閑話⑫ 4 騒動の終結(※)
※(注)お見苦しい表現があります。
読まれる際はご注意ください。
(リーフィside)
「こんな夜更けに騒ぎを起こすとは不届き千万です。私のお仕置きで少しばかし懲らしめてあげましょう」
夜に学園長室に忍び込んだらうっかり防犯装置を作動させてしまい、空き教室で追手をやり過ごしたところに突然、例の仮面の男が現れたのですよ!?
フレネイアさんとフェニアさんが男の持つロープに縛り上げられてしまいました。
「ああっ······!?」
「正義の仮面様······!? あくっ······♡」
お二人が縛られたまま天井に吊るされてしまいました。亀の甲羅のような形のよくわからない複雑な縛り方をされて、身体にロープが喰い込みすごく痛そうなのですよ。
けど、痛そうというより気持ち良さそうな声をあげている気がするのですけど?
それにフェニアさんは何故、仮面の人を様付けで呼んでいるんですか?
「さあ、次は貴女の番です」
男がこちらを向きます。
ひゃあああ〜、正面からだと恥ずかしくてまともに見れないのですよ。
裸同然の格好ですから······。
先日、レイっちの下着を見たばかりだから余計に男性の身体を意識しちゃうのですよ。
だけど、よくよく考えたらチャンスなのですよ。
そもそも私はこの人の正体を突き止めるために行動していたのですから。
その張本人が目の前にいるのですよ。
「どうやら貴女がこの騒ぎを起こした主犯のようですな? ならば貴女だけは特別なお仕置きをしてあげましょう」
仮面の人が私をビシッと指差し言いました。
騒ぎを起こすつもりはなかったんですけど確かにこの件についての主犯は私なので反論できないのですよ······。
「あ、あの······正義の仮面さん······」
「そのお仕置き······是非、アタクシにも······!」
縛り上げられながらフレネイアさんとフェニアさんがそんなことを言ってるのですよ。
というか特別なお仕置きってなんですか?
お二人の縛り上げ方も充分特別な気がするのですよ。
「ちょっと待ってほしいのですよ、ええっと······正義の仮面さん、なのですよね? 私がここに来たのはあなたのことを調べ上げるためなのですよ!」
「ほう。私をですか? 何故そのようなことを?」
「もちろん、正体を暴くためなのですよ! 私は報道部に所属していますからね、学園に関わる謎はすべて私が解いてみせるのですよ」
私も男に対抗してビシッと指差したのですよ。
ここは勢いに乗るべきなのですよ。
「そもそも正義を名乗るのなら何故、身体は恥ずかしげもなくさらけ出しているのに肝心の部分は隠しているのですか!? 私がそこを暴いてあげるのですよ!」
肝心の部分とは当然、素顔のことです。
この距離でスキを突けば、あの黒いマスクを剥がすことは可能かもしれません。
私だって特別クラスの一員なんですからそれなりに実力はあります。
ここは慎重に······。
「つまり私の隠された部分を知りたいと? いいでしょう、貴女の望みを聞き入れましょう」
············え? そんなあっさりとですか?
これは予想外なのですよ。
けど、それならば願ってもないことなのですよ。
まさかこんなに簡単に素顔を見せてくれるとは······。
「さあ、どうぞ満足するまで堪能して下さい」
男は腰を前に突き出す形で私の方に近付いて来たのですよ。
え······? ちょっと待ってください?
何かおかしくないですか?
男の言う隠された部分ってもしかして······。
「な、なな、何をしようとしてるのですか!? 私が言ってるのはそっちじゃないのですよ!?」
無意識に私は後ずさって男から距離を取りました。男はジリジリと私の方に近付いてきます。
ど、どうしてそんな下半身を強調するような格好で迫って来るのですか!?
「どうしました? さあ、遠慮はいりません」
や、やっぱり男の言っているのはマスクではなく下の方の······。
いやいや、そこは隠していていいのですよ!?
確かに興味ないわけじゃないのですが······。
もちろん私は男性経験なんてないのですよ!
下着すらまともに見る機会なんてなかったのに、当然その中身なんて······。
というかどうして近付いて来るのですか!?
そ、それを近付けて一体どうするつもりなのですか!?
「ひぃっ······!?」
後ずさっていましたが壁にぶつかり、これ以上逃げられないのですよ。
男との距離がどんどん近くなります!?
正確には男の下の部分がすでに私の目の前に······。
ち、近い、近いのですよ!?
え······ま、まさか······?
待ってなのですよ······、それ以上近付かれると······!?
や、やめ············。
せめて心の準備をさせ――――――――
「いやあああーーっっっっ!!!???」
(フェニアside)
空き教室で警備の方達をやり過ごそうとしたら、正義の仮面様が現れてロープで縛り上げられてしまいました。
フレネイアさんも同じように吊るされてアタクシ達は身動きが取れません。
縛られたロープが身体に喰い込み······あら?
痛いはずなのに何故か少し気持ち良いような。
フレネイアさんもアタクシと同じような表情ですわね。
これはクセになってしまいそうな感覚······。
「どうやら貴女がこの騒ぎを起こした主犯のようですな? ならば貴女だけは特別なお仕置きをしてあげましょう」
リーフィさんに向けて正義の仮面様が言いました。お、お仕置きとは以前アタクシも受けたあの······。
「あ、あの······正義の仮面さん······」
「そのお仕置き······是非、アタクシにも······!」
フレネイアさんもアタクシと同じことを思っているようです。
正義の仮面様はアタクシ達の声に応えず、リーフィさんに迫っていきます。
リーフィさんは腰が抜けたようで立つことすらも出来ない様子ですわ。
そんなリーフィさんに対して正義の仮面様はどんどん距離を縮めていき······。
「いやあああーーっっっっ!!!???」
ああ、ついにリーフィさんが正義の仮面様のお仕置きを受けました。
最初はジタバタと暴れていたリーフィさんもだんだんと抵抗しなくなっていきます。
最後に正義の仮面様はすっかりおとなしくなったリーフィさんの頭を下着の中に············。
ズルいですわよ、リーフィさん。
次はアタクシにも············!!
「これでお仕置き完了です。満足されましたか?」
正義の仮面様の言葉にリーフィさんは答えません。答えられないと言った方がいいでしょうか?
下着に隠されたたくましい男性部分をリーフィさんは今、存分に堪能している最中ですから。
「侵入者はここですか!?」
教室の扉が開き、学園長の秘書のグラムさんが入ってきました。
今のリーフィさんの悲鳴を聞いて駆けつけたのですわね。
「え、マスター······???」
グラムさんが正義の仮面様を見て何かつぶやきました。よく聞こえませんが正義の仮面様を見て驚いているのでしょう。
正義の仮面様は下着の中のリーフィさんを解放してグラムさんに引き渡しました。
「······こ、これは何事なの?」
遅れてリプシース学園長が教室に入ってきました。縛られ吊るされているアタクシ達、グラムさんに抱えられているリーフィさん、そして正義の仮面様を見て困惑していますわ。
「これは学園長殿もいいところに。今回の騒ぎを起こした彼女達を捕えておきました。後はよろしく頼みます。では私はこれで······さらば!」
「え、あ······ちょっと待ちなさ······っ」
学園長が止める前に正義の仮面様は去っていってしまいました。
もっとゆっくりお話しをしたかったのに残念ですわ。
「フェニア、フレネイア。どういうことか説明してちょうだい」
ロープを解かれて降ろされたアタクシ達は状況の説明を迫られました。
アタクシ達は素直に学園長室に忍び込んだ理由、そして逃げる途中で正義の仮面様が現れ、捕まってしまったことを話しましたわ。
「······そういうこと。私もあの男の正体を知りたいくらいなのよ。私の部屋を調べても情報なんて出てこないわよ」
話を聞いて学園長は呆れたように言いましたわ。
今回の件については厳重注意だけで許してくださるみたいです。
「ふ······ふふっ。タ、タマが2つ、······棒が1つ············なのですよ······ふふふっ」
リーフィさんは放心状態のようですわ。
グラムさんに抱きかかえられた状態でうわごとのようにつぶやいています。
正義の仮面様のお仕置きがよほど刺激的だったようです。
「ところで······リーフィはなんであんなことになってるの? よくわからないことを口走ってるけど······」
学園長がリーフィさんの様子を見て言います。
「今回の騒ぎの主犯だとしてあの方からのご褒美······いえ、特別な仕打ちを受けていましたから」
「············?」
フレネイアさんの説明を聞いて、学園長は首を傾げています。
「外傷は特に見当たりません。おそらくはなんらかの精神攻撃を受けたのだと推測します。魔力の痕跡などは残っていないのでしばらくすれば意識は戻ると判断します」
グラムさんがそう診断しました。
それを聞いて学園長がホッと息を吐きました。
「まあわかったわ。今日のところはあなた達も帰っていいから明日、三人とも私のところに来なさい。たっぷりお説教をするわよ。グラムさん、リーフィを寮まで運んであげてちょうだい」
「了解しました、学園長」
今日はこれで解散となり、翌日アタクシ達はたっぷりと絞られることになりました。
後日、正義の仮面様のお仕置きを受けたリーフィさんはというと······。
「フレネイアさん、フェニアさん! 私の報道部としてのプライドに賭けてもあの仮面の人の正体を必ず突き止めるのですよ!」
以前にも増して正義の仮面様の正体を暴くのに力を注ぐみたいですわ。
「あのような辱めを受けたのですから、必ず責任を取ってもらわないといけないのですよっ!!!」
顔を真っ赤にしてリーフィさんが力強く宣言しましたわ。怒りではなく羞恥による表情ですわね。
どう責任を取ってもらうつもりなのかしら?
「······リーフィさん、それよりも正義の仮面様のアレは実際のところ、どうでしたか?」
「············!!?? や、やめてなのですよフェニアさん! 私、男性のなんて初めてで······まだ頭から離れないのですから!!?」
「そうですわよね、リーフィさん。アレは世界が変わるほどの衝撃でしたわよね」
「も、もしかしてフェニアさんも······? ということはフレネイアさんも······なのですか?」
アタクシとリーフィさんはその話で色々と盛り上がってしまいました。
「リーフィ、フェニアさん。それよりももう正午になりますわよ。早く行かないと〝決闘〟が始まってしまいますわ」
フレネイアさんの言葉を聞いてアタクシもリーフィさんもこうしてはいられないと学園に向かいます。
今日の正午にアイラさんと正義の仮面様が決闘を行うということが告知されていました。
どちらも学園内で有名な方なので、この決闘には多くの人が注目していますわ。
もちろんアタクシ達も······。
「アイラさんと仮面の人の決闘。これは特ダネの予感なのですよ! さあフレネイアさん、フェニアさん、急ぐのですよ!」
リーフィさんに急かされながらアタクシ達は学園に向かいました。
何かとんでもないことが起きそうな予感がしますわね。ですが、正義の仮面様がいるのならどんな大事件も解決してくれると思いますわ。
本編が中途半端なところにお見苦しい話を入れて申し訳ありませんでした。
次回より本編に戻ります。