365 お互いの事情説明
オレと人形娘達は、改めてエネフィーさんの部屋にお邪魔した。
リイネさん、エネフィーさん、そしてアイラ姉はすでに着替えて、普段の服装になっている。
「まったく、えらい目に合ったぞ······」
圧倒的ステータスを持つはずのアイラ姉が満身創痍となっていた。
オレでは今のアイラ姉のステータスを鑑定できないのでわからないが、〈体力〉がかなり減っていそうだ。
「ふふっ、アイラだってなんだかんだ楽しんでいただろう?」
「そんなことは断じてない!」
リイネさんが不敵な笑みをうかべて言う。
アイラ姉は思い切り否定しているけど。
ちなみにエネフィーさんは、何があったか詳しくはオレにはわからないが、先ほどまでの出来事を思い出しているらしく、顔を熱くさせて、うつむいている。
「えーと、それで何であんなことに?」
オレはアイラ姉達に事情の説明を求めた。
まあ、ある程度予想はしていたが、やはり加護スキルの効果を上げるための行為だったようだ。
アイラ姉とキリシェさんが念話で自由に会話できるのを見て、リイネさんが行動を起こしたそうだ。
そして、ついでにエネフィーさんも巻き込んだと。
「キリシェがやっていたことや、話に聞いたことを参考にしたのだが、ついわたしも悪ノリしてしまった。ふふっ······存外、悪いものでもないな」
「キリシェの影響を受け過ぎだ! 女同士だというのに、本当に一線を越えるところだったではないか!」
女性同士で一線を越えるとは、どういう状況を言うのだろうか?
気になったが、聞く勇気はオレにはない。
「まあ、おかげでキリシェのように、アイラと念話が可能になったのだしな。これからは連絡が取りやすくなるな。力も大きく上がったことだし、良いことづくめではないか」
リイネさんとエネフィーさんは、それぞれ加護〈中〉を獲得している。
確かに、これでアイラ姉との念話が可能になり、何かあった場合の情報が伝わりやすくなったな。
しかし······リイネさんとは何度か絆を深める機会があったから〈中〉まで上がるのはわかるが、エネフィーさんとは、たった一晩で同じだけの絆を深めたことになるんだよな?
「アイラ姉、もしかして一晩中······」
「違うぞ、レイ! 初めは互いの昔話などで盛り上がっていたのだ。その内に加護やスキルについての話になり、悪ノリしたリイネと、便乗したエネフィー殿が迫ってきて······」
アイラ姉が言い訳のような言葉を並べる。
なんだか、いつもと立場が逆になってしまっているな。
アイラ姉ってなんだかんだで押しに弱いところがあるし、迫り来る二人を本気で拒めなかったということかな。
「女性同士でこんなことは······とは思いましたけど、アイラさん······すごかったですわ」
「一体何のことを言っているのだ、エネフィー殿!? これ以上、誤解を招くような発言は控えていただきたいのだが······!」
エネフィーさんも満更でもないように言い、アイラ姉はさらに慌てて弁解していた。
本当に誤解なのか怪しくなってきたな······。
「それで、レイ。そちらのサフィルスによく似た人物は何者だ?」
少々時間を置き、気を取り直したアイラ姉がオレにくっついているヴェルデとパールスを見て言った。
あんまりな状況だったので、二人のことを今までスルーしてくれていたけど、やはり説明は必要か。
どう説明しようか?
「――――――ウチはパールス言います〜。サフィと同じようにレイお兄さんを主人として崇め仕わせていただいております〜」
「――――――ヴェルデも主人に仕えてる!」
パールスが丁寧にお辞儀しながら自己紹介をして、ヴェルデもそれに続いた。
リイネさんとエネフィーさんは、ヴェルデを見て驚いていた。
そういえばサフィルスと違って何かしたわけじゃないけど、ヴェルデも一度フレンリーズ王国に来たことがあったんだったな。
詳しい説明を求められたので、オレは昨日の出来事を話した。
仮面の男が現れたことに関しては省いて説明したけど。
「というわけで、何故か懐かれちゃって······」
「まったく······私がいないところで、そんなことが起きていたとはな」
アイラ姉が呆れた目で、オレに引っ付いているヴェルデ、パールス、そしてサフィルスを見た。
サフィルスはヴェルデ達をオレから引き剥がすことを諦めたのか、一緒になって寄り添ってきている。
············本当になんでここまで懐かれているのだろうか?
悪い気はしないけど、理由がわからない。
「これほどの力を持った相手を、こうも簡単に懐柔するとは······」
「さすがはレイさんですわね。私も同じ勇者として精進いたしますわ」
リイネさんとエネフィーさんも、なんか普通に受け入れていた。
オレって普段から、そんな規格外なことをしていたっけ?
なんか腑に落ちないが、特にいざこざも起きなかったので、良しとしておこう。