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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑦ 4 もう一方の襲撃

――――――――(side off)――――――――


 殺戮人形(キラードール)と呼ばれる少女プルルスと戦うために、ユウは聖剣エルセヴィオを手にして前に出た。

 ユウはテリアとジャネンには手を出させずに、一人で戦うつもりのようだ。


「ユウ、一人で戦う必要ないわよ! いきなり攻撃仕掛けて来るような奴、全員でとっちめてやればいいわ!」

「大丈夫だよテリア、ぼくに任せてよ。それにさっきの魔法を見る限り、この子は範囲攻撃に優れているから、一対一の方がやりやすいと思うんだ」


 テリアがそう言って弓を構えるが、ユウが手で制した。


「わかった。任せるぞ、ユウ」

「ちょ、ちょっとジャネン!? 本当にユウ一人で戦わせる気なの!?」

「ユウを信じてやれ。今のユウは神将(ナークヴァイティニア)を倒したことで大幅に力を上げている。殺戮人形(キラードール)にも遅れを取らんはずだ。それに、(それがし)達では寧ろユウの足手まといになりかねん」

「··················わかったわ」


 ジャネンがそう言うとテリアも渋々頷いた。


「負けるんじゃないわよ、ユウ。ヤバそうになったら、すぐにでも手を出すからね!」

「大丈夫、負ける気はないよ、テリア。それにぼくも試してみたかったんだよね。エンジェさんに色々と勇者の剣技を教えてもらったからさ」


 テリアの言葉にユウは不敵な笑みで応えた。

 なんだかんだでユウも少し好戦的な部分があるようだ。テリアとジャネンは霊獣と共に、少し距離を取って見守ることにした。




「――――――もういいかな、いいかな? 戦う準備はできた、出来た?」


 プルルスはもう我慢できないといった様子だ。

 しかし、黙って攻撃せずにユウ達の話が終わるのを待ってくれていたので、好戦的だが悪い子ではないのかもしれない。


「うん、待たせたね、プルルス。ぼくも本気で戦うよ、そっちこそ準備はいいんだね?」

「――――――もっちろ〜ん! それじゃあ行くよ、いくよ!」


 そうしてユウとプルルスの激しい戦いが始まった。














 一方、龍人族の都ではエレナ達が大通りにある広場で休憩していた。


「むぅ〜······ちょっと食べすぎたですぅ」

「マティアと一緒にあんなに食べるからよ。やっぱり食べすぎたら、ミリィでも太るんじゃない?」


 ちょっと苦しそうにお腹を擦るミリィに、エレナが呆れながら言う。

 同じくらい、いや、それ以上に食べていたマティアはまだまだ物足りなさそうにしているが。


「まあ、平和で何よりじゃな。少しくらい羽目を外してもバチは当たらぬじゃろう」


 シャルルアが言う。

 少し前までは国が滅亡の危機に瀕していたので、シャルルアは平和な今の状況を心より楽しんでいた。




「··················?」

「ん? どうしたのじゃ、マティアよ」

「············いやなかんじがした」


 マティアの様子がおかしいことにシャルルアが気付き、声をかける。

 マティアはキョロキョロと周囲を見回す。


「嫌な感じ? どういうことじゃ? 妾には、特に不穏な気配は感じぬが······」


 シャルルアがマティアに気のせいだろうと言いかけた時、異変が起きた。

 突然、マティアの身体が浮き上がった。

 表情変化の乏しいマティアも一瞬、驚いた様子を見せていたので、浮き上がったのはマティアの能力によるものではない。


「何事じゃ、マティア!?」


 咄嗟にシャルルアがマティアの身体を掴む。

 しかし浮き上がる力が強く、シャルルアも一緒に引っ張られる形となってしまう。


「マティア、シャルルアさん! 今助けるわ、ホーリーブレス!!」


 エレナが「聖」属性魔法を放った。

 「聖」魔法は二人を傷付けず、悪い力のみを除去する効果がある。

 それによって、マティアを浮き上がらせていた元凶が姿を現した。



「――――――ステルスを解かれた? 強い魔力を確認」


 翼を広げた女性がマティアを抱えていた。

 魔法で姿を隠していたようだが、「聖」魔法を浴びたことで見えるようになっていた。

 女性はマティアを放して、地上に降りる。


「何者じゃ、お主は!?」


 シャルルア達も着地して、警戒しながら女性に問う。女性は白と黒の中間の灰色の髪をなびかせた、シャルルア達とあまり変わらない年と思われる容姿で、女性よりも少女という表現の方が似合う。

 翼も髪と同様に、少し濁ったような灰色だ。



「――――――私はグライス。そちらの実験体を回収するように指示を受けている」


 女性はグライスと名乗り、マティアを指差した。


「実験体? 何の事じゃ······?」

「シャルル()、あぶないですよぉ!」


 さらに問いかけようとしたシャルルアに、グライスは問答無用で魔法攻撃を放ってきた。

 ミリィがシャルルアを押し倒して、ギリギリ避けることが出来た。


「す、すまぬ······ミリィよ」

「気をつけて! その人、秘めてる魔力が普通じゃないわ」


 エレナがいつでも対処出来るように前に出て、周囲に魔法障壁を張った。


 シャルルア達は前回の神将との戦いによって大幅にレベルアップをしているため、もはや並の攻撃では簡単には傷付かないくらいに強くなっている。

 それでも今のグライスの攻撃は危険なものだった。

 エレナの言う通り、グライスはありえないくらいの力を秘めているようだ。



「――――――邪魔をするなら容赦はしない。邪魔者は皆、殲滅する」


 グライスが一瞬にして危険なレベルの魔力を両手に込めて、エレナ達に向けて魔法を放った。




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