317 変態男 VS 殺戮人形(※)
※(注)変態男が登場します。
苦手な方はご注意ください。
(エネフィーside)
突如現れた謎の少女。
魔王軍幹部ギュランを捜していることから、この少女も魔王軍の一員だということがわかります。
[サフィルス] (鑑定不能)
鑑定魔法を使いましたが、名前以外は何もわかりませんでした。
しかし、肌で感じる秘めている力は、あのギュランすらも上回っていると思われます。
少女の攻撃によって、私とアルケミアさん以外は倒れ伏してしまいました。
私も兵士が庇ってくれたおかげで致命傷は免れましたが、全身に傷を負いました。
ですが、ここで怯むわけにはいきません。
「――――――邪魔者は排除します」
立つだけで精一杯だった私に、少女はさらに刃を向けてきました。
あの刃を受ければ命はありませんわね······。
私は死を覚悟して目を閉じました。
しかし、少女の刃は私には届きませんでした。
誰かが少女の攻撃を止めて、私を助けてくれたようです。一体誰が······?
「大丈夫ですか? エネフィー王女様」
「え············ひぃっ!?」
目を開けると、目の前には半裸の男が立っていました。いえ、半裸というより下着一枚しか身に付けておらず、ほぼ全裸ですわね······。
思わず悲鳴をあげてしまいました。
な、なんて恥ずかしい格好を······。
男性の裸を見る機会なんてないものですから、つい目線が············。
顔は黒いマスクで隠しているため、何者かわかりません。助けてもらっていなければ、この男も魔王軍の一員だと思ったことでしょう。
「怪我をされていますな、すぐに癒やしましょう。エリアヒール!」
男から「聖」属性の光が放たれ、私の身体の傷が一瞬で癒えていきました。
私だけでなく周囲の兵士達も回復しています。
これは聖女のアルケミアさんすらも上回るほどの「聖」なる力······。
な、何故この男がそのような力を!?
「さあエネフィー王女様、下がっていてください。あの少女は私がなんとか致しましょう」
混乱して頭が上手く回りませんわ。
こ、この正体不明の男に任せていいのでしょうか?
「聖女アルケミア殿。エネフィー王女様と周りの方々のことをお願いします」
「はい、お任せください正義の仮面様。ご武運をお祈り致しますわ♡」
アルケミアさんは、この男を普通に受け入れていますわ。正義の仮面様?
アルケミアさんは男の正体を知っていますの?
「――――――新たな障害出現。違う······これは先ほどの脅威? しかし脅威度が上昇している?」
少女が男を見て、何か言っています。
無表情ですけど、裸の男を見て動揺しているのかもしれません。
「さあ、謎の少女よ。これ以上の蛮行を許すわけにはいきません。私のお仕置きで貴女を止めさせてもらいます」
男が少女を指差し言いました。
黒いマスクで顔を隠し、ほとんど裸の姿をした男と小柄な少女。
見た目だけならば、男の方が悪人に見えますわね。
「――――――ソード·フェスティバル」
少女の翼の羽根がいくつも抜け落ち、男の周囲を旋回しています。
そして一斉に男に向かっていきました。
あの羽根は鋼鉄をも貫く刃······。
防具も何も身につけていない男に、防ぐ手立ては······。
「はあっ! その程度の攻撃では私の身体は傷つけられませんよ」
男は羽根を避けることも防ぐこともせずに、すべて受けました。
刃の羽根は男を貫くことも刺さることもなく弾かれ、地面に落ちました。
防具も身につけていないのに、何故?
「――――――脅威度さらに上昇。全力で排除します」
少女の両手の爪が剣のように伸び、男に斬りかかっていきました。
男は慌てることなく冷静に少女の両手を掴み、攻撃を止めました。
この男、とんでもない実力者ですわね。
「ああ、さすがですわ正義の仮面様♡ 相変わらずの立派なお姿です」
アルケミアさんが周囲の人達に治癒魔法をかけながら、男と少女の戦いを見守っています。
「あの······アルケミアさん? あの男は一体何者ですの?」
助けてくれた方に言うことではありませんが、とても立派な姿とは思えませんわよ。
「正義の仮面様は、アルフィーネ王国の危機を救ってくれた方ですわ」
アルケミアさんの話によると、アルフィーネ王国で現れた冥王を最後に討ち倒したのが、あの仮面の男らしいです。
レイさん、アイラさん達でも苦戦し、劣勢に追い込まれていたところに颯爽と現れ、解決したと。
話だけ聞きますと、確かに立派な方ですわね。
············格好はともかく。
アルケミアさんも、彼の素顔は知らないみたいですわ。一体何者なのでしょうか?
――――――――――!!!!!
「――――――攻撃がすべて効果無し。ありえない······目の前の対象の存在が理解不能」
少女の全身から繰り出される斬撃を、男はすべて防いでいました。
防いだというより、少女の刃が男の肉体にまったく通らないだけですが。
少女の表情に変化はありませんけど、明らかに動揺している様子ですわね。
「さあ、謎の少女よ。覚悟はよろしいかな?」
男の言葉に、少女がビクッと反応したように見えました。これはやはり動揺しているようですわ。
「――――――最大レベルの脅威と判断。戦闘形態、最終段階に入ります」
まだ何かするつもりのようですわね。
少女の身体が光り、変化が起きていきました。
1話に収まりきらなかったので決着は次話に持ち越します。