323 今後の相談
元の姿に戻ったオレは何食わぬ顔で再び首都まで戻って、エネフィーさん達に魔王軍の拠点での出来事を話した。
拠点にいた魔人達の制圧は問題なく終わったが、その後、とんでもない強さを秘めた少女の姿の人形が現れたこと。
リイネさん達が相手にするには厳しい強さだったので、オレが少女を拠点から引き離したこと。(転移魔法についてはうまくボカシた)
そして戦いの途中で、少女が首都に向かっていってしまったため、慌ててオレも後を追ってきた(ということにした)ことを。
「あの少女のことですわね。確かに手強い相手でしたけど、正義の仮面様が駆けつけて解決してくれましたわ」
「正義の仮面······様?」
「レイさんはご存知なかったのですか? 王都でも活躍されていた方ですけど」
アルケミアが首を傾げた。
いや、気になったのはそういうことじゃないんだが。まあ、下手なこと言ってボロを出したくないし、曖昧に頷いておこう。
「あの仮面の男、とんでもない強さでしたわ。······おかしな格好でしたけど」
エネフィーさんが顔を赤らめてそう言った。
おかしな格好というのは、オレも自覚あるので何も言えない。それに正体バレたら困るので反論しようがない。
まあ、そのことは置いておくとして、あの蒼髪の少女と、後から現れた緑髪の少女は結局取り逃がす形となってしまったんだよな。
再び攻めて来ないとも限らないので、警戒しなくちゃならない。
「そういえば、あのギュランとかいう魔王軍幹部はどうなったの?」
リイネさんにボコボコにやられて、戦闘不能状態になっていたはずだが。
「他の魔人達と一緒に拘束して、今は地下牢に閉じ込めていますの。結構なダメージを負っていたので、しばらくは目を覚まさないと思いますわよ」
エネフィーさんが教えてくれた。
リイネさんが容赦なく痛めつけていたからな。
アイツは蒼髪の少女に仮の指揮者とか呼ばれていたから、あの二人の少女について詳しく知ってると思うから、色々と聞き出したかったのだが。
あの二人の少女、レベルが900を超えていたからな。鑑定で得た情報によると、神将トゥーレミシアという奴が生み出した殺戮人形という存在らしい。
殺戮人形は全部で何体いるかもわからないからな。
あんな強さを秘めているのが何十、何百体もいるとは考えたくないが······。
当然、それを生み出したトゥーレミシアってのは、もっと強いのだろう。
思ってたよりも魔王軍は厄介な存在だな。
そうこうしている内にリイネさん達が戻ってきた。魔王軍の拠点にいた奴らは、全員拘束して連れてきたようだ。
結構な人数だが、ギュラン達と同じく地下牢に連れていった。
グレンダさんも蒼髪の少女に重傷を負わされていたが、すっかり回復していて、今は他の騎士達と一緒に魔王軍の後始末を手伝っている。
「またあの男か······。まあ、無事に解決出来たのならよかったが」
リイネさんはエネフィーさん達に首都での出来事を聞いて、複雑な表情をしている。
アルフィーネ王国でも、何度もあの姿になっていたからな······。
「ええ、リイネ様。颯爽と現れ、華麗に解決されましたわ。あの方はまさに女神様の遣いなのかもしれませんわね」
アルケミアは何故か、仮面の男をかなり好意的に見ている。
確かに冥王を倒したりとか色々活躍したが、だからといってそんなに信頼出来るものだろうか?
リイネさんやエネフィーさんの反応の方が普通だと思うが。
「ねえ、リイネさん。アルケミアさんは何故、あの男をこんなにも崇拝していらっしゃるの?」
「いや······わたしも知らない。確かに、あの男は我が国でも何度も活躍していたが······」
エネフィーさんとリイネさんがヒソヒソとそう言っていた。
もうその話題は終わりにしてほしい。
「魔王軍の連中はすべて捕らえたが、去っていった二人の少女が気になるな。再び攻めてこないとも限らない。まだまだ警戒は必要だろう」
リイネさんが言う。
オレ達のそもそもの役目は、劣勢に追い込まれていた、この国の援護だ。
今は危機が去ったとはいえ、この先もどうなるかわからない。
しばらくはこの国に滞在して様子見だ。
可能ならばオレ達の成長促進スキルで、兵士達を鍛えてほしいとのことだ。
まあ、その辺りはアイラ姉と相談だな。
そういえば幻獣人族の里の方はどうなったのだろうか? かなり手強い魔人が攻めてきたという話だったが、もう解決したのかな?
アイラ姉が負けるとは思えないが、少し心配だな。
こっちも落ち着いてきたし、転移魔法で向こうの様子を確認してくるかな。