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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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(番外編)魔人族側の動き②

(バルフィーユside)


 トゥーレの拠点を出て、俺は今、魔王の城に来ている。面倒くせえが、幻獣人族の住処に向かったと思われるガストの様子を見てきてくれと頼まれているからな。


 そろそろ向かわねえと、トゥーレから催促が来そうだ。

 俺はガストなんざ生きてようが死んでようが、どっちでもいいんだがな。



「バル(にい)()()()()()()に何の用があるの?」


 一緒についてきたメリッサが、嫌そうな口調でそう言ってきた。

 俺だって来たくて来たんじゃねえよ。

 くそったれな魔王なんざに用はねえ。


「バ、バルフィーユ様······!?」

「何故、こちらに······?」


 俺の突然の来訪に、魔王城の兵士共が驚いてやがる。神将の座を下りてからは顔を出さなかったからな。


「バルフィーユ様、魔王様は只今、不在ですが······」


 兵士の一人がおそるおそる言う。

 別に取って喰う気なんざねえから、そんな怖がるんじゃねえよ。


 それにしても、魔王の野郎はいねえのか。

 まあ、別に用はねえからどうでもいいがな。

 侵略推進派だったナークが討たれたことで、魔王軍サイドは大慌てだったみたいだから色々と忙しいんだろうな。

 ざまぁねえな。


「レニーはどこだ?」


 俺が用があるのは、魔王でも幹部連中でもねえ。

 情けねえ下っ端の魔人だ。


「レニー······? あ、ああっ······アイツなら」


 兵士の一人が指差した方を見ると、丁度探していた奴の姿があった。

 問題のアイツは複数の魔人に囲まれて、殴る蹴るの暴行を受けている。



「言われたことも満足にできないのか、お前は!?」

「だからてめぇはクズなんだよっ」


 抵抗することもなく、されるがままだ。

 ()()無理難題を押し付けられた挙げ句に、難癖つけられてるんだろうな。

 相変わらず情けねえ奴だ。


「面白そうなことしてるじゃねえか。俺も混ぜろよ」

「「「バ、バルフィーユ様!?」」」


 暴行してた時は下卑た笑みをうかべてたくせに、どいつもこいつも俺を見た途端、表情を引き攣らせやがった。

 前にクソ生意気な幹部一味を八つ裂きにしてやっただけじゃねえか。

 無意味に暴れる気はねえよ。


「バルフィーユさん······?」


 そいつらとは逆に暴行されていた魔人、レニーは俺を見て嬉しそうな表情を見せた。

 コイツは魔人族としては小柄で、メリッサよりも少し身長が高いくらいだ。

 それに加えヒョロヒョロの体型に臆病な性格で、いつもオドオドしていやがる。


「少しレニー(こいつ)を借りていくぞ。役に立ってねえなら別にいいだろ? 文句はあるか?」

「い、いえ······どうぞ、連れて行ってください!」

「それと俺を呼ぶのに()はいらねえぞ? もう俺は神将でもなんでもねえんだからな。呼び捨てで構わねえぜ」

「そ、そのような恐れ多いことなど出来るはず······」


 まあ本当に呼び捨てにしやがったら、バラバラに引き裂いてやるがな。

 レニーに暴行してた奴らは敬礼して、逃げるように去っていった。



「バルフィーユさん、ありがとうございま······」


 俺は情けねえ(つら)を見せるレニーの胸ぐらを掴んだ。


「おいコラ、なんであんなカス共に一方的にやられてるんだよ? てめぇは前に俺が直々に鍛えてやったんだから、あんな連中ぶちのめすくらいの力はあるはずだろうが!」

「そ、そうかもしれないですけど」


 ちっ、あんだけ鍛えてやったってのに気弱な性格はまだ直ってねえのか。

 今のコイツなら、あんな奴らが束になってかかってきても勝てるだろうに。

 あんだけ一方的にやられても、怪我一つしてねえじゃねえか。

 力があっても性格がこれじゃあ意味ねぇな。


 ったく男のくせに情けねえ············ん?

 そういやコイツ、男だったか? 女だったか?

 気にしたことなかったな。

 顔付きは男にも女にも見えるんだよな。


 ······まあ、そんなことどっちでもいいか。



「バル兄、この人誰?」


 メリッサはレニーとは面識なかったはずだ。

 レニーもメリッサを見て、首を傾げている。


「え、もしかしてバルフィーユさんの子供、ですか?」

(ちげ)えよ。コイツはトゥーレの部下だ」

「トゥーレミシア様の? ああ、そういうことですか」


 何を納得したのか知らないが、まあいい。


「どうも······。自分はレニーと言います。バルフィーユさんには以前、色々お世話になりまして」

「アチシはメリッサ! バル兄と普通に話せるなんて珍しいね? 普通はさっきみたいに怖がられるのに」


 うるせえよ。

 むしろ、てめえはもっと俺を畏れ敬え。



「レニー、お前はしばらく俺の下で働いてもらうぞ。どうせここにいたって、たいしたことさせてもらえねえんだろ?」

「え、自分がバルフィーユさんの直属にですか!? もちろん喜んで! 自分に出来ることでしたら、なんでもします!」


 よしよし、快く引き受けたな。

 まあ、拒否したところで無理矢理連れて行くつもりだったがな。


「当面はメリッサ(こいつ)の面倒を見てもらうぜ。子供(ガキ)の相手ならお前にも出来るだろ?」

「え、でも······メリッサさんってトゥーレミシア様の人形(ドール)なんですよね? もし暴れたりとかしたら、自分に止められるか······」

「安心しろよ。メリッサ(こいつ)の強さはレニー(お前)と同じくらいだ。トゥーレの戦闘用殺戮人形(キラードール)に比べれば可愛いものだぜ」

「あんな恐ろしい方達と比べられても······」


 なんにせよ、これでレニーに子守りを押しつけられるな。初めから、こうしてりゃよかったぜ。



 ガストのことはどうでもいいが、幻獣人族の奴らは高い戦闘能力を持ってるとか聞いた覚えがある。

 これでメリッサ(ばか)を気にせずに戦えるかもしれねえな。


「よろしくおねがいします、メリッサさん」

「アチシこそよろしく、レニー! アチシはトゥーレの人形(おともだち)達と違って、おとなしくできるんだから心配しなくていいよ!」


 ウソつけ。散々、俺を振り回したくせによ。

 レニーはそんなメリッサの言葉を鵜呑みにして安心してやがる。


 まあいいか。

 気弱な性格はともかく、レニーの実力は確かだ。

 その気になったら、どうにでもなるだろうよ。



 しかしレニー(こいつ)を見てたら、急に昔の知り合いの娘を思い出しちまったな。


 双子の姉妹で、姉の方はレニーみたいに臆病で、俺を見て緊張して声すらうまく出せずにいた奴だ。

 見ていて愉快だったのをよく覚えている。

 妹の方は俺を前にしても臆することのなかった、対称的な姉妹だったが。



 魔人族の領土(ここ)から出ていってずいぶん経つが、あいつら今頃何してるんだろうな。

 柄にもなく昔を思い出しちまったぜ。




次回より本編再開する予定です。

投稿までしばらくお待ち下さい。

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