勇者(候補)ユウの冒険章⑥ 11 龍王の城の温泉にて
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シャルルアの案内で、ユウ達は龍王の城の中にある温泉に向かった。
ここはトライヒートマウンテンから湧き出る湯を利用した、天然の温泉だ。
温泉は男性用、女性用、そして混浴の3つに分かれていた。
ユウは男性用に入ろうとしたが······。
「ユウ様も一緒に入りましょうよぉ。混浴って方なら、一緒でも問題ないですからぁ」
ミリィがそんなことを言い出した。
「男のぼくが、ミリィ達と一緒に入るのは問題あるんじゃないかな?」
「ミリィは大丈夫ですよぉ! 前にも一緒に入ったことあるじゃないですかぁ。ユウ様だって、一人じゃ寂しいですよねぇ?」
ユウは少し困った口調だが、ミリィはお構いなしだ。
「ミリィ、ユウと一緒に入るのはちょっと······」
「じゃあテリっちは女性用に一人で入ってればいいじゃないですかぁ。ミリィはそれでいいですよぉ」
「なんでそうなるのよっ!?」
テリアとミリィがいつもの言い合いを始めてしまう。
「············ユウ、いっしょにはいる。ひとりはさびしい」
「まあ、少し恥ずかしいが、ユウとなら妾も構わぬぞ」
マティアがユウの袖を掴み言う。
シャルルアも顔を赤らめながら賛成した。
「······某は一人で構わ······」
「何言ってるんですかぁ。ジャーネも一緒に入るですよぉ!」
一人で女性用に向かおうとしたジャネンを、ミリィが引き止め、結局は全員で混浴に入ることとなった。
「うわ〜、すっごく広いお風呂だね」
龍王の城の温泉は豪華という言葉だけでは言い表せないほどの造りだった。
ユウが感嘆の声をあげる。
「混浴の方はこんな造りなのね。女性専用より豪華に見えるわ」
テリアも混浴側に入るのは初めてらしい。
ちなみにユウを含めて、全員バスタオルで最低限身体を隠している。
「実は妾も混浴に入るのは初めてじゃ。親しい間柄の男女が利用するものじゃからのう」
「ルルにはそういう人はいないの?」
「おるわけなかろう。神子としての使命に全うしていて、それどころではなかったしのう」
シャルルアが恥ずかしそうに、ユウから目を逸らす。シャルルアは同年代の男の裸体を見慣れていないようだ。
「······あまり見るでないわ。男に肌をさらすなど、妾は経験がないからのう」
シャルルアの身体はところどころ鱗のようなものがあるが、それ以外は人間と大差ない。
シャルルアも女の子なので、男のユウに身体を見られるのは恥ずかしいようだ。
「············ユウのからだ、アタシとなにかちがう?」
マティアがユウの身体を不思議そうに触る。
自分の身体と比べるように、交互にペタペタと撫でる。
「マティア、くすぐったいよ」
「······???」
「や、やめなさいよ、マティア!」
ユウの身体の下の方まで手を伸ばそうとしたので、テリアが慌てて止めた。
「ずるいですよぉ、マーティ。ミリィもユウ様に触りたいですぅ!」
「アンタもやめなさいよ、ミリィ!」
ミリィも便乗しようとしてテリアに止められた。
マティアは再びユウに手を伸ばそうとして、シャルルアがそれを止める。
四人がギャーギャーと騒ぎ立てる。
「······本当に仲の良いことだな」
そんな様子をジャネンは呆れて見ていた。
ジャネンもバスタオルで身体を隠しているが、裸の状態だ。肌の色は少し灰色っぽいがテリア達と何ら変わりはない。
「ジャネンの身体、綺麗だね。やっぱりジャネンも普通の女の子なんだね」
ユウがテリア達の言い合いの場から抜け出し、ジャネンに言う。
「あまりジロジロ見るな! 某も他種族とはいえ、異性に肌をさらすのは初めてだ。······異性の身体を見るのもな」
ジャネンも男の身体に免疫はないようだ。
ユウから視線を逸らしながら言う。
対するユウは恥ずかしがる様子がない。
「ねえ、前から気になってたんだけど、ジャネンのその口調、ひょっとして無理して喋ってるんじゃない?」
「そ、そんなことはないぞ······」
「そうかなぁ? たまにジャネンの口調が変わる時がある気がするんだよね」
首を傾げながらユウがジャネンに近付く。
お互いに裸にも関わらず、気にせずに距離を縮めるユウに、ジャネンも対応に困っている。
「············あまり近付いてくるな、某は······」
「うわっと!?」
ユウが足を滑らしてバランスを崩した。
そのまま勢い余って、ジャネンに抱きついてしまう。
「ごめん、ジャネン······」
「······いいから早く離れろ。あたしだって一応女だ。異性の身体には慣れていないんだ······」
「あ、やっぱり少し口調が変わったね」
「さっさと離れろと言ってるんだ······!!」
強い口調で言われ、ユウがジャネンから離れた。
ジャネンの頬は赤く染まっていた。
「あー!? ジャーネまでずるいですぅ! ミリィもユウ様に抱きつかせて下さいぃ!」
「やめなさいっ、ミリィ!」
「············ユウ、もういちどさわらせて」
「お主ら······静かに湯浴みが出来ぬのか?」
のんびり温泉を楽しむ雰囲気ではなく、混沌とした状況となっていた。
このメンツで騒がしくするなという方が無理なのかもしれない。
その後、かなりの長湯となって、全員がのぼせる寸前になるのであった。
番外編はここで終わります。
本編、只今執筆中のため投稿までしばらくお待ち下さい。
誤字報告いつもありがとうございます。
拙い文章で申し訳ありません。
物語はまだまだ続くのでこれからもお付き合いしていただけたら幸いです。
なるべく誤字少なめにするよう努力します。