288 国王からの依頼再び
本編再開です。
先日は温泉施設で、色々あって大変だった。
ルナシェアと間違いを犯す、一歩手前まで行ってしまったが、ミールとアイラ姉の登場により、それどころではなくなったからな。
結果的によかったのか、どうなのか······。
その後のアイラ姉のお説教とシゴキは、かなり厳しいものだったと言っておく。
ミールやミウ達からも、オレとルナシェアは色々と追求されたしな······。
(愛のペンダント)のこととかも······。
それから数日が経ち、ルナシェアは予定通り、聖女としての使命のため、王都を発って行った。
寂しくはなったが、ルナシェアとは念話が出来るようになったので、話そうと思えばいつでも話せる。
何か緊急事態があれば、連絡も入るだろう。
神樹の迷宮の攻略を進めつつ、今後の予定を立てるために、オレとアイラ姉の二人で王都に戻ってきた。
学園再開の正確な情報を聞きたいしね。
「レイ、それにアイラも一緒か。丁度良かった、お前達に頼みがあるのだが」
王城まで行き、出迎えてくれたのはリイネさんだ。
オレ達に頼みたいことってなんだろうか?
「まあ、ここではなんだからな。二人とも奥まで来てくれ」
そう言ってオレ達は王城の執務室まで案内された。この部屋は何回か来たことがある。
今は誰もいないみたいだが。
ロディンは別の場所で仕事中かな?
「今、父上を呼んでくる。少し待っていてくれ」
リイネさんがオレ達を残して部屋を出ていった。
父上って······国王のことだよな。
つまり国王がオレ達に何か頼みがあるということか?
しばらく待っていると、リイネさんが国王を連れて戻ってきた。
護衛のためか騎士隊長のグレンダさんも一緒だ。
「突然の頼みですまぬが、二人とも都合は良いか?」
国王がオレ達に問う。
特に急ぎの用事はないんだけど、内容次第かな。
「こちらの都合は問題ありませんが、頼みとは?」
アイラ姉が問い返す。
まあ、国王の人柄はなんとなくわかってるし、無茶苦茶な依頼はしてこないと思うけど。
「実は我が国と友好的な、隣国からの救援要請を受けた。魔王軍に攻められて、劣勢に追い込まれているとな」
いきなり穏やかじゃない内容だな。
ルナシェアやリイネさんから、周辺諸国で魔王軍の被害が出ていると以前から聞いていたが。
劣勢に追い込まれているって、かなりヤバいんじゃないか?
「我が国も魔王軍に警戒せねばならぬから、多くの騎士を他国に送れん。かと言って見殺しにするわけにもいかぬ」
国王が地図で、問題の国の場所を教えてくれた。
この国と幻獣人族の里がある国の、ちょうど間にあるフレンリーズ王国という国だ。
ちなみにリイネさん達の住む国はアルフィーネ王国というらしい。(最近知った)
フレンリーズ王国の領土は、アルフィーネ王国よりも少し小さいが、充分に大国と言っていいくらいだな。
隣国ということもあって、友好的な付き合いをしているようだ。
ちなみに幻獣人族の里がある国とは、どちらも仲がよろしくないそうだが。
「リイネ様と私が率いる、第三騎士団が救援に向かう。聖女アルケミア殿率いる、神殿騎士団も一緒にな。レイとアイラ殿も来てくれると心強い」
グレンダさんが言う。
どうやらすでに出陣の準備は整っているようだ。
そこへタイミング良いのか悪いのか、オレ達が訪ねてきたってわけか。
戦闘が行なわれているのなら「聖」属性魔法を使える聖女は必須だろう。
怪我人を癒やすことができるし、魔物を弱体化させることもできる。
それに人々にとって、聖女は勇者同様に特別な存在だから、劣勢で絶望しているかもしれない隣国の住人の希望となる。
ルナシェアは王都を発ったばかりで、セーラは龍人族の国にいる。
エレナはまだ聖女になって間もないので、本殿で色々とお勉強中だし、知名度も低い。
だからアルケミアが隣国に向かうことになったのか。
劣勢に追い込まれているのなら、悠長にしていられないよな。
学園再開時期を聞くどころじゃなくなったな。
まさか城に来て、いきなり厄介事が舞い込んでくるとは思わなかった。
オレとアイラ姉は頷き、国王の依頼を受けることにした。隣国に興味もあるしね。
「今回の件に対する報酬については、わたしが隣国に情報提供を掛け合おうと思っている。隣国が異世界について、わたし達が知らないような情報を持っているかもしれないからな。お前達が異世界人だということを話すかは、そちらの判断に任せるが」
リイネさんが今回の報酬の一環として、隣国の王族に情報提供の協力などの交渉をしてくれるようだ。
もしかして今回の依頼、オレ達が隣国と顔合わせをするためでもあるのかな?
元の世界に帰る方法を知っているとは限らないが、他国の王族の協力が得られるのは大きい。
オレ達にとって一番嬉しい報酬だ。
異世界人だと正直に話すか、そこは隠して情報をもらうかは、その国の王族の人柄次第だな。
リイネさん達みたいに良い人ならいいんだけど、オレ達を利用して何か企むような人物の可能性もあるからな。
まあ、この国とは友好的らしいので、悪い人達ではないと思いたいが。
「出発はいつになる? 一度、幻獣人族の里に戻り、長達に事情を話しておきたいのだが」
「わたし達はすでに出陣の準備は整っている。アルケミア殿と神殿騎士達も万端のはずだ。正午には王都を発つつもりだったが」
アイラ姉の問いにリイネさんが答えた。
正午というと、あと二時間くらいあるな。
それなら里に戻って、事情を話してくる時間はありそうだ。
というわけで、オレとアイラ姉は国王の依頼を引き受け、その事情説明のために、幻獣人族の里に戻ることにした。