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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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339 殺戮人形の恐怖

 オレとアイラ姉は、サフィルスを連れてフレンリーズ王国まで来ていた。

 本当は連れて来るつもりはなかったんだけど、サフィルスがオレの側を離れたがらなかったので、こちらが妥協した。



 まあ、リイネさんやエネフィーさん達に事情の説明も必要だろうからな。

 サフィルスはフレンリーズ王国(ここ)でずいぶんと暴れたし、どういう反応されるか不安だけど。


 一応、サフィルスには帽子を被らせて服装も変えさせているので、パッと見は普通の女の子にしか見えないだろう。



 城までたどり着くと、入口の兵士が敬礼して迎え入れてくれた。

 勇者だと誤解されてから、兵士達の対応が大袈裟になっている気がする。


 見張りの兵士はサフィルスを見ても特に何も言わずに、そのまま通してくれた。

 オレ達の関係者ということで信用してくれているようだが以前、暴れた蒼髪の少女だとは気付いていなさそうだけど、大丈夫だろうか?



「レイ、アイラ。来ていたのか」


 城の中庭付近を通りかかったところで、リイネさんに声をかけられた。

 向こうの方にはエネフィーさんの姿も見える。

 聖女アルケミアやグレンダさん達は、今は城に居ないようだ。


 中庭には捕らえていた魔王軍の魔人達と、それを取り囲むように多くの兵士達が集まっていた。

 魔人達の中には魔王軍幹部(ギュラン)の姿もある。


「これは何をしているのだ、リイネ?」


 アイラ姉が問う。

 魔人達は抵抗せずに、おとなしくしている。


「魔人達に隷属の首輪をかけていたところだ。その後は鉱山地帯に連れて行き、働かせるつもりだ」


 よく見たら、魔人達一人一人に奴隷の首輪が着けられている。捕らえた魔人達は、犯罪奴隷同様の扱いにするつもりらしい。

 隷属の首輪を着けた奴隷は、主人として登録された者の命令に逆らえなくなる。

 ギュランと一部の魔人は、城に残すつもりのようだが。


 まあ、侵略してきた奴らだから、妥当な扱いと言えるかな。


「ところで、その少女はどちら様ですの?」


 エネフィーさんもこちらに気付き、声をかけてきた。オレの後ろにいるサフィルスを見て、首を傾げている。

 エネフィーさんも、サフィルスの正体に気付いていないみたいだ。

 どう紹介しようかと思っていたら、サフィルスが自分から前に出てきた。


「――――――私は主人(マスター)の従僕のサフィルスです。どうぞ、お見知り置きを」


 何をするかと思ったら、普通に挨拶と自己紹介をした。アイラ姉がある程度常識について教育していたし、その効果が出たのかな?

 しかし、頭を下げた時に被っていた帽子が落ちてしまった。


「······!? お前はっ」

「あ、あの時の少女ですの······!?」


 帽子の中で纏めていた蒼色の髪の毛が広がってしまい、リイネさん達がサフィルスの正体に気付いた。

 周りの兵士達もそれに気付いて、全員が武器に手を掛け、緊張が走る。


「レイ、アイラ、どういうことだ? 何故、この少女がここにいる?」


 リイネさんも、いつでも武器を抜けるように緊張しながら言う。

 やっぱりそういう反応になるよな。


「大丈夫だリイネ、エネフィー殿。サフィルスに敵対の意思はない」


 アイラ姉がリイネさん達や兵士達を宥める。

 アイラ姉の言葉で多少は緊張が収まるが、やはり皆、警戒心強めでサフィルスを見ている。



「お、お前はトゥーレミシア様の人形······。そうか、俺様を助けに来たんだな!?」


 そう言ったのは、魔王軍幹部のギュランだ。

 サフィルスを見て、勝利を確信したような笑みをうかべている。

 周りの魔人達も似たような表情だ。


 そういやコイツ、サフィルスに仮の指揮者とか呼ばれていたっけ。

 一時的にトゥーレミシアって奴から、サフィルスへの命令権を与えられているらしいけど、もしかしてヤバい事態か?


「おい人族(ゴミ)共!! 俺様をこんな目に合わせやがって、後悔してももう遅いぞ! 命令するぜ、殺戮人形の力を見せてやれ!!」


 ギュランが命令を下すが、サフィルスは動きを見せない。ギュランは焦って、さらに命令するがまったく動く様子はない。


「な、なんで従わないんだ!? 確かにトゥーレミシア様に命令権を与えられたはず······」

「――――――仮の指揮権はすでに上書きされ、消失しています。私の現在の主人(マスター)はこの方です。仮、ではなく正式なものですが」


 サフィルスがオレの前に跪いた。

 全員がオレに注目するので、すごく居心地が悪いんだが······。


「あ、新たな主人だと······!? なんでそんな人族(ゴミ)に従い······」


――――――――――!!!



 言葉の途中で、ギュランの片腕が斬り飛ばされた。

 いつの間にか、サフィルスの全身から刃物が現れている。


「――――――ゴミ? それは主人(マスター)のことを言っているのですか?」


 無表情ながら、鋭い眼光でギュランを睨む。

 もしかしてサフィルス、すごく怒ってない?

 普段は感情があるのかわからなかったけど、今は物凄い怒気を感じる。

 オレのために怒ってくれているようで、それは嬉しい気はするが、このまま放って置くのはマズそうだ。


「ま、ままま、待てっ!? 俺様は、お前の······」

「――――――主人(マスター)への侮辱の言葉、万死に値します。これより殲滅を開始します」

「ひ······ひぃぃっ!!?」


 斬り飛ばされた腕を再生しながら、ギュランはなんとか声を絞り出す。

 サフィルスがさらに背中から蒼色の翼を出して、完全に臨戦態勢となった。

 その姿を見て、ギュランだけでなく、周りの魔人達全員が怯えている。


 ギュランのレベルは210で、他の魔人達は精々50〜80に対して、サフィルスはレベル900。

 魔人達では、どう背伸びしても勝てる相手ではない。



「ちょっと待った、サフィルス!」


 さすがに止めないと本気でマズそうだったので、オレはサフィルスと魔人達の間に入った。


「――――――今の主人(マスター)への暴言は許容できません。殲滅の許可を」

「いや、オレは気にしてないから、とりあえず落ち着こう。コイツらは殲滅しなくていいからね」

「――――――······了解しました。主人(マスター)の命令に従います」


 オレがそう言うと、なんとかサフィルスは矛を収めた。ここで冗談でも殲滅しろなんて言ったら、本当にコイツらを皆殺しにしそうだ。


 ギュランはサフィルスの怒気を浴びて、気を失っていた。周りの魔人も怯えるか、気を失うかで恐慌状態だ。



 改めて、サフィルスの扱いには注意しないとな、と思った。



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