閑話⑧ 3 只今、取り調べ中(※)
※(注)変態男が登場しています。
お見苦しい表現がかなりありますのでご注意ください。
(ミールside)
冒険者ギルドの一室にて、女冒険者ミネラの尋問を行っていたところにレイさ······ではなく、正義の仮面さんが現れました。
マスクで顔を隠して、下着一枚だけの異様な姿に、ミネラは頬を赤く染めて、目を逸らしています。
この人、意外と男慣れしていないみたいですね。
ギルドの職員の方々は、突然の登場に驚いていますが、正義の仮面さんのことを知っているみたいです。
以前、不本意にも町で活躍してしまったと言っていましたからね。レイさんが。
謎のヒーローということで、クラントールでそれなりに有名になっているようです。
姉さんは正義の仮面さんの姿を目を逸らしながら、それでもチラチラ見ています。
以前はほとんど直視出来なかった様子でしたが、だいぶ耐性が上がったようですね。
「なんだかあの人、初めて会ったとは思えないですです?」
「どういうことでしょうか? なんだかマスター様のような気配です······?」
ディリーさんとアトリさんが首を傾げています。
確信を持ってはいないようですが、正義の仮面さんの正体に気付きかけていますね。
「私の名は正義の仮面。これより私が、あなたの尋問を引き継ぎましょう」
「せ、正義の仮面? ······ただの変人じゃないの?」
ミネラは正義の仮面さんのことをまったく知らないようですね。
尋問を引き継ぐと言った正義の仮面さんを、ギルドの方々は黙認するつもりのようです。
ミネラもアトリさんに拷問されるよりはマシだと判断したのか、強気な態度を取ります。
「はっ、そんな格好で現れて、私が動揺すると思わないことね。私は何も話す気はないわよ。······それにあなたがその格好で襲いかかってきたら、そっちが犯罪者よ?」
「ご安心を、手荒な真似をするつもりはありません」
正義の仮面さんは、ディリーさん達が持ってきた果実の乗ったお皿を手に取りました。
何をするつもりでしょうか?
「もしかして食べ物で釣るつもり? バカにしないでよ、私はそんな子供じゃないわよ」
ミネラが鼻で笑います。
さっきは果実を食べるワタシ達を羨ましそうに見ていましたが、さすがにそんなことでは口を割らないでしょう。
「それは食べてみないとわからないでしょう? この果実は非常に美味です。食べてみれば、きっとあなたの気も変わるでしょう」
確かにとても美味しかったのですけれど、それで素直になるとは思えません。
ですが、それを聞いてミネラがゴクリと喉を鳴らしています。
「そ、そう······なら食べさせなさいよ。見ての通り、私は縛られているから自分じゃ食べられないのよ。それとも、これを解いてくれるのかしら?」
解くわけないでしょう。
解いたら逃げそうですからね。
まったく、どこまでもふてぶてしい態度ですね。
「いいでしょう。それならば私が食べさせてあげましょう」
ミネラに言われるがままに、正義の仮面さんが切り分けられた果実の一つを手に取りました。
そのままミネラに食べさせるのかと思ったのですが、どうやら違うようです。
どうするつもりでしょうか?
「さあ、お食べなさい」
············果実を、食べ物を乗せてはいけないであろう場所に乗せました。
具体的には言わないでおきます······。
そしてミネラに向けてズイッと近付けました。
「ひ······いやあああっ!!? な、なんてことしてるのよ!? そんなの食べられるわけ······」
「どうしました? 遠慮はいりませんよ」
「遠慮なんかしてな······、いやああああっ!! や、やめなさいっ!!?」
ミネラが引きつった表情で悲鳴をあげました。
少しでも正義の仮面さんから離れようとするミネラですが、拘束されているため逃げられません。
正義の仮面さんはそんなミネラに構わず、果実を乗せた状態で迫っていきます。
さっきまでのふてぶてしい態度が無くなり、完全に正義の仮面さんのペースですね。
姉さんやギルドの方々は絶句して、その様子を見ています。
「そ、そういうことね!? こうやって脅して私の口を割らせるのが狙いね!? そんな手には乗らな············」
「さあ、どうぞ存分に味わって下さい」
「い······いやあああーーーーっ!!!???」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
正義の仮面さんによる尋問が終わりました。
ミネラはいとも簡単に口を割り、自らの余罪をすべて告白しました。
他の町で、たまたま大きな依頼を成功させて羽振りの良かった新人冒険者から大金を巻き上げたことで味をしめて、こんなことをしていたとのことです。
他にも詐欺まがいのことをしていたみたいですが、重罪と呼べるほどのことはしていないみたいですね。
ミネラの処罰は冒険者資格を一時剥奪され、第五級犯罪奴隷へと落とされることになるようです。
第五級ならば、おとなしく罪を償えばすぐに解放されることも可能でしょう。
ちなみに尋問を終えた後、ミネラは最後に正義の仮面さんのお仕置きを受けて現在、哀れな姿となっています。
同じ女の身としてあの仕打ちは正直ムゴイと思います·····。
ワタシの場合は正義の仮面さんの正体を知っているので平気ですけど、見ず知らずの男性のはちょっと············。
············あのようにミネラの頭を強引に収納して、正義の仮面さんの下着は伸びたりしないのでしょうか?
「彼女は自らの罪をすべて告白し、今はこのように悔い改めています。もう彼女のことを許してあげて下さい」
悔い改めていると言っても、ミネラはピクピクと痙攣して意識があるかも怪しい状態ですが······。
それに許すというより、ワタシは別にそこまでの怒りは覚えていませんでしたが。
まあ、今のミネラの哀れな姿を見ていたら、さっきまでのふてぶてしい態度くらい許してもいいと思いますけど。
それよりも下着の中にミネラ(の頭)を収納しているそんな状態で近付いて来たら、姉さんが酷く怯えてしまいますよ。
「どうしました? もう怯える必要などありませんよ」
「ひぃやあっ······そ、その······あのっ」
テンパって言葉にならないようです。
姉さんはきっとあなたを見て怯えていますよ?
いえ、怯えているというよりも············。
姉さんの視線は正義の仮面さんの下半身に釘付けになっていますね。
以前なら気を失っていたでしょうけど、本当にずいぶんと耐性がついたみたいですね。
完全に気を失っているミネラはギルド職員の方々に身柄を引き渡され、連れて行かれました。
正義の仮面さんから解放されたミネラの表情が、何故か恍惚としたものだったのが少し気になりましたが。
ディリーさんとアトリさんも、もうここに用はないので帰って行きました。
二人は正義の仮面さんのことを少し気にしていましたが、正体は結局わからなかったみたいです。
ワタシ達も、もう帰りますか。
「ほら姉さん、いつまでテンパってるんですか? 男性の身体なんて、もう見慣れているでしょう」
「見慣れてないよっ!? ミールこそ、よくそんなに冷静でいられるね!?」
ようやく調子を取り戻してきましたね。
ですが、ワタシだってそこまで慣れているわけではありませんよ。
それに正義の仮面さんは何故かレイさんとは別人のような魅力も感じます。
······今のミネラを見ていたらワタシももう一度正義の仮面さんのお仕置きを受けてみたいと思ってしまいました。
もしかしてワタシ、自分でも気付かない内に毒されています?
「大丈夫ですか? 気分が優れないのならば、私が送りましょうか」
「ひぃやあっ!!?」
後ろから正義の仮面さんに声をかけられて、姉さんが悲鳴のような声を出します。
「あ、あの······そのっ」
せっかく調子を取り戻したと思ったのに、またテンパっています。
「大丈夫ですよ。姉さんはさっきのミネラみたいに、正義の仮面さんに果実を食べさせてもらいたいそうです」
「言ってないよっ、そんなこと!!?」
「言っていなくても少し興味があったのでは?」
「な、ないよ······!?」
ワタシの言葉に少し目が泳いでいます。
正義の仮面さんはそんなワタシ達を見て、まだお皿に残っていた果実に手を伸ばそうとします。
「あ、あの······!? ミールの言ったことを真に受けないでっ!! わ、わたしそんなつもりないから!!?」
姉さんが慌てて止めています。
正義の仮面さんも冗談だったみたいで、すぐに手を引っ込めました。
「体調は大丈夫のようですね。ならば、私はこれで失礼します」
そう言って正義の仮面さんもこの場を去っていきました。
姉さんはホッとしたような、少し残念なような複雑な表情をしています。
もしかして、本当に食べさせてもらいたかったのですか?
「あ、あの人······本当に何者なのかな?」
「さあ? 通りすがりの正義の味方でいいんじゃないですか?」
姉さんの言葉にワタシは適当に答えておきました。
正義の仮面さんの正体を知ったら、姉さんはどんな反応をするでしょうか?
いっそ暴露してみるのもいいかもしれませんね。
今回はパロディ要素強めに表現を取り入れてみましたが、執筆していて自分でも思いました。
これはひどい······。
R18にはなってないとは思いますが、批判や削除申請が来ればこの話は即削除しますのでご了承ください。