閑話⑬ 5 仮面の男登場(※)
※(注)タイトルの通り変態男が登場します。
(リーフィside)
犯罪者達が潜んでいた建物の中に、大規模な召喚用魔法陣があったのですよ。
肝心の魔力が足りてなかったみたいなのですが、リアちゃん(リーア)の持っていた魔道具の魔力を吸収して、召喚に必要な力が溜まっちゃったみたいなのですよ。
そして召喚陣から、サキュバスという精神世界に住む種族が現れたのですよ。
サキュバスは身体を維持する魔力がまだ足りないらしく、私達の魔力を吸収してきました。
私とリアちゃん、そしてリナっち(リーナ)は魔力の大半を奪われ、立つこともできないくらい消耗してしまったのですよ。
何故かシノっち(シノブ)は魔力を奪われなかったらしく、武器を抜いてサキュバスを追い詰めたのですよ。
「ふふっ、あなたの身体······少し借りるわよ」
「ちょ······な、何をするつもりなのです······――――――」
追い詰められたサキュバスは、私の身体の中に入り込んできたのですよ。
サキュバスは夢魔族と呼ばれる種族の一種で、本来は実体がなく、こうして人間の身体に憑依して操ることが可能なんだとか。
ま、マズイのですよ。
身体の自由が······。
「ふふっ、······あははは! うまく憑依できたわ。思っていたよりも良い身体ね」
サキュバスに憑依されて、私の身体は乗っ取られてしまったのですよ。
まだ私の意識は残っているのですが、身体の自由は完全に奪われて、自分の意思では動かせないのですよ。
「まさか、リーフィ殿の身体に乗り移ったのでござるか!?」
シノっちの言う通りなのですよ。
けど、もうそれに答えることも出来ないのですよ。
「ふふっ、さあどうするのかしら? アタシを斬ったら、この子まで傷ついちゃうわよ?」
これって私が人質に取られたって状況ですかね? 結構ヤバい状況なのでは?
シノっちも私を傷つけないために、迂闊に攻撃できなくなっているのですよ。
「······何が目的でござるか? 先ほど師匠が連れて行った犯罪者達に、何か指示されているのでござるか?」
そういえばこのサキュバス、レイっちが連れて行った犯罪者達が用意した召喚陣から出てきたんですよね。
あの人達、サキュバスなんて呼び出して何するつもりだったのですかね?
「犯罪者? そんな奴ら知らないわよ。アタシはたまたま見つけた魔力の反応を頼りにこの世界に来ただけだもの」
シノっちの質問に、意味がわからないと首を傾げています。このサキュバスの言うことが本当なら、あの犯罪者とは無関係で、偶然私達が呼び出しちゃっただけみたいなのですよ。
「初めての実体化だけど気分いいわね。今までは夢の中でしか、この世界に干渉できなかったのよ。ふふっ、色々とヤリたいことがあるわね。特にあなた達のような可愛い子、アタシの好みよ」
サキュバスが私の身体を動かして色々と触ってきたのですよ。
あれ? サキュバスって男性を惑わし虜にする種族じゃありませんでしたっけ?
シノっちもサキュバスの意味深な笑みに、少し引いているみたいなのですよ。
「アタシ、男よりも可愛い女の子の方が好きなのよね。むしろ男なんて、汚らわしくて近付きたくもないわ」
どうやらこのサキュバス、男性嫌いみたいなのですよ。サキュバスの中でも異端な人なんですかね?
不敵な笑みをうかべながら、サキュバスは私の身体を操り、動けないでいるリナっちとリアちゃんのもとに近付いて行ったのですよ。
「うく······リ、リーフィさん······」
「正気に戻ってくださいませ、リーフィさん······」
二人がそう言うのですけど、身体の主導権を完全に奪われて、私にはどうしようもないのですよ。
シノっちが止めようと動こうとしますが、サキュバスが手を前に出して制したのですよ。
「ふふっ、下手に動いたら、この子達の安全は保障しないわよ」
「拙者を甘く見てるでござるか? リーフィ殿を傷付けずに助ける方法はあるでござるよ」
余裕の笑みをうかべるサキュバスですけど、シノっちが魔力を集中し始めたら、表情が引き攣ったのですよ。
シノっちの準備している魔法、あれひょっとして「聖」属性じゃないですか?
シノっち、聖女様でもないのに「聖」魔法が使えるのですか!?
「ま、まさかあなた聖女なの!? 待ちなさい! 少しでも動けば、本当にこの子達の命はないわよ!?」
さすがのサキュバスも焦っているのですよ。
「聖」魔法なら憑依しているサキュバスだけを滅することが可能なはずですからね。
それにしてもシノっち、サキュバスの言うように本当に聖女様なんじゃないですか?
「むう······卑怯でござるな」
「ふふっ、なんとでも言いなさい。それよりも早くその魔力を抑えなさい」
サキュバスの言われるまま、シノっちは集中していた魔力を消したのですよ。
シノっちが手を出せないのを確信して、サキュバスは余裕を取り戻したのですよ。
「ふふっ、良い子ね。安心しなさいよ。おとなしくしていれば魔力と精気を少し貰うだけで終わるわ。むしろ、天にも昇る心地を味わえるわよ」
サキュバスがそう言いましたけど、本当にそれ大丈夫なんですかね?
サキュバスに精気を吸い尽くされて、干上がったミイラのようにされたって人の話を聞いたことありますけど。
「まずは、あなた達の精気を貰おうかしら」
そう言ってサキュバスは、まだ動けずにいるリナっちとリアちゃんに手を伸ばしたのですよ。
二人に抵抗する力は残っていないみたいなのですよ。
――――――――ムニョッ
手に生温かい感触を感じたのですよ。
身体はサキュバスに操られて、自分の意思じゃ動かせないのですが、感覚は普通にあるのですよ。
サキュバスは二人の胸に手を伸ばしていましたけど、胸の感触にしては、何か違和感が······。
「あら? 何か妙な触り心地ね」
「失礼、そこは私の大切な場所です。手を離してもらえますか」
「え······? キャアアアアッ!!? な、何よあなたはっ!?」
目の前に現れた人物を見て、サキュバスが叫び声をあげたのですよ。
多分、サキュバスが叫ばなかったら、私自身が叫んでいたと思うのですよ。
だって今触っていたのは············。
「あ、ししょ······ではなく、正義の仮面殿!?」
シノっちが驚きの声をあげているのですよ。
シノっちが言ったように、現れたのは今まで私達が散々捜し回っていた仮面の人物だったのですよ。
黒いマスクで顔を隠して、下着一枚の相変わらずの格好なのですよ。
なんでこの人、ここにいるんですか?
「わわっ······か、仮面の人だよ!?」
「こ、この方が正義の仮面という人物ですか? 本当にリーフィさんの描いた通りの人物なのですわね······」
リナっちとリアちゃんの間に立つ位置にいます。
二人も突然の仮面の男の登場に驚いているのですよ。
「私の名は正義の仮面。大体の事情は察しました。リーフィ嬢が何者かに乗り移られ、操られているのですね。私のお仕置きで、乗り移っている者を撃退しましょう」
仮面の人がそう言って私の前に立ちました。
お仕置きって、もしかしなくてもアレのことですよね?
ちょっと待ってほしいのですよ!?
それってつまり············。