381 順調に迷宮攻略中
ヴェルデのトラウマを刺激するトラブルがあり、少し休むことにした。
とはいえ大分落ち着いてきてるから、そこまで心配はなさそうだな。けど、今後もああいう魔物が現れてヴェルデが暴走したら困る。
ケアは必要だろう。
「ああ、よしよし。脚がいっぱいの虫で怖かったわよね〜?」
キリシェさんがヴェルデの頭を撫でながら言う。
ヴェルデはまだオレにしがみついているが、だんだん力が緩んできていた。
こうしていると、本当にただの子供にしか見えないんだよな。
「なあメリッサ、ゲテモノプールって何?」
ヴェルデを慰めるのをキリシェさんに任せて、オレは気になっていたことを聞いてみた。
まあ、名前からしてなんとなく想像つくが。
「アウルムが召喚する蟲達いっぱいの容れ物のことだよ。特にヴェルデのお仕置き用には、気持ち悪い奴がいっぱい入ってるんだよね」
召喚ってどういうことだ?
もしかしてアウルムって蟲使いなのか?
あの金髪美人のお姉さんが蟲を使役するって、あんまり想像つかないんだけど。
ゲテモノプールの刑について聞いてみたが、なかなかにアレな内容だった。
ヴェルデの頭だけを切り離して、身動き取れない状態にしてから、そのおぞましい蟲いっぱいの容器に閉じ込めるそうだ。
さらにはシルヴァラのスキル封じの力で、身体の再生も何もできないようにされ、反省するまでそのままにされる······と。
動けない状態で蟲にたかられて······いや、想像するのはやめよう。
トラウマになるどころか、オレなら発狂する自信があるぞ。
というかアウルムは、サフィルスには甘々の世話焼きお姉さんって感じだったけど、ヴェルデには鬼のような仕打ちをしているんだな。
「ミウ達は大丈夫だった? 無理してるんだったら今の内に言っておいてね」
「確かに気持ち悪かったですけど、もう大丈夫ですよー!」
念のためミウ達にも確認を取った。
ミウは無理している様子もなく、元気良く言った。
「拙者も問題ないでござるよ」
「あの虫、そんなに強くない。ヴェルデの方がずっと強いのに、なんでそんなに怖がってるの······?」
シノブも問題ないようだな。
スミレにいたってはヴェルデが何故、格下の魔物を怖がっているのか理解できていない様子だ。
まあ、頼もしくて何よりだ。
「――――――もう大丈夫! 主人、迷惑かけた分ヴェルデ頑張る!」
しばらく休憩していたら、ヴェルデの調子が戻ったようだ。勢いよく立ち上がり、腕をブンブン振って元気アピールしている。
立ち直るのが早いな。
トラウマを引きずり続けるよりはいいんだけど。
もしかしてアウルムの罰を受けても、すぐに立ち直るから反省の色なしと思われてたんじゃないか?
それで罰の内容が、だんだんとエスカレートしていったんじゃ······。
まあ、もう大丈夫そうだからよかった。
メリッサにヴェルデの苦手な虫をある程度聞いておいたので、そういう魔物が現れたらオレが真っ先に排除しよう。
というわけで迷宮攻略を再開した。
現在、285階層まで来ている。
先ほどの宣言通り、ヴェルデが張り切って襲いかかってくる魔物を殲滅していた。
「シャアアアッ!!!」
「――――――吹っ飛んじゃえ、デスプロージョン!」
物陰からいきなり現れた、巨大な蛇の魔物を一瞬で吹き飛ばした。
今の魔物はレベル280だったけど、そこらの雑魚と大差なく倒してしまったな。
この階層から昆虫系だけでなく、蛇や亀といった爬虫類系の魔物が目立つようになった。
今までも現れなかったわけではないが、昆虫系の方が圧倒的に多かったからな。
こういう変化は迷宮も大詰めだということだろうか。
爬虫類系の魔物は昆虫系に比べてステータスが全体的に高く、強敵揃いだ。
けど昆虫系と違って群れる奴が少なく、単体で襲いかかってくるので寧ろ戦いやすい。
ヴェルデのトラウマを刺激することもないし、こちらとしては好都合だ。
「ミウちゃん、いくわよ〜」
「はいー、お任せくださいー!」
キリシェさんとミウが協力して、道を阻む巨大な亀の魔物に立ち向かっていった。頑丈な甲羅を持つ防御力の高い魔物だったが、二人は難なく倒した。
「そ〜れ、潰れちゃえっ!」
「······そんな毒、ボクには効かない」
今度は巨大なサソリの魔物が現れ、メリッサが自分よりも一回り大きいハンマーで、そしてスミレは右手に奈落の剣、左手に精霊剣アースレジェンドの二刀流で迎え撃った。
サソリの魔物は強固な外殻を持っているが、スミレの剣はそんなものお構いなしに斬り裂いた。
さらにメリッサがハンマーで魔物を叩きつけ、追い打ちをかける。
「これで終わりでござる!」
そしてシノブがトドメを刺し、魔物が倒れた。
どんな魔物が現れても、皆それぞれ対応して、危なげなく倒している。
もうここまでで結構な数の魔物を倒して来ているので全員、いい感じにレベルアップしていた。
オレとシノブはレベル999のまま変化はないけど。
この調子でどんどん進めていこう。