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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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319 その頃の幻獣人族の里 〜狂魔人の襲来⑥〜

もう一方の決戦です。

(アイラside)


 キリシェからの念話を受け、転移魔法で幻獣人族の里に戻った私の見た光景は、散々な有り様だった。

 よほどの強敵が攻めてきたようで、里は見るも無惨に荒れ果てていた。



「ユヅキか? これは一体何があったのだ?」


 負傷している人達を介抱しているユヅキの姿が見えたので、現状を問う。

 キリシェからは新たな魔人が攻めてきたとしか聞いていないので、詳しくはわからない。


「アイラ、戻ってきてたのか? おれも迷宮から出てきたばっかで詳しくわからねえんだ。今、フウゲツ姐さん達が魔人の所に向かって······」



――――――――――!!!!!



 話している途中で凄まじい音が響いてきた。

 まだ戦闘が続いているようだ。

 どうやら悠長に話している時間はないようだな。


「ユヅキ、負傷者は任せたぞ」


 この場はユヅキに任せ、私は戦いの場へ急いだ。






 戦いの場に駆けつけると、シノブと長身の男が激闘を繰り広げていた。

 戦いは互角······今のところはシノブが優位に運んでいるように見えるな。



「どうでござるか!? 降参するのなら今の内でござるよ」

「ハハハハハッ! バカ言うなよ、こんなに面白え戦いなのに終わらせるわけねえだろ!」


 男は戦いをやめる気はないようだ。

 今はシノブが優勢だがこの男、おそらくまだ本気を出していない。

 キリシェからの念話でも聞いていたが、相当な手練れだ。



「ならばその戦い、私も混ぜてもらうぞ」


 当然、私も黙って見ている気はない。

 ドルフ殿に打ってもらった魔剣を構え、戦いの場に躍り出た。



「アイラ殿、来てくれたでござるか!」


 シノブが心底安心した笑顔を見せた。

 ウム、よく頑張ったな。

 周囲には巨大狐の姿のフウゲツ殿、そしてキリシェにユーリ、スミレ、長のゲンライ殿の姿があるが皆、戦闘不能状態だ。


 シノブの(ポーション)で傷は回復し、命の危険はなさそうだが皆、消耗していて戦えそうにない。

 この魔人、たった一人でこの場の全員を相手にしていたのか?


「お前も俺と戦ってくれるのか? コイツらにも言ったが、俺は女だろうが遠慮しないぜ」

「ほう、それは好都合だな。私は相手が女だから手加減して負けた、などといった言い訳が嫌いでな」


 男の言葉に私はそう返した。

 里を襲う悪人と思ったが、言葉や表情にあまり不快に思うような点はないな。



[バルフィーユ] (鑑定不能)



 鑑定魔法を使ってみたが、名前以外何も表示されなかった。バルフィーユ?

 聞き覚えのある名だな。


「そうか、お前がレイの言っていたバルフィーユという魔人か」

「へえ、お前さんもレイの知り合いか?」


 レイの名を出すと、魔人は楽しそうな笑みをうかべた。レイの話だと、コイツはかなりの戦闘狂だったか?


「そうだぜ、俺の名はバルフィーユ。レイとは楽しい戦いをさせてもらったぜ。アイツはこの場に来ねえのか?」

「残念だが、レイは別件で手が空かないのでな。代わりに私がお前の相手をさせてもらおうか」


 レイはリイネやアルケミア殿達と共に、フレンリーズ王国を襲う魔王軍の相手をしているからな。


「そうか、アイツが来ねえのは残念だな。ところで、お前はレイのなんなんだ?」

「私の名はアイラ。レイの姉······のようなものだ」

「レイの姉······か。お前さんにレイの代わりが務まるのか見せてもらおうか」


 そう言うと魔人、バルフィーユが構えを取った。

 武器を持たずに無手だな。

 だが、スキのない構えから相当に格闘に自信があるとわかる。


「シノブ、下がっていろ。皆の治療を頼む。ここからは私がこの男の相手をする」

「了解でござる、アイラ殿!」


 シノブを下がらせ、私は前に出た。

 他の皆のことはシノブに任せれば大丈夫だろう。


「お前一人で戦うのか? 別に二人がかりでも俺は構わねえぜ」

「レイから話は聞いているが、私自身の手でお前の力を見極めさせてもらう」


 バルフィーユが構えを取った。

 二人がかりで良いと言っている割には、私を甘く見ているような雰囲気はないな。



「まずは小手調べだ、いくぜっ!!」


 バルフィーユが一瞬で間合いを詰め、長身の足技で私に攻撃を加えてきた。

 私は魔剣で奴の蹴りを防ぐ。

 バルフィーユはさらに間髪入れず、連続で足技や拳での攻撃を仕掛けてくる。


 一撃一撃が重い。

 だが、この程度で私を倒せると思うな!


「ぐおっ······!?」


 私の反撃を受けてバルフィーユは一度下がった。

 一刀両断するつもりで斬ったのだが、なかなかの反射神経だ。

 肩を少し掠めただけか。

 わずかに出ていた血もすぐに癒えて、傷が塞がっている。再生能力持ちか。

 私も持っているスキルだが、厄介だな。


「俺の身体をこうも簡単に傷付けるとはな。剣技の冴え具合はレイよりも上に見えるな」

「レイの剣の師事をしたのは私だからな。まだまだレイに負けるつもりはないぞ」


 バルフィーユが笑みをうかべて言う。

 どうやらコイツの物事を見極める目は相当のようだな。あまり手の内をさらけ出すのは悪手になりそうだ。


「ハハハハハッ! 面白え、なら存分に楽しませてもらうぜ!」


 バルフィーユは何もない空間に手を入れ、剣を取り出した。

 先ほどまで使っていた魔剣はシノブが壊したのだが、まだ予備を持っていたのか。

 だが、剣と剣の戦いならば望むところだ!


「フム、いいだろう。私の剣を受けて楽しむ余裕があるのならな!」


 異世界(こちら)に来てから、拮抗した相手というのがあまりいなかったからな。

 やはり実力者相手というのは心躍る······。



 私の方こそ存分に楽しませてもらおうか······!




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