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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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勇者(候補)ユウの冒険章⑥ 10 迷宮攻略の報告

――――――――(side off)――――――――


 守護者を倒したことで、ユウ達は迷宮から脱出することができた。

 周囲の光が消えると、トライヒートマウンテンの頂上に戻ってきていた。



「クアアーーッ!!!」


 迷宮を脱出したユウ達を出迎えるように、霊獣カオスレイヴンが鳴き声をあげた。


「心配かけたな。もう大丈夫だ」


 ジャネンが霊獣を宥める。

 山の頂上に充満していた邪気はすっかり消えており、先ほどとは打って変わって、幻想的な美しい景色が展望できた。


「············すずしい」

「本当ですねぇ、迷宮の中は暑すぎでしたよぉ」


 マティアとミリィが汗を拭った。

 山の頂上はそれほど暑くなく、今までいた迷宮に比べれば天国に思えた。


「ジャネン、最後に小さな瓶を取り出して、何をやってたのよ?」

「迷宮が消える前に特異点······邪気を回収させてもらった。迷宮を作り出せるほどの邪気だからな、予想以上の成果だ」


 テリアの問いにジャネンが答える。

 ジャネンの持つ瓶には、ドス黒い霧のような物が入っていた。


「これで冥界の神様からの依頼は達成できたの?」

「いや、最低でも3つ分は回収してくるように仰せつかっている」


 ユウがそう言うと、ジャネンは同じような瓶をいくつも取り出した。

 今、邪気を回収した瓶以外は何も入っていない。


「本当に人使いが荒くない? 冥界の神って。ジャネン一人にこんなことをさせるなんて」

「今回の使命は(それがし)の方から志願したんだ。少しでも、あの方の力になりたくてな······」

「ジャネンは本当に冥界の神様を尊敬してるんだね」


 ジャネンにも色々と事情があるようだ。


「ユウ、出来ればそのダンジョンコアも某に譲って欲しいのだが······。それは我が神が、今もっとも必要としている物だからな」

「この紅い宝石だね。ぼくは構わないよ」

「······自分で言っておいてなんだが、そんなあっさり渡していいのか? ダンジョンコアは滅多に手に入らない、貴重な代物なのだが」

「もともとジャネンの力になりたくてやってたんだしね。それに、ぼくはジャネンから借りた魔剣を壊しちゃったから、そのお詫びだと思ってよ」

「魔剣ナイトメアのことか。そういえば、そんなこともあったな」


 ジャネンは苦笑いをうかべながら、ユウからダンジョンコアを受け取った。


「あ、ジャネンの笑った顔、初めて見た気がするよ。やっぱり女の子は笑顔が一番だね」

「············っ!? 何を言って······」

「ねえ、もっととびきりの笑顔を見せてよ?」

「ば、ばかなことを言ってないで、早く龍人族の町に戻るぞ! 報告は必要だろう!」


 照れ隠しをするようにジャネンが言う。


 ユウ達は来た時のように霊獣カオスレイヴンの背に乗り、龍人族の町に向かった。












「おおっ、皆、無事か!? セーラ殿達から話を聞いて心配してたのだぞ!」


 龍人族の町、龍王の城で最初に出迎えてくれたのはシャルルアだ。

 シャルルアの後ろには聖女セーラ達の姿もある。


「ルルも神子の試練ってのは終わったの?」

「うむ、バッチリじゃ! これで残す試練は2つになり、妾が正式な神子となるのも、もうすぐじゃ!」


 ユウの問いに胸を張って答える。

 シャルルアも、龍神の試練を見事達成したようだ。


「無事で何よりです、ユウ君、皆さんも」


 セーラも安心した表情でそう言った。

 リンやエンジェにも、それぞれ声をかけられた。


「目覚めてすぐに出ていったと聞いたが、心配は無用だったようだな。小さき勇者よ」


 豪華な衣装を身に纏った男性がユウに言った。

 若々しい顔立ちだが、威厳ある雰囲気を持つ男性だ。


「え〜と、どちら様?」

「ば、ばか、ユウ! この人は龍王様よ!」

「龍王さん?」


 首を傾げるユウに慌ててテリアが言う。


「人の姿では初めてだったな。私が龍人族を束ねる王だ」


 龍王が改めて名乗った。

 初めて見る人の姿の龍王にユウも驚いている。


「龍王さん、もう身体は大丈夫なの?」

「ふふふっ、私は神将に無理に力を抑え込まれていただけだ。(ぬし)の方がよほど重症だったろう?」

「ぼくはもう大丈夫。すっかり回復して、すごく調子がいいくらいだよ」


 龍人族の王を前にしても、ユウは緊張した様子を見せず、普通に会話している。

 あまりに馴れ馴れしい態度に、テリアがさらに慌てた。


「ユウ! 龍王様にそんな言葉遣いで······」

「よい。我が国を救った英雄だ。私の方が頭を下げなければならぬくらいだ」


 龍王が笑いながら言う。

 ユウの態度を不快に思っている様子は微塵もない。


「そちらの冥界の神子殿にも世話になった。改めて礼を言わせてもらおう」


 龍王はジャネンの方に目を向けた。


「某は我が神の(めい)に従ったまで。礼なら加護をすでに受け取っている、それで充分だ」


 龍王の言葉にジャネンは、無表情で淡々と答えた。

 ユウ達は神将との決戦前に龍王の加護を受けていて、ジャネンもその時に授かっていた。




「············あせをながしたい」

「迷宮のせいで、身体中が汗でベトベトですよぉ」


 積もる話も色々あるが、それよりもまず城の中にあるという温泉に入りたいと、マティアとミリィが主張した。


「シャルルアよ、(ぬし)も龍神様の試練で疲れているだろう? 小さき勇者殿達を案内して共に入ってくるとよい」

「心得ました、龍王様。さあ、ユウとジャネンは初めてじゃったな。我が国自慢の温泉に案内しようぞ」


 龍王は快く了承し、シャルルアがユウ達の案内を引き受けた。






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