいませんよぉ!?」


 シャルルアとミリィが周囲を見回すが、敵の姿が見えない。


「僅かだけど気配はあるわ。どこ!? 出てきなさいよ!」


 テリアが敵の気配を感じたが、肝心の位置が掴めない。



「ジャネン、大丈夫?」

「······ああ、この程度問題ない」


 ユウに支えられてジャネンが立ち上がる。

 少々ツラそうな様子だが、大事に至る傷は負っていないようだ。


「そこだね、ジャネンへのお返しだよ!」


 ユウが聖剣エルセヴィオを構え、何もない空間を斬りつけた。聖剣の光を浴び、隠れていた存在が姿を現した。



「――――――それは聖剣? やはり「聖」属性は厄介」


 現れたのは灰色の髪をなびかせたプルルスによく似た少女······グライスだった。


「――――――ああ〜、不意打ちは卑怯なんじゃないかな、グライス?」

「――――――プルルス、勝手に遊びに行った挙げ句、侵入者を排除するのではなく、連れて来るとはどういうつもり?」


 呑気な態度のプルルスに対して、非難するように睨みつけるグライス。

 かなり怒っているのが見て取れる。



「髪の色は違うけどプルルスにそっくりね······。コイツがマティアを拐った、グライスっていう奴なの?」


 テリアがいつでも攻撃できるように弓を構える。

 他の皆も戦闘態勢に入った。


「ねえ、マティアはどこにいるの? そっちの奥の部屋かな? もう一人、魔人族の男もいるんだよね?」


 ユウの問いにグライスは答えず、全身に魔力を集中させた。



「――――――侵入者は全員排除する。死にたくないのなら、今の内に出ていくことを勧める」




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