閑話⑮ 3 二人の目的
アイラ姉はゲンライさん達と今後の話し合いのために、幻獣人族の里に戻って行った。
ディリーとアトリ、そして他のメイドさん達は外の作物管理に向かった。
なんでもアイラ姉に捕まる前に、アーテルとアルブスは結構暴れたようで、外の畑などがメチャクチャになっているらしく、その後始末をするためだ。
「マスターはのんびりしててくださいですです」
「これはわたし達の役割ですので、マスター様の手を煩わせるわけにはいきません」
オレも手伝おうとしたのだが、二人にそう言って止められてしまった。
まあ、オレはアーテルとアルブスの面倒を見なきゃいけないから、その言葉に甘えておこうかな。
そういうわけで屋敷に残ったのは、オレとシノブにサフィルス、そしてアーテルとアルブスだけになった。
一応、もう暴れないと約束させたので、拘束は解いてあげた。
「えーと、とりあえず自己紹介をしようか。オレの名前はレイ。一応、サフィルスの主人ってことになってる」
「拙者はシノブでござる」
「――――――あたしはアーテル」
「――――――アタシはアルブスです」
お互いに自己紹介をした。
アーテルは直立不動で、アルブスはペコリと頭を下げながら名乗った。
ちなみに紹介の必要がないサフィルスは、黙ってオレ達のやり取りを見ていた。
サフィルスと顔付きが似ているのはヴェルデやパールスと同じだが、他の人形娘達は若干の違いはあり、見分けることができるくらいだったのだが、この二人は双子みたいに瓜二つだ。
もっともアーテルは黒髪、アルブスは白髪、そして服装もそれぞれ黒と白のドレスを着ているので、見間違うことなく一発でわかるが。
色が同じなら見分けるのは困難だろう。
さて、それよりも何をしようか?
幻獣人族の里にいるメリッサ達を呼ぶべきかな?
けど、そうすると手のかかる人物が増えて、オレとシノブだけじゃ対処しきれないかもしれないんだよな。
「オレに興味があるとか言ってたけど、具体的にどうしたいのかな?」
とりあえず二人に何をしたいのか聞いてみた。
あまり無茶を言わなければ、オレのできる範囲で聞き入れようと思う。
「――――――貴方の実力が見たい」
「――――――貴方と手合わせをしてみたいです」
「「――――――サフィルス達が主人と認めたその力をあたし(アタシ)達自身で確かめてみたい(です)」」
手合わせか······。
正直遠慮したいが、それじゃあこの子達は満足してくれないだろうな。
「――――――先ほどのアイラという人族も、とてつもない実力だった」
「――――――貴方はあの人族より強いのですか?」
「いや、アイラ姉の方が実力は遥かに上だよ」
「「――――――ならば何故、サフィルスはあの人族ではなく貴方を主人としている(のですか)?」」
嘘をついても仕方無いので、ここは正直に答えた。
実際、戦闘技術などあらゆる面でオレはアイラ姉には及ばない。
何故オレを、と言われてもサフィルスに聞かないとわからない。
「――――――私の主人はその方です。アイラからは色々と教えを受けていますが、主人ではありません」
サフィルスがそう答えた。
いや、答えになってないが。
「「――――――ならば尚更、貴方の力を見てみたい(です)」」
結局はこの子達の希望通り、手合わせしてあげないと納得しそうにないな。
仕方無い、少しばかし相手をするしかないか。
手合わせをするために場所を移動した。
一応、武器や危険な魔法の使用は禁止して行うことにしたが、さすがに町中でやり合うわけにもいかない。
場所は初めてこの国に来た時にエンジェに転移してもらった、クラントールを出て少し離れた街道の外れだ。
ここなら周りに人はいないし、少しくらいなら派手に暴れても大丈夫だろう。
立会人としてシノブとサフィルスも一緒に来ている。
アーテルとアルブスは基本的に二人で行動するらしく、手合わせも二対一を希望してきた。
レベル950の二人を同時に相手をするのは骨が折れそうだが、いざとなったら前みたいに強制睡眠魔法で眠らせればいいかな。
「――――――強制的に機能停止にする魔法は禁止」
「――――――あれは反則です。アタシ達は純粋に貴方の力を見たいのです」
と思っていたら、先に釘を刺された。
反則と言われても、策略で勝つのも実力の内じゃないかな?
けど、この子達が満足しないと意味がないからしょうがないか。
なんとかこの子達が満足できるような決着にしないとな。