閑話⑬ 2 仮面の男の捜索開始
(リーナside)
レイさんとシノブちゃんにも、協力をお願いしたら少し戸惑っていたけど了承してくれた。
まあ、いきなりだったし戸惑うのは仕方無いよね。
そうしてレイさんとシノブちゃん、あたしとリーア、そしてリーフィさんの五人で、例の仮面の人の捜索を開始することにした。
「通常の魔道具ですと、なんの情報もない人物を捜すのはほぼ不可能ですわ」
リーアが言う。
人捜しの魔道具は、捜したい人の手掛かりとなる物が必要になる。
その人がいつも身につけている物だったり、髪の毛とかでもいいんだけど。
でも、問題の仮面の人の手掛かりになるような物なんて、あたし達は持っていない。
「ですが心配は無用です。新しく開発中の魔道具に人捜し用の改良型もありましたから。これは捜したい人物の似顔絵などがあれば捜索可能ですわ。············まだ開発中の試作品ですけど」
リーアが作ってる魔道具は、主に犯罪者を見つけるための物みたい。
完成すれば手配書からでも、犯罪者を見つけることは可能になるとか。
すごいけど、それまだ未完成の試作品なんだよね?
「フッフッフッ、似顔絵は任せてなのですよ! 報道部の情報誌作りでよく描いていますから、自信あるのですよ! 手配書のより上手く描いてみせるのですよ」
リーフィさんが紙とペンを取り出して、すごい速さで絵を描いている。
報道部に所属してるって言ってたし、いつも持ち歩いてるのかな。
リーフィさんは、あっという間に仮面の人の絵を描き上げた。
「さ、さすが報道部所属のリーフィ殿······。すごくリアルでござるな」
シノブちゃんが出来上がった絵を見て、ちょっと頬を染めている。
うん、本当にすごくよく描けてる。
紙には仮面の人の全身像が描かれていた。
うわぁ······筋肉とかまで、すごい表現出来てる。
「······例の仮面の人物とはこのような姿をしているのですか? 正義の味方というより、悪の怪人に見えますけど······」
リーアも頬を染めながらリーフィさんが描いた絵を見ていた。
顔は黒いマスクで隠してるのに、身体は下着一枚しか身につけていない裸の格好だもんね。
「リーフィさん、絵上手いね······。けど、その······男の人の身体とか、よくここまでリアルに描けるね?」
見てて、あたしまで恥ずかしくなってきたよ。
上半身もリアルだけど、下の方もすごく丁寧に描かれているよ。············その、盛り上がり具合とか。
「まあ、その······仮面の男の身体を近くで見たことがあるのですよ。下の方なんかは見たどころじゃないですし······」
リーフィさんが、しどろもどろに答えた。
何かを思い出したのか、顔を真っ赤にしながらブンブン左右に振っている。
仮面の人と何かあったのかな?
「えっと、それでこの絵を使ってどうやって捜すの?」
レイさんが気まずそうに言った。
そ、そうだよね。
こんな話題、男の人でも恥ずかしくて気まずくなるよね。
「こうして拡げた状態で魔道具の中にセットしまして······レイさん、魔力を流してもらえますか? この魔道具を起動させるには膨大な魔力が必要なんです」
「あ、ああ······わかった。こんな感じでいいのかな?」
リーアに言われた通りに、レイさんが魔道具に魔力を流し込む。
起動したみたい。
改めてレイさん、すごい魔力だよね。
その魔道具、起動させるには優秀な魔導師5〜6人分の魔力が必要なのに。
「ありがとうございます、レイさん。さっそく反応があったようなので現場に向かいましょう」
リーアの持つ魔道具に簡単な町の地図が浮き上がり、ポツンと点が示されていた。
当たり前だけど、示された点は店の外の位置にあるね。
「なあ、リーア。それってアテになるの?」
「まだ実験段階の試作品ですのでなんとも······。とにかく示された場所へ向かってみましょう」
レイさんの疑問にリーアは曖昧に答えた。
あたしもアテにしていいのか疑わしいんだけど。
魔道具を持つリーアを先頭に、あたし達は店を出て示された場所へ向かっていく。
そうして町の大通りにたどり着いた。
こんな目立つ場所に問題の仮面の人がいるの?
そろそろ日が暮れる時間になるけど、大通りには結構な人が集まっていた。
何か騒ぎが起きてる?
騒ぎの中心にはピエロの仮面をつけて、派手な服装をした人が色々なパフォーマンスをして、周りの人達を盛り上がらせていた。
あれって仮面をつけてるけど······。
「大道芸人の方みたいですわね。魔道具はどうやらあの方に反応しているようですわ」
「え? じゃあ、あの人が例の仮面の人ってことなの?」
服を着て、ピエロの仮面をつけてるだけで全然イメージが違うんだけど、リーアの魔道具が示してるんだから、そうなのかな?
「違うと思うのですよ? 例の仮面の男はもっとガッチリした身体付きだったのです。あの人は服の上からでも細身の方だとわかるのですよ。体格が違いすぎるのです」
と思ってたらリーフィさんが否定した。
まあ、あたしもおかしいと思ったんだけどね。
「··················」
リーアが魔道具を見て何か考え込んでる。
「······さて、試運転はこれくらいにして、本格的な捜索に乗り出しましょう。レイさん、もう一度魔力を送り込んでもらえますか?」
あ、誤魔化したね。
やっぱりまだ試作品だから、ちゃんと機能してないみたいだね。
レイさん、シノブちゃん、リーフィさんが苦笑いしてる。
改めて魔道具を起動させたけど、それで本当に例の仮面の人を見つけられるのかな?