358 ヴェルデとパールスへの尋問タイム
元の姿に戻ったオレは、ユヅキとパールスの居る脱衣場まで戻り、二人が目を覚ましたのを確認した後、女湯にいるメンバーと合流しに行った。
念の為、パールスは動けないように拘束している。
「――――――ああ〜、こういうプレイもええわ〜♡」
ロープで縛ってる時に、そんなことを言っていたが聞き流した。
ちなみにこのロープは特別製で、そう簡単には切ることはできない。
ユヅキの方も魅了状態にされていたが、目が覚めてから特に身体に不具合もないようだ。
「そっちの子はレイ君が捕えてくれていたのね。ありがとう、助かったわ」
合流するなり、フウゲツさんにお礼を言われ、女湯で起きたことを簡単に説明してくれた。
「ねえ、レイ君。黒いマスクを被った妙な男の姿は見なかった?」
「いや、ちょっとわからないかな······」
フウゲツさんにそう聞かれたので、無難に答えておいた。本当のことを言うわけにはいかない。
正体がバレたわけでもなさそうなので、少しホッとした。
ちなみに女湯で暴れていた、ヴェルデという緑髪の少女はサフィルスに背負われていた。
今は意識があるようだが、暴れ出す様子はない。
というより············。
「――――――ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい············」
ずっとサフィルスの背中で震えて、こんな感じだ。
怖いものに怯える、見た目通りの子供にしか見えない。原因はオレだろうから、少し罪悪感がある。
「大丈夫ですよ、あのままヴェルデが暴れていれば、犠牲者が出ていたかもしれませんから。レイさんが気に病む必要はありません」
ミールがそうフォローしてくれた。
まあ、ヴェルデの魔力で本気の魔法を放っていたら、幻獣人族の里そのものが吹き飛んでいたかもしれないからな。実際、ヴェルデの魔力の塊に囲まれたミウは、かなりヤバい状況だった。
あれだけの力を秘めた、聞き分けのない子供は恐ろしい存在だ。
ヴェルデの様子がおかしいことに気付いたパールスが、縛られた状態で首を傾げている。
「――――――なあ〜、ヴェルデはどうしたんや? えらい、おとなしゅうなっとるやん? 何があったん?」
「――――――聞き分けなく暴れたため、ある方のお仕置きを受けたからです」
「――――――アウルムや創造主の罰を受けても、まったく堪えへんヴェルデがか? 珍しいこともあるもんやな〜」
女湯で何があったのか知らないパールスは、呑気な口調でそう言った。
温泉施設を出て全員、長の屋敷まで戻ってきた。
そして応接間にて、ヴェルデとパールスの尋問タイムが始まった。
「それで、あなた達は本当に幻獣人族の里を害する目的で来たわけじゃないのね?」
縛られて正座させられているヴェルデとパールスに、フウゲツさんが問う。
オレや他のみんなは、その様子を黙って見ている。
「――――――さっき言うた通りやで〜。ウチはヴェルデの暴走に付き合うただけや。創造主からも幻獣人族の里をどうこうしようとか、指示は受けてへんで」
パールスが笑いながら答えた。
確かにパールスはユヅキやオレを、スキルを使って魅了してきたが、特に何か企んでいるとかいう感じじゃなかったな。
ちなみにヴェルデはまだ怯えていて、尋問に答えられるような状態じゃないので、フウゲツさんの質問はすべてパールスが答えている。
「トゥーレも神樹には興味ないから、特に手を出さなくていいって言ってたよ」
横からメリッサがそう付け加えた。
彼女達が創造主と呼んでいる、神将トゥーレミシアは幻獣人族の里を攻める気はないらしい。
本当かどうかは判断できないが、サフィルス達のようなレベル900を超える人形を束ねている奴が本気で攻めて来たら、かなりの脅威だし、嘘じゃないと思いたい。
「その創造主っていう人物や、あなた達は魔王軍とは関係ないってのも本当なの?」
「――――――そうやで〜。創造主も今の魔王はんとは、最低限の関わりしか持ちとうない言うてたし、ウチらは創造主に従ってるだけで、そもそも魔王はんとは会ったこともあらへんし」
フウゲツさんの質問に、パールスがペラペラ答えていく。もしかして、今の魔王ってかなり嫌われているのかな?
それからもいくつか質問していたが、彼女達は基本、トゥーレミシアってやつの指示通りに動くだけらしいので、魔王軍のことや魔人族のことなど、詳しいことは知らないようだ。
まだまだ聞きたいことはあるが、もうとっくに日が落ち、遅い時間帯なので、二人への尋問は後日改めてということになった。