320 その頃の幻獣人族の里 〜狂魔人の襲来⑦〜
(アイラside)
魔人バルフィーユが、新たな剣を手にした。
見ただけで鍛冶職人のドルフ殿に打ってもらった私の魔剣ヴィオルーテと同等か、それ以上の力を秘めているのがわかる。
手強い魔人なだけに、持っている武器も伝説級ということか。
「いくぜっ!」
「フム、来るがいいっ!」
私とバルフィーユの剣がぶつかり合う。
やはり剣の強度はほぼ互角か。
ならば単純に強い方が勝つということだ。
私は負けるつもりはない······!
幾度となく剣を交える。
スキを突いて足技なども放ってきたので、私も同様に攻撃を加えた。
強い······しかもまだ本気を出していないようだ。
お互いにな······!
仕掛けるチャンスを伺っているのだろう。
ならば、ここは私から攻めるか。
「百花繚乱······桜花無双撃!!!」
私の第一の奥義だ。
大抵の相手はこの動きに付いて来れずに、私の剣を受けることになる。
「よっ、ほっ······とんでもねえ動きだな。受け流すのがやっとだぜ······!」
などと言いながらも、しっかり受け流している。
やはりこの男、強い。
間違い無く、以前戦った冥王を上回っている。
これほどの強者がいるとはな。
「今度はこっちがいくぜっ! 烈空断神破っ!!」
私の剣を掻い潜り、バルフィーユが剣技を放ってきた。「風」属性を纏わせた斬撃か!?
奴の剣は受け止めたが、刀身から吹き出た鋭い風の刃が、私の身体を切り裂いた。
「その程度で私を倒せると思うな!」
風の刃に構わず、私の剣でバルフィーユの身体を斬り裂いた。
寸前で後ろに跳び、ダメージを軽減したか。
お互いに、傷は再生スキルによって治っていった。
「レイの時にも思ったが、再生スキルを持った人族なんて今まで見たことなかったぜ。本当、色々規格外だな、お前らは」
再生スキルについては私も思うところがあるが、お前には言われたくないセリフだな。
この男も、魔人の中では規格外なのではないか?
「フム、褒め言葉として受け取っておこうか!」
「ああ、褒めてるんだぜ! 俺をこんなにも楽しませてくれてるんだからよ!」
「ならば、まだまだ遠慮なく行かせてもらうぞ!! 弐の太刀······紅葉乱舞撃!!!」
再び剣を交え合う。
里を襲う敵だというのに、なかなか気持ちの良い奴だ。とてつもない実力者だが、犠牲者は今のところ出してはいないし、そこまでの悪人ではないのか?
〈(聖剣術)のスキルレベルが上限に達しました。(聖剣術)が(神聖剣術)に進化します〉
私のステータス画面にそんな表示が出た。
これがレイの言っていた(神聖剣術)か。
どうやら私にも使えるようになったらしい。
これほどの強敵を前に使わない手はない!
「神聖霊空衝!!!」
「ぐおおーーっ!!?」
間髪入れずに(神聖剣術)を放った。
バルフィーユの剣を砕き、さらに深く斬り裂いた。さすがにこのダメージはすぐには再生しないだろう。
今の反動で、私の魔剣も刀身が砕けてしまった。
レイも言っていたが(神聖剣術)は威力が桁違いだな。せっかくドルフ殿に打ってもらった剣だが、これでは満足に扱えそうにない。
私はレイから受け取っていたオリハルコンを取り出し、(アイテム錬成)で魔剣を修復した。
ドルフ殿のような職人が作るレベルの武器は、私のスキルでは作り出せない。
だが、素材があれば修復することは可能だ。
〈レベルが上がりました。各種ステータスが上がります〉
む? 私のレベルが上がったようだ。
まだバルフィーユを倒したわけではないのだが、今の攻防で経験値を得ていたようだな。
模擬戦などでもレベルアップをしていたし、不思議なことではないか。
私のレベルは999で止まっていて、どれだけ魔物を倒しても、それ以上上がる様子はなく、それが限界かと思っていたのだが、そうではなかったようだ。
〈解放条件を満たしました。新たなスキルを獲得しました〉
〈スキルレベルが一定値以上になりました。スキル(アイテム錬成)は(真・アイテム錬成)に進化します〉
新たなスキルも得たようだ。
さらにスキルが進化したと、続けざまに表示された。
[アイラ] レベル1000
〈体力〉3467000/3467000
〈力〉1358000〈敏捷〉1437500〈魔力〉897000
〈スキル〉
(全状態異常無効)(真・アイテム錬成)(暴食)
(獲得経験値20倍)(同時詠唱)(強化再生)
(連携)(分身)(限界突破)
(神聖剣術〈レベル3〉)(各種言語習得)
(異世界の絆〈2/5〉)
(超越者〈NEW〉)
·············私のステータスに表示されている数字がおかしなことになっている。
レベル999の時と比べて、文字通り桁違いに上がっていた。
確かに全身から溢れ出すような力の感覚は、今までとは比べ物にならない。
(超越者)
人の身の限界を超え神の領域に足を踏み入れた証。
全ステータス極限上昇。
全属性耐性極限上昇。
――――――???――――――
これの効果によるものか。
一番下の ??? とはなんだ?
まだ隠された効果があるということか?
気になるが、今はそんなことを考えている場合ではないな。
「ク、クククッ······。その感じ、どうやらお前も至ったようだな」
バルフィーユが立ち上がった。
先ほどよりも、さらに獰猛な笑みをうかべていて、明らかに今までよりも桁違いの力を発していた。
なるほど、どうやらバルフィーユも(超越者)のスキルを持っているようだな。
そして今まで、そのスキルを使っていなかったのか。
つまりは、ここからが本番というわけか。