閑話⑫ 1 報道部所属の兎人族リーフィ
本編執筆が少々厳しくなってきたので唐突ですが閑話を挟ませていただきます。
学園編のこぼれ話、閑話⑪の続きになります。
(フレネイアside)
今、わたくしは学園に現れる謎の男性、正義の仮面さんの正体についてフェニアさんと話し合っています。
先日、わたくしはあの方に決闘を挑みましたけど見事に返り討ちに合ってしまいました。
素顔も本名も不明ですけど、決闘を挑んだことで少なくとも悪意ある方ではないとわたくしは確信しましたわ。
魔法を暴発させてしまったわたくしを冷静に、優しく助けていただきましたから。
その後にあの方から受けたお仕置きは衝撃的なものでしたわ······。
あのたくましい男性の············きゃっ♡♡
思い出しただけで顔が熱くなってしまいますわ。
フェニアさんも以前あの方に挑み、返り討ちに合ったとのことです。
「正義の仮面様に会えたことでアタクシは自分の愚かさを思い知らされましたわ。あの方に会えた幸運を女神様に感謝致しますわ」
ある時期からフェニアさんの様子が変わったと思っていたのですが、そういうことだったのですわね。
「フェニアさんもあの方の正体はご存知無いのですか?」
「ええ、残念ながら······。ですがきっと名のある人物に違いありませんわね」
フェニアさんの言う通りですわね。
あれほどの実力があり無名なのは信じられませんわ。顔を隠しているということは正体を知られるのが困るから?
「学園の出来事に関してでしたら······報道部は何か情報を掴んでいないかしら?」
「······! そうですわね、ちょっと確かめて見ましょうフェニアさん!」
学園には報道部という集まりがあり、学園の様々な出来事を記事にして情報を広めています。
クラスメイトのリーフィが報道部に所属しているのでさっそく聞きに行くことにしましょう!
「正義の仮面······学園に現れる謎の男のことです? 報道部でも彼の正体を追ってるのですが、未だ有力な情報は掴めていないのですよ」
リーフィが申し訳なさそうに言います。
彼女はラビッタ族という兎の獣人で視覚、聴覚に優れていて情報収集を得意としています。
報道部でも指折りの人物なのですが。
「でもでも、推測になるのですが正体については候補がいくつかあるのですよ!」
わたくしとフェニアさんが落胆した様子を見せるとリーフィが言葉を付け足しました。
もちろん二人でリーフィに詰め寄りましたわ。
「フ、フレネイアさんにフェニアさんもずいぶん仮面の人に執着するのですね? 何かあったのです?」
リーフィが少し引きつった表情で言います。
そんなことよりも正体の候補について詳しく聞きたいですわ。
フェニアさんもわたくしと同じようにリーフィに迫ります。
「わ、わかったのです! だから二人とも少し落ち着いてほしいのですよ!」
リーフィがそう言ったのでわたくし達は距離を取りました。
わたくし達は最初から落ち着いていますわよ?
「学園の警備に不備は見当たらないとのことです。ということは例の仮面の人は学園の関係者の可能性が高いと思うのですよ」
確かに学園の警備は厳重で不審者はまず入り込めないはずですわね。
ですがあの方の実力を考えたら警備を抜けるのは容易い気がしますが。
まあ、ここはリーフィの意見を聞いてみることにしましょう。
「ですがリーフィさん、学園関係者······教師や生徒にそれほどの実力者がいましたか?」
フェニアさんが疑問をあげます。
あの方は実験棟が大火事になった時に颯爽と現れ、取り残されていた人々を助け、火を消し止めました。
その手際はあまりに鮮やかで、優秀な者が集うこの学園においてもあれほどの実力者に心当たりはありませんわ。
「フッフッフッ······一人怪しい人物がいるのですよ! 最近この学園に途中入学してきた実力未知数の男性が······!」
リーフィが怪しげな笑みをうかべて言います。
最近途中入学してきた人物は特別クラスに二人いますわね。
一人はアイラさん、そしてもう一人は······。
「もしかしてレイさんのことですの?」
「そう、レイっちなのですよ! 国王様からの推薦で学園に入ったほどの人物、実力の全容はなかなか見せてくれないので詳しくはわかりませんが相応の強さを持っているのは間違いないのですよ!」
わたくしがそう言うとリーフィは力強く答えました。興奮して頭の兎耳がピーンと立っています。
レイさんとアイラさんは成長促進スキルを持っていてパーティーを組めばレベルが上がりやすくなります。
わたくしや特別クラスの方々、そして他のクラスの方々もそのスキルによって大きくレベルを上げてもらいました。
そんなスキルを持つお二人自身も相当なレベルだとは予想出来ますわね。
実際、お二人のレベルは鑑定すら出来ませんから。
確かにレイさんの実力は未知数······。
あの方と同一人物という可能性も······?
「さすがにその可能性はないと思いますわよ? レイさんと正義の仮面様······どちらも男らしい素敵な方ですけどタイプが違いますわ」
フェニアさんが否定的な意見を出しましたわ。
わたくしもそう思いますわよ。
どちらも紳士的な男性ですけどとても同一人物とは思えませんわ。
「それならば確かめてみればいいのですよ! 突撃取材なのです! さっそくレイっちに聞いてくるのですよ」
リーフィがすっかり乗り気になってしまいましたわね。一度思い立つと猪突猛進で止めるのも難しくなりますが、ここは任せてみるとしましょうか。
わたくしも気になりますからね。
もしもレイさんと正義の仮面さんが同一人物だとしたら······。
わたくしはレイさんの············。
――――――――――ブパァッ!!
またあの方のお仕置きを思い出してしまい、興奮で鼻血が出てしまいましたわ······!