379 待機組の休憩中の出来事
和気あいあい(?)としながら休憩を取り、時間が過ぎていった。
昨日のエイミとミールの部屋に訪れた件では、キリシェさんが期待するような展開はなかったと説明すると、少しガッカリした反応をしていた。
ミウは何故か、ちょっとホッとしたような表情だったけど。それで質問攻めは終わりかと思った、オレの考えは甘かったようで、さらに色々と追求された。
サフィルス達との出会いやら、何故主人と呼ばれるようになったのか、などなど。
気になるのはわかるけど、オレ自身もよくわかってないことなので、答えにくくて困る質問だ。
――――――――――!!!!!
キリシェさんとミウからの質問攻めに気を取られていたら、派手な爆発音が響いた。
ヴェルデ達のチャンバラで、オレが目を離している内に魔法でも使い出したのだろうか。
スキルと魔法の使用は禁止していたのだが、チャンバラに熱中しすぎて忘れちゃったのかな?
さすがに止めなきゃと思い、目を向けると、こちらの方に何か転がってきた。
「きゃあああー!!?」
転がってきたモノを見て、ミウが悲鳴をあげた。
キリシェさんは声を出さなかったけど、驚いているっぽい様子だ。
正直、オレも驚いて声が出なかった。
転がってきたのはヴェルデの生首だった。
身体はなく、本当に首だけがこちらに転がってきたのだ。突然の惨劇に肝を冷やしたが······。
「ヴェルデ、レイおにーさんにスキルは使っちゃダメだって言われたじゃん!」
緊張感のない、いつもの口調で言うメリッサの声を聞いて、なんとか冷静になれた。
メリッサの後ろでは、スミレが驚いているかわからない、いつもの無表情でこちらを見ていた。
審判役だったシノブは、ちょっと戸惑った表情をしているが。
「――――――むぅ〜、メリッサだってスキル使おうとしてたじゃん!」
生首だけのヴェルデが、何事もないかのように喋り出した。ヴェルデが人形なのは知っていたけど、首だけになっても平気なのか······。
漫画やアニメなんかではよくある設定だけど、実際に目の当たりにすると、かなりビビる光景だな。
「······なんでヴェルデはあんなことになってるんだ?」
とりあえずは状況の確認だ。
人形だから血は流れていないようで、血まみれになっていないのはよかった。
生首が転がってきただけでも、充分にホラーだったが。
「メリッサ殿とスミレ殿が、息の合った連携でヴェルデ殿を追い詰めたのでござるが、お二人の攻撃から逃れるために、ヴェルデ殿が自爆したのでござる······」
シノブが状況説明をする。
ヴェルデは爆発系の魔法攻撃に優れていて、スキルにもそういった攻撃の威力を高めるものがある。
シノブが言うように、頭だけを切り離して文字通り自爆したらしい。
それでヴェルデの胴体が見当たらないのか。
一応、ヴェルデなりに威力を抑えたつもりのようで、周囲に目立った被害はない。
ドでかいクレーターができてるけど。
「ヴェルデは頭さえ無事なら、身体はいくらでも再生できるからね。トゥーレが自爆用の魔法をいっぱいヴェルデの身体に付与していたよ」
メリッサが無邪気に言うが、恐ろしいことをしているな、トゥーレミシア。
言葉通りヴェルデの身体はすぐに再生して元通りになった。
人形だからなのか、身体だけでなく着物も肉体の一部と認識されているらしく、新品同様にキレイになって再生されていた。
サフィルスやパールスもバラバラになっても平気なのかな?
「びびび、びっくりしましたー······」
ミウはまだ顔色が悪い。
まあ、生首がいきなり転がってくるなんて、かなりショッキングな光景だったろうからな。
キリシェさんは、すでにいつも通りの調子に戻っていた。本当にメンタルの強い人だな。
シノブ達にはチャンバラを終わりにして、ヴェルデの自爆によってできたクレーターを元通りにさせることにした。
それから2時間程経って、アイラ姉達が迷宮から戻ってきた。280階層までの攻略が完了したようだ。
思ってたよりも早い帰還だな。
「少々ペースを早めて攻略を進めたが、特にこれといった問題はなかったぞ」
アイラ姉が言う。
270〜280階層も今までと変わらず、問題なく進めたようだ。
アイラ姉以外も疲労している様子はなく、まだまだ体調は万全といった感じだ。
「迷宮の外は問題なかったか? あの辺りに破壊痕があるように見えるが、まさか魔物が現れたのか?」
「いや、あれはヴェルデ達が······」
キレイに元通りにさせたつもりだったが、アイラ姉の目は誤魔化せなかったか。
下手に隠すと妙な誤解をされかねないので、正直に話した。それを聞いてアイラ姉は呆れた表情を見せ、すぐにヴェルデ達へのお説教が始まった。
ヴェルデ、メリッサ、スミレ、そして何故かシノブも正座させられて怒られていた。
次はオレ達が迷宮に入る予定なのだが、こんな調子で大丈夫だろうか?