333 迷宮攻略中断
神樹の迷宮もついに200階層を超えた。
出現する魔物のレベルは100〜150、たまに200超えも現れるが特に苦戦することなく進めている。
ボス級の魔物は極端に高レベルだが、道中の魔物はそれほどじゃないな。
虫系の魔物で厄介なのは毒持ち、麻痺持ちなどの状態異常を引き起こしてくる奴らだ。
鑑定でスキルを確認すると、かなりえげつない状態異常攻撃を持っている魔物がほとんどだった。
普通なら慎重に進まなければならず、攻略は難航していただろう。
だが、オレもアイラ姉もシノブも(全状態異常無効)という完全耐性のスキルを持っているため、そういった魔物もまったく問題ない。
異世界に来て最初に手に入ったスキルなんだけど、今更だがいくらなんでも強力すぎないか?
3人揃って手に入ったし、異世界人特有のスキルなのかもしれないな。
それから迷宮も220階層まで攻略した。
オレの今のレベルは999だ。
あと一つでレベル1000に到達するのだが、なかなかレベルアップする様子がない。
レベル1000ともなると、必要な経験値が今まで以上に膨大になるのかな?
次のレベルアップまで必要な経験値がわからないのが、もどかしいな。
「フム、レイもあと少しでレベル1000になるが、やはり簡単には上がらないようだな」
アイラ姉も簡単にはレベル1000に上がらなかったみたいだからな。
ちなみに今のシノブのレベルは983だ。
このままだと追いつかれちゃうかもな。
などと思いながら、さらに230階層まで到達したが、オレのレベルはそのままだ。
ここまでも結構な魔物を倒してきたので、ついにシノブもレベル999まで上がっていた。
本当に追いつかれちゃったな。
獲得経験値2000倍状態で、これだけ魔物を倒しても上がらないというのは、レベル1000になるには何か特別な条件とかがありそうだな。
「ついに師匠とレベルが並んだでござるな」
シノブが嬉しそうに言った。
特に勝負をしているわけじゃないので、追いつかれて悔しいとか、そういうことはない。
けど、もしシノブの方が先にレベル1000になったら、色々と立場が逆転してしまうような感じがする。
オレもシノブもどっちが上とか、そういうことに拘る性格じゃないが、やっぱり年上として最低限の威厳は保ちたい。
「やはり二人とも、これ以上魔物を倒してもレベルアップしそうにないな。迷宮攻略はこの辺りで中断するか」
オレとシノブの様子を見て、アイラ姉がそう決断した。まだまだ疲れていないし一気に迷宮制覇できると思ったけど、今日の目的はオレ達のレベルアップだったからな。
レベルアップする兆しが見えない以上、仕方無いか。
「拙者まだまだ戦えるでござるよ」
シノブもまったく疲れている様子はない。
「レイはどうだ? 疲れてはいないか?」
「まだ余裕はあるけど」
オレにも聞いてきたので無難に答えておいた。
アイラ姉の様子を見てたら、何か嫌な予感がしてきたんだが。
結局アイラ姉の言葉通り、迷宮攻略は中断してオレ達は転移魔法で外へ脱出した。
転移魔法で神樹の目の前、迷宮の入口まで戻ってきた。迷宮に入ったのは朝早い時間帯だったけど、今は夕暮れ時になる頃だな。
なんだかんだで、そこそこの時間が経っていたようだな。
「やはり外の空気は一味違うでござるな」
シノブの言う通り、神樹の迷宮の中も、ある意味自然溢れる場所なのだが、やっぱり外で吸う空気は違う気がする。
疲れてはいないけど、いい感じに身体を動かしたし、温泉にでも入って来ようかな。
「よし、ではレイ、シノブ。最後の仕上げと行こうか」
このまま解散かと期待したんだが、やはりそんな甘くはなかったか。
アイラ姉が模擬戦用の武器(刃を潰したオリハルコン製の剣)を構えていた。
「え〜と、アイラ姉······まさかとは思うけど」
「ウム、最後は私との手合わせで締めるとしよう。二人がかりで来るが良い。私も全力で応えよう!」
やっぱりか。嫌な予感はしていたんだよな。
アイラ姉はすでにやる気満々だ。
「私が(超越者)のスキルを手に入れたのは、バルフィーユとの戦いの最中だ。レベル1000の壁を超えるには自身と同等か、それ以上の力を持った相手と全力でぶつかり合う必要があるのかもしれん」
確かにその可能性もあるか······。
しかし、単純にバルフィーユとの戦いは、それだけ得る経験値が膨大だった可能性もあるが。
よく考えたら今のアイラ姉との模擬戦って、迷宮の魔物を倒すよりも獲得経験値が高そうだ。
いや、でも今のアイラ姉が全力で来たら本気で死にかねないんだが?
「なあに安心するがいい。死なない程度には加減する。当たりどころが良ければな。当然、気を抜けば命は無いものと思え」
やはり拒否する選択肢は与えてもらえないようだ。オレとシノブは覚悟を決めて、アイラ姉と同じ模擬戦用の剣を構えた。
迷宮のどんな恐ろしい魔物を相手にするよりも、命の危険を感じる手合わせだったと追記しておく。