41 迷宮探索~シノブとユーリ~ (中編)
(ユーリside)
ぼくには才能があり普通の人より優れていた。
人には天才と呼ばれていた。
それを証明するように次々と魔法の才能を開花させていった。
それで浮かれていた。うぬぼれていた。
本当の天才を見て自分はただの凡人に過ぎないのだと思い知らされた。
その人の名はシノブ。
常識外れの力を持った三人の冒険者の一人。
初めて手合わせをした時は負けはしたものの、すぐに手が届くくらいだと思った。
しかし何度も彼女に挑む内にその差は遥か遠くだと実感してしまった。
どんな敵にも動じず、どんな状況でも冷静に動ける。彼女こそが天才と呼ばれるにふさわしい人物だった。
そのことをもう認めているのに認めたくない自分もいた。
それで何度も彼女に反発してしまった。
そして今こんな状況にいる。
邪気が迷宮化してしまってそれに取り込まれてしまったらしい。
出てくる魔物は恐ろしく強いのばかりでぼくの力はほとんど通じない。
こんな程度の力しか持ってなかったのに天才と呼ばれうぬぼれてたなんて自分が情けなくなる。
「ユーリ殿! あぶないでござる!」
「えっ······うわああっ!?」
シノブさんがグールの上位種を倒し安心した時、突然足下から新たな魔物が現れた。
ダンジョンワーム、レベル······57!?
とても敵う相手じゃない。
ぼくは死を覚悟した。
「とうっ、でござる!」
そんな魔物もシノブさんはあっさり倒した。
「大丈夫でござるかユーリ殿?」
「う······ああ······」
腰が抜けて······足が震えて立てない。
しかも恐怖のため、少し漏らしてしまった。
············うう、情けない。
魔物の体液で誤魔化せてるよね?
シノブさん、気付いてないよね?
おそるおそるシノブさんを見ると、シノブさんはいきなり服を脱ぎ出した。
「シ、シノブさん、何を!?」
ぼくが驚いて聞くとシノブさんは服と身体をキレイにするためだと言い、気にした様子もない。
やろうとしてることはわかったけど、ぼくが目の前にいるのに下着だけの姿になって何も思わないの!?
そんなふうに混乱してるとシノブさんは今度はぼくも脱げと言ってきた。
「ああ、下は全部脱がなくてもいいでござるよ」
うう、ぼくまで下着一枚だけにされてしまった。
女の子の前でこんな格好······恥ずかしすぎる。
シノブさんはぼくと自分の身体、そして服に洗浄魔法をかけてキレイにした。
本当に何でも出来る人だ。
苦手なこととかないのだろうか?
この場ではぼくは足手まといでしかない。
こんなぼくのどこが天才なんだ······。
本当に情けなくなってくる。
そんなぼくの様子を見て、シノブさんは心配そうにしている。
······ぼくにもっと力があれば。
せめてシノブさんの足手まといにならないくらいの······。
「ユーリ殿、やっぱり下も全部脱ぐでござる」
「え?」
「脱・ぐ・で・ご・ざ・る・よ!」
「え、ちょ······うわああっ!?」
突然シノブさんは強引にぼくの下着を脱がした。
な、なに!?
シノブさん、一体何をするつもり!?
「シ、シノブさん······一体何を!?」
「ちょっと黙ってるでござる······せ、拙者もこういうのは初めてでござるから······」
「ちょっ······シノブさん!?
あああ――――――――」
ぼくの身体はシノブさんに色々と蹂躙された。
初めての色々な経験を一気にしてしまった。
······女の人ってすごい。
〈解放条件を満たしました。新たなスキルを手に入れました〉
そんな時、頭の中に声が響いた。
新たなスキル?
ぼくのスキルに(異世界人の加護〈小〉)というのが増えていた。
〈スキル(魔力増加〈小〉)は上位スキル
(異世界人の加護〈小〉)に統合されます〉
〈各種ステータスが上がります。新たな魔法を覚えました〉
どうなってるの!?
ぼくのステータスがおかしなことになってる。
すべてのステータスが異常に上がっているし、新しい魔法もたくさん覚えていた。
なに(異世界人の加護〈小〉)ってスキルは!?
こんなスキル、見たことも聞いたこともない。
「おお、成功でござるな! 拙者にも
(異世界の絆〈1/5〉)のスキルが増えているでござる」
シノブさんが声をあげた。
このスキルってさっきのシノブさんの行動と関係あるの!?
「シノブさん!? このスキルってなんなんですか!?」
「詳しい話はここから脱出してからでござる。ユーリ殿、これで力は手に入ったでござろう? 先に進もうでござる。それともおとなしく助けを待つでござるか?」
シノブさんの言葉にハッとする。
今のぼくはこの謎のスキルの効果で兄さんにも負けないどころか上回るステータスになっていた。
しかし力を手に入れたからよりはっきりわかった。
シノブさんのステータスは今のぼくよりも遥かに上だということが。
「いえ、行きましょうシノブさん!」
今のぼくならシノブさんの足手まといにはならない。シノブさんと一緒なら守護者にだって負ける気はしない。




