366 フレンリーズ王国首都観光
アイラ姉達にも、パールスとヴェルデのことを特に問題なく受け入れてもらえてよかった。
アイラ姉は疲労困憊状態なので、今日のところは書庫の閲覧などの情報収集は中止かな。
それにエネフィーさんが勇者のスキルを得たことで、国全体が色々と忙しそうだしな。
エネフィーさんとリイネさんは、兵士達に呼ばれて出ていった。
二人とも王女としての仕事があるのだろう。
アイラ姉は少し休みたいと、転移魔法で先に幻獣人族の里に戻っていった。
結局何があったのか詳しくは聞かなかったが、あれは相当に疲れているな。
ハードな朝の訓練なども涼しい顔でこなし、普段はあまり疲れた様子を見せないアイラ姉が······。
リイネさんとエネフィーさんとアイラ姉の三人で、そんなに激しく············いやいや、変な想像をするのはやめよう。
それよりもオレ達はどうしようかな。
そう考えていたら······。
「――――――人族の町、面白そう!! ヴェルデ観光したい!!」
······とヴェルデが言い出した。
まあでも、それもいいかもしれないな。
オレもこの町をあまり回ったことないし、特にこの後予定があるわけでもない。
ヴェルデだけでなく、パールスとサフィルスも人族の町に興味があるみたいだ。
フレンリーズ王国首都〝ハイベレント〟
町の規模はリイネさん達の住むアルフィーネ王国の王都とそれほど変わらない。
つまりは、かなり広いということだ。
魔王軍の侵攻を受けていた影響もだんだんと収まり、今では町全体が賑わっている。
エネフィーさんが勇者になった話もすでに広まっていて、お祭り騒ぎとなっていた。
少し前までは滅亡の危機に瀕して、暗かった雰囲気がウソみたいだ。
リイネさん達や聖女アルケミアが、人々の不安を取り除くよう動いていたおかげでもあるのだろう。
「――――――魔人領の町とは、また違った賑わいやな〜」
パールスが町を見回りながら、そんなことを言っていた。魔人達の住む町ってどんな様子なのだろうか?
なんだか世紀末的な無法地帯を想像してしまうが、魔王みたいな存在がいるのなら、それなりに秩序はあるのかな。
「――――――魔人の町は面白くない!! だってヴェルデ達見たら、みんな逃げていくもん」
ヴェルデが頬を膨らませて言う。
そういやキミらは殺戮人形と呼ばれ、恐れられているんだったね。
はしゃいでいる姿を見ていたら、また忘れかけてたけど。
この町の人達はそんなことは知らないから、ヴェルデ達と普通に接している。
見た目は、ただの可愛らしい女の子だもんな。
ステータスを擬装する魔道具も持っているらしく、鑑定魔法で見られても問題ない表示になっているようだ。
オレの(神眼)スキルや高レベルの者に鑑定されれば見破られるが、そんな人物がそうそういるはずもない。
町を回っていると、サフィルスとパールスはおとなしくしているからよかったが、ヴェルデがかなりはしゃいで大変だった。
武器屋の店頭に置いていた剣を手に取って、めちゃめちゃに振り回したり、食べ物を売っている屋台の商品を勝手に食べたりと。
町の人達はヴェルデをただの幼い子供としか思ってないから、微笑ましい反応だったけど。
良い人ばかりでよかった。
ヴェルデもはしゃいでいるけど、駄々をこねたりしないから、思ってたよりは平和だ。
適当に散策を楽しんでいたら、大通りで冒険者ギルドの建物を見つけた。
へー、この町にもあるんだ······って当たり前か。
冒険者ギルドは世界規模で展開しているという話だったからな。
どこの国でも大抵の町にはあるようだし、国の首都に無いわけないよな。
「――――――面白そう! 入ってみたい入ってみたい!」
やはりというか、ヴェルデが冒険者ギルドに興味を示した。
「――――――魔人領にはない施設やな。ウチも興味あるわ〜」
パールスも建物の中に入ってみたいようだ。
魔人の国には冒険者ギルドはないのか。
まあ、中を見るくらいならいいか。
オレもこの国の冒険者ギルドに興味があるし、どんな依頼があるのかも少し気になる。
サフィルスも無言だが、興味あるっぽい様子だ。
オレは軽い気持ちで冒険者ギルドの建物に入った。




