293 隣国の首都の危機
荒らされていた村を後にして、オレ達は隣国の首都を目指した。
ちなみに、隣国の首都の名前はハイベレントというらしい。
あんな光景を見た後では、和やかに雑談するような気分ではなくなってしまった。
それはアイラ姉達も同じようだ。
まあ、すでに隣国の領土に入っているし、いつ魔王軍に襲われるかわからない。
気を引き締め直さないとな。
道中、いくつか同じような村を見つけたが、やはり荒らされた後だった。
この周辺の村は全滅みたいだな······。
規模はそれほど大きくない村だったが住人の姿はなかった。魔王軍に連れ去られたのか、逃げおおせたのか。あえて聞くことはしなかった。
無事ならばいいのだが。
「前方から魔物の群れが来るぞ」
アイラ姉が言う。
オレの探知魔法でも、そんな反応を確認した。
翼を持つ飛竜······ワイバーンという魔物だ。
体長は人間よりも、一回り大きいくらいかな。
数は40〜50体くらいで、平均レベルは60前後か。
今までの魔物に比べて、かなり強い。
まあ、それでも騎士達の方が実力は上だが。
複数人で一体のワイバーンを相手にして、確実に倒していく。
「ディヴァイン·ジャッジメント!!」
最後にアルケミアの「聖」魔法でトドメを刺し、魔物の群れを撃退した。
少し強めの魔物だったけど、相変わらずオレ達の出番はなかったな。
「······こんな街道にワイバーンの群れが現れるとは。おそらく魔王軍の仕業なのだろうな」
リイネさんが真剣な表情で言う。
やはり異常事態だったのか。
迷宮の魔物に慣れてしまったので、あまり強く感じなかったが、普通はレベル20〜30くらいの魔物でも強力な部類に入る。
その倍以上のレベルの魔物が、群れで現れたんだからな。
けど、正直安心もしている。
この程度の魔物なら、どうにでもなるからな。
魔王軍が率いている魔物が、これくらいの奴ばかりならいいんだが。
だが、もっと強い魔物が現れる可能性も充分に考えられる。油断はしないように気をつけよう。
その後も順調に進み、遠目に見るからに頑丈そうな、高い外壁に囲まれた町が見えてきた。
あれが隣国の首都ハイベレントのようだ。
「あれは······魔物の群れか!?」
リイネさんが馬車から身を乗り出し言う。
町の入口の門に、すごい数の魔物が群がっているのが見えた。
ゴブリンやオークやその上位種、その他にも色々な種類の魔物が多数いる。
壁の上から兵士達が、必死に弓や魔法などで魔物を撃退しているが、数が多すぎる。
――――――――!!!!!
そして遂に入口の門が破られた。
巨大な門は無残に壊され、そこから魔物達が流れ込んでいく。
これ、相当ヤバい状況じゃないか?
「レイ、行くぞ!」
さすがに黙って見てるわけにはいかない。
アイラ姉の言葉に頷き、馬車を降りた。
「待てアイラ、レイ。わたしも行くぞ! アルケミア殿、騎士の統率はお任せする!」
リイネさんもオレ達と共に、馬車を降りて駆け出した。今のオレ達のステータスで本気を出せば、馬よりも速く走れる。
町の入口付近で、流れ込んで来た魔物達を待ち受けていた隣国の兵士達が必死に喰い止めている。
だが、兵士達の表情に絶望の色が見える。
「我が国もここまでか······」
兵士の誰かのつぶやきが、オレの耳にも聞こえてきた。おそらくは何日も魔物達との戦いが続き、日に日に追い詰められていたのだろう。
そしてついさっき最後の守りが破られた。
まさに絶望的状況だろう。だが――――――
「百花繚乱············桜花無双撃!!!」
アイラ姉の奥義が放たれ、多数の魔物が斬り刻まれ倒れた。
オレもアイラ姉に続いて魔物達を倒していく。
「え······」「一体何が······?」
突然の出来事に、隣国の兵士達は状況を把握出来ていない。
さらにリイネさんが派手な剣技を使って、魔物を吹き飛ばした。
「わたしはアルフィーネ王国第二王女リイネ! 我が国の隣人にして友である貴国の救援要請を受け、参上した!」
リイネさんが剣を掲げ、名乗りを上げた。
「アルフィーネ王国王女······!?」
「き、救援が来たのか······!」
それを聞き、絶望していた隣国の兵士達の表情に希望が見えた。
魔物達はリイネさんを脅威と見たのか、一斉に襲いかかってきた。
オレとアイラ姉はリイネさんの隣に立ち、魔物を撃退していく。
「悪しき魔物達を滅せよ······ホーリーブレス!!」
遅れて聖女アルケミア率いる騎士団が到着した。
アルケミアの「聖」魔法で魔物を滅していく。
「我が騎士団の力の見せ所だ。一匹残らず殲滅せよ!」
王国騎士団隊長のグレンダさん、そして神殿騎士団隊長がそれぞれ指揮して、周囲の魔物を倒していく。
魔物のレベルは20〜30、高い奴でも60くらいだ。
数が多くても、この程度ならば問題ない。
オレとアイラ姉、リイネさんも騎士達に協力して魔物を撃退する。