341 封印された書物の迷宮
フレンリーズ王国の書庫を調べていたら、封印された書物を見つけた。
ちょっと触っただけで封印が解けてしまい、出てきたのは3冊の、見た目は普通の本だった。
その内の1冊は、所謂大人向けの本だったので、慌てて手にしていたサフィルスから強引に取り上げた。
「レイさんがそんなにも慌てるなんて、やはり危険な書物なのですか?」
すぐに本を閉じたので、エネフィーさんには中身が見えなかったようだ。
ある意味で危険な書物だが、どう説明すればいいのか困る。
というか、こんなの見せたらオレが変態みたいに思われるんじゃないか?
「······少なくとも、今見るものじゃないですね。それよりも先に他の2冊を確認してみよう!」
オレはちょっと強引に誤魔化して、残りの2冊を見てみることにした。
こっちはまともな本であることを祈るばかりだ。
大人用の本は、こっそりアイテムボックスに入れておいた。
「こっちの内容は············天使族? について書かれているみたいだ」
まともな本だったことに、少しホッとした。
それにしても天使族?
天使って白い翼を生やして、頭の上に輪っかがついているようなイメージだけど、それのことだろうか?
「天使族というのはその昔、神をも超える力を手に入れたと言われている種族ですわね。おとぎ話などでも、よく聞く名ですのよ。ですが、すでに滅びてしまったようで本当に実在していたかもわかっていない種族なのですが······」
エネフィーさんが教えてくれた。
異世界だから天使も普通にいるのかと思ったら、こっちの世界でもおとぎ話の中の存在なのか。
神をも超える力を手に入れたとか、かなり物騒な話だな。いや、おとぎ話で言われていることだし実在したかどうかもわからないんじゃ、脚色されているだけかもな。
そんな力を手に入れたのに、なんで滅びたんだって疑問も出るし。
まあ、女神やら魔神がいる世界だし天使がいても、もう不思議じゃないけど。
本の内容は他にも幻獣人族など、すでに滅びたと言われる種族のことがいくつか書かれていた。
幻獣人族は滅びてないけどね。
わざわざ封印していたということは、じっくり調べたら貴重な情報が出るかもしれないな。
············けど、大人用の本と一緒に入っていたし、あんまり貴重じゃない可能性もあるか。
一体誰が封印したものなんだろうか。
よく話に出てくる当時の勇者かな?
まあいいや。
最後の1冊も確認してみよう。
「――――――主人、その書物からは不穏な魔力が観測されています。ご注意ください」
サフィルスに言われて残りの1冊に目を向けると、確かに他の2冊には見られなかった、妙な魔力が渦巻いている。何だコレ?
異世界には魔導書と呼ばれる、読むだけで魔法を習得できる特殊な本があると聞いたことがあるが、これがそうなのだろうか?
中を見てみないと、なんだかわからない。
オレは警戒しながら、本を手に取って開いてみた。
――――――――――!!!!!
その瞬間、本から魔力が溢れ出て、オレ達を包み込んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
気が付くと周囲の景色が変わっていた。
「な、何が起きましたの······?」
「――――――情報不足、現状把握に専念します」
オレだけでなく、エネフィーさんとサフィルスも巻き込まれていたようだ。
それにしても、ここはどこだ?
周りは本棚に囲まれて一見、書庫の中に見えるが、明らかにさっきまでの場所と違う。
何故か空中に浮かんでいる本もいくつかあるし。
MAPを開いて確認すると、ここは王城の書庫とは違う場所だとわかった。
書庫よりもさらに広く、しかもフロアが全10階層で構成されていた。
ここって、もしかして迷宮なんじゃないか?
「――――――先ほどまでとは違う空間だと確認。おそらくここは迷宮だと推測します」
サフィルスもオレと同じ答えを出した。
多分、その通りだと思う。
「ええっ······!? こ、ここって迷宮なんですの!?」
エネフィーさんが驚きの声をあげた。
オレも、まさか本を開いたら迷宮に取り込まれるとは思わなかったよ。
下に進んでいくタイプの迷宮で今、オレ達がいるのは一番上の1階層だ。
だが、周りやMAPを見ても出口らしきものは見当たらない。
転移魔法も使えなくなっている。
他の魔法は使えるが、転移魔法だけピンポイントで封じられている············これって以前、エンジェがいた勇者の試練の迷宮と同じだな。
グラムのいた迷宮や学園地下迷宮、そして神樹の迷宮では普通に使えたのに。
ということは、ここも勇者の試練の迷宮なのか?