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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第二章 始まりの町アルネージュでの出来事
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38 迷宮探索 ~レイとリン~(前編)

 邪気溜まりがまばゆい光を放った。

 目を開けていられない程強い光が周囲を覆った。

 しばらくして光が収まり目を開けると周囲は薄暗く、岩の壁に囲まれていた。


 どこだここは? 洞窟の中?

 さっきまで平原にいたはずだが。



「そこにいるのはレイさんですか?」


 すぐ近くから声が聞こえた。リンの声だ。

 だが、リン以外の人の姿が見当たらない。


「リン、ここはどこなんだ?」


 お互いに特に身体に異常はないようだ。


「······おそらくあの邪気溜まりが迷宮化してしまって、それにわたし達は取り込まれたようです」


 邪気溜まりが迷宮化? どういうことだ?




 リンの話によると邪気溜まりは放っておくと魔物を生み出すだけでなく、こうして異次元に迷宮を作り出してしまうらしい。

 そしてその迷宮からはより強力な魔物が生まれるという。

 おいおい、迷宮まで生み出すって本当に意味不明だな············。


「ですが、本来なら人里離れた場所で邪気溜まりが何十年も気付かれずに放置されていた場合に稀に迷宮化するものです。こんな発生してすぐの邪気が迷宮化するなんて聞いたことありません······」


 普通ならありえないことか············。

 でも、あのデビルオークとかの変異種も滅多に現れないというのが大量に出てきていたし、もう何が起きても不思議じゃないな。


 それよりも今問題なのは他のみんなはどこにいるのかだ。

 ここが迷宮ならゲームみたいにMAP表示とか出ないかな? とか思って試したら出来てしまった。

 しかも全階層が表示された。



 うわっ······かなり広いなこの迷宮。

 地下へと下るタイプの迷宮のようだ。

 全30階層あって1階1階が広すぎる。

 オレとリンがいる所は地下11階層の中間だ。

 中途半端な所だな。



 探知魔法で他のみんなの居場所を調べた。



 アイラ姉とグレンダさんが17階層。

 セーラとミウネーレが6階層。

 シノブとユーリは25階層に反応がある。


 うまいこと二人ずつ分かれた形になっているな。

 とりあえずリンにそのことを教えた。


「みなさん無事なんですね!? セーラ様、ミウさんも······よかった」


 リンは心底安堵しているようだ。


「迷宮ってのはどう対処するべきなんだ? 脱出の方法とかわかる?」

「一番上の1階層に脱出できる出口があるはずです。もしくは最奥の守護者を倒せば迷宮は消滅します」

「守護者?」


 いよいよゲームっぽくなってきたな。


「迷宮の一番奥にいる特別な魔物のことです。そいつを倒せば迷宮は消滅し、脱出できるはずです」


 つまりボスを倒せってことかな。

 シノブとユーリが地下25階層にいる。

 一番深い階層にいるのはおそらく邪気溜まりのすぐ近くにいたせいだろう。

 これなら上を目指して脱出するよりも最奥を目指した方が早い気がする。


 ユーリは心配だがシノブなら守護者とやらも倒せるんじゃないかな?

 オレ達はどうするべきか············。

 アイラ姉とグレンダさんは心配いらないだろう。

 そうなるとオレ達は上を目指してセーラとミウネーレと合流するか。

 リンも二人を心配しているしオレも心配だ。



 転移魔法で二人の所まで行ければよかったんだが転移は行ったことのある場所にしか行けない。

 オレとリンだけで迷宮の外に脱出することは可能みたいだが、それじゃあ意味ない。



「わかりました、行きましょうレイさん」


 オレ達は二人と合流するために上の階層を目指すことにした。

 魔物も出てくるが、迷宮バットというコウモリ型の魔物や、ロックラットというネズミ型の魔物ばかりだ。

 どれもレベル10~20くらいで大したことない。

 リンと協力しながら魔物を倒し進んでいく。

 MAPを見ながら進んでいるので迷う心配はない。



 しばらく進むと上へ続く坂が見えた。

 階段とかじゃないのか。

 11階層から10階層に上がると魔物のレベルが少し下がっていた。

 やはりゲームのように下へ行くほど魔物が強くなるみたいだな。

 魔物は大したことないがこの迷宮広いな。

 1つの階層進めるのに数時間はかかりそうだ。




 それからさらに数時間かけてようやく9階層に上がることができた。

 オレはまだ余裕があるがリンは少し息があがっていた。


「リン、少しここで休もう。だいぶ体力を消耗しただろ?」

「いえ、大丈夫です。それよりも早くセーラ様とミウさんと合流しましょう············」


 なおも進もうとするリンだが足がもつれてつまづいてしまった。

 やっぱり結構疲れてるな。


「リン、セーラ達なら大丈夫だ。セーラはレベル130を超えてるしミウだってレベルは40近い。これくらいの魔物なら自力で倒せるはずだよ」

「ですが······」

「リンの方がバテてちゃ意味ないだろう? 一度しっかり休もう」

「······わかりました。すみませんレイさん············」


 なんとかリンも納得して休憩する。

 周囲の魔物は倒したし今魔物が入ってこれないように結界魔法を張った。

 これで周りを気にせずに休めるだろう。


「これでも食べて体力を回復させよう」


 オレはアイテムボックスから食料を取り出しリンにも渡す。こんなこともあろうかとアイテムボックスには大量の食料と飲み物が入っている。

 アイテムボックスに入れておけば時間経過もないので腐る心配もないから便利だ。


「ありがとうございます、レイさん」


 リンが受け取った食料を食べる。

 まあ疲れていただけなので心配はいらないだろう。

 さて、一応探知魔法で今みんながどの辺にいるか調べるか。



 アイラ姉とグレンダさんは今20階層に反応がある。どうやら下を目指しているみたいだ。


 シノブとユーリも下を目指しているようだ。

 今28階層にいるな。

 このままシノブ達が守護者を倒すのを待ってた方が早い気がするな。


 セーラとミウネーレは······今7階層か。

 二人も下に向かっているのか?

 上の出口を目指した方が安全だと思うんだが······。


 いや、そういえば探知魔法やMAPはオレとアイラ姉とシノブにしか使えないって話だった。

 転移魔法同様に聞いたことないとセーラは言っていた。

 ということは探知魔法もMAPも使えないセーラ達は、自分たちが迷宮のどの辺りにいるのかもわかってないのかも。


 確かにMAP無しならオレも絶対に迷うだろうな。

 となるとリン以上に不安がってるかもしれない。

 やはり早く合流した方がいいか。

 とりあえずは無事のようだし、リンにそのことを教える。


「そうですか······。セーラ様とミウさんはこちらに向かってるんですね」

「魔物はこの階層よりも弱いだろうし心配なさそうだよ。やっぱりセーラ達が心配?」

「当たり前ですっ、セーラ様はわたしにとって家族同然ですし、ミウさんは大切な友達なんですから」


 リンは二人の無事を聞いて安心したようだ。

 オレ達は上を目指し、セーラ達は下へ向かっているから早く合流できそうだ。

 今はゆっくり休んで体力を回復させよう。

 リンも大分落ち着いてきたようだ。


「そういえば聞きたかったんですけど············レイさん達は元の自分たちのいた世界に帰りたいんですよね?」

「ん? そりゃ帰りたいけど、どうしてそんなことを?」

「いえ······その、異世界に帰ったらみなさんもうこちらには来ないのかなと思いまして······」


 ああ、そういうことか。······どうなんだろう?

 向こうとこっちの世界を自由に行き来できれば最高なんだけど、そんな都合良くいくとは限らないものな。

 もしかしたら向こうに帰れたら、もうこっちには二度と来れないかもしれない。


「状況次第だな。確かに帰ることばかりであまり考えてなかったけど、こっちの世界にも未練が出てきたからな」

「異世界ってどんな所なんですか? やっぱり楽園のような素敵な世界なんでしょうか?」

「いや、さすがに楽園ってわけじゃないけど、なんて説明すればいいかな······」


 うまく説明できないけど、とりあえず魔法が無く魔物もいない。

 そしてこっちよりも文明が少し進んだ世界だと説明した。


「なんだか想像できませんね。魔法も無く魔物もいない世界なんて」


 ついでに言えばレベルもないが。

 まあこんな感じの説明でいいのかな?


「レイさん達がこちらの世界に来なかったら、わたしもセーラ様もあの時、サイクロプスに殺されていたかもしれません。······そう考えると、もしかしたら女神様がわたし達を助けるためにレイさん達を連れてきたのかもしれませんね」

「はは、女神様の導きってやつか」


 ありえなくもないかな。

 だとしたら、いきなり別世界に連れてこられて迷惑な話だが、セーラ達を助けられたんだし結果的にはよかったのかな?




 そんな感じにリンと雑談しながら休息をとった。

 しかし初めて会った時はこんな和やかに雑談できる関係になるとは思わなかったな。

 最初はずいぶん嫌われていたからな。




「あの······レイさん、こんな状況でなんですけど············いえ、こんな状況じゃないと言い出せなかったかもしれませんけど······」


 リンが何やらモジモジと言いにくそうに言う。

 なんだろうか?


「なに、リン?」

「その······ですね、けしてわたしが進んでやりたいってわけじゃなくてですね、確かめたいというか、その············」


 よくわからないが、すごく言いにくそうだ。

 しばらくあーだの、うーだの呟いていたが、意を決したのかリンが口を開いた。


「もう一度レイさんの―――――をご奉仕させて下さい!」


 ························。

 一瞬思考が停止した。今リンはなんて言った?


「だ、駄目ですか?」

「い、いや······駄目ってことはないけど」


 むしろこちらがいいの? と言いたい。


「前にお風呂場で()()時にこの加護スキルが手に入ったじゃないですか? ······でもこのスキル、〈小〉と付いていてスキルの力は弱い方のはずです。もう一度したらスキルの力が上がるかも、と思いまして」


 まあその可能性はあるが······。

 確かにオレも気になっていた。

 しかしこんな状況で()()()()()をするのは不謹慎じゃなかろうか?


 いや、でもさらに強くなれる可能性があるんだ。

 けっして(よこしま)な気持ちじゃない、はず。


「じ、じゃあお願いしてもいい、のかな? リン」

「はいっ······ま、任せて下さい!」


 なんか妙な展開になってしまった。

 こんなことをアイラ姉に知られたら、また大変なことになりそうだが······。







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