284 ルナシェアからの告白
ルナシェアと二人で神樹の迷宮攻略を順調に進め、140階層までたどり着いた。
140階層にもボスはいなく、宝箱が2つ置かれていた。
中には(愛のペンダント)というアイテムが、それぞれに入っていた。
なんだか恥ずかしい感じだが、魔力と魔法耐性を上げる効果があるので、ルナシェアと片方ずつ身につけた。
対となるアイテムを身につけた者同士の愛が深いほど、効果が高まると表示されていたけど······。
お互いに装備したら、魔力の数値が跳ね上がっていた。これは通常の効果なのだろうか?
それともオレとルナシェアとの間にそれだけ······。
いやいや、オレはミールに告白されてまだ返事をしていないんだぞ。
なのにルナシェアを意識するとか、駄目だろ!?
「············」「············」
意識したら恥ずかしくなってきたので、この状態で迷宮攻略を再開するのはマズい。
というわけで、少し休憩することにした。
この階層には魔物は現れないみたいだし、休憩には丁度良い。
特に疲れてはいないが、ここまででずいぶん魔物を倒してきたからな。
自覚がないだけで、身体は疲労している可能性はある。
「レイ殿、そういえば聖剣はどうしたのでありますか? 今日は一度も使っていないでありますが」
軽く雑談していたら、そんな質問がきたので、オレは龍人族の国の出来事を話した。
「ああ、そういえばセーラ殿から、そんな連絡が入ったと聞いた覚えがあるであります。自分の役目が忙しく、気にする余裕がなかったでありますが」
ルナシェアも本殿でずいぶん忙しそうにしていたと聞いていたからな。
他の事にかまける余裕はなかったようだ。
リイネさんからも聞いていたけど、ルナシェアの話では他の国では魔王軍の侵略が本格化してきているらしい。
「小生も聖女候補として、人々の不安を和らげるために各国を回らなければならなくなるであります」
ルナシェアは数日後には王都を発ち、他の国に向かうらしい。
急な話と思ったけど、なんだかんだでルナシェアは長く王都に滞在していたからな。
勇者と聖女は人々の希望だと言うし、仕方無いのかな。
「そうか······。寂しくなるな」
オレは思わず、そうつぶやいていた。
本来、聖女というのは気軽に会える存在じゃないはずだけど、今代の聖女とは全員と面識があるから忘れていた。
「······し、小生も寂しく思うであります。同年代の殿方と、ここまで深い関係になったのもレイ殿が初めてでありますし」
深い関係······。
恋人同士というわけじゃないけど、ルナシェアには加護を与えて······つまりはそういうことをしたわけで······。
ルナシェアも似たようなことを考えたのか、オレと目が合うと恥ずかしそうに視線を逸らした。
「······レイ殿はミール殿と付き合わないのでありますか? ずいぶん前に告白を受けたと聞いたでありますが」
ルナシェアもそのことを知っていたのか。
先延ばしにしてまだ返事を、というより答えを出してないんだよな······。
優柔不断だと言われても反論できない。
むしろ、その通りなのだから······。
「まだ返事を出せていないのなら、小生にもチャンスがあるでありますか?」
そう言ったら、ルナシェアがそんなことを言い出した。······え?
「チャンスって······どういうこと?」
「そ、そのままの意味でありますよ。小生はレイ殿を異性としてお付き合いしたいと思ってるであります」
モジモジとしながらも、ルナシェアがはっきりそう言った。
まさかのルナシェアからの告白!?
ミールにもまだ返事をしていないのに、どう答えればいいんだ!?
「··················」
「し、小生は女としての魅力はないでありましょうか?」
言葉が出ないオレに、不安そうな表情で問いかけてくるルナシェア。
魅力がないなんてことはない。
ルナシェアは話しやすく一緒にいて、とても楽しく思うし、容姿も美少女の部類に入るだろう。
そんなルナシェアに告白されて、オレは世の男達に嫉妬されるくらいの幸せ者ではないだろうか?
むしろルナシェアは、こんなオレのどこを好きになってくれたのだろうか?
「ルナシェア、オレは······」
―――――レイさん、今大丈夫でしょうか?
「うおっ!!?」
ルナシェアの言葉に答えようとしたタイミングで、ミールから念話が入った。
―――――ミ、ミール? 何かあったのか?
―――――いえ、レイさんとルナシェアさんの迷宮攻略はどの辺りまで進んだのかなと思いまして。ちなみにワタシは、アイラさん達と60階層辺りを探索中です。
ミール達も迷宮探索に入っているようだ。
オレは現在、140階層まで来ていることを話す。
―――――そうでしたか。失礼ながら、もしかしたら迷宮攻略そっちのけで、ルナシェアさんと良からぬことでもしているのかと心配していたのですが。すみません、さすがに迷宮内でそんなことするはずないですよね。
告白されたことは良からぬことに入るのだろうか?
そういえば、前に迷宮内でリンと良からぬことをした覚えが······。
オレは平静を装いながら、無難に答えて念話を切った。
「今のは、ミール殿と念話とやらをしていたでありますか?」
「ああ、ミールもアイラ姉達と迷宮探索をしているらしい」
ルナシェアに大体の会話内容を話す。
「······念話とはミール殿が羨ましいでありますな。そういえばリン殿とも出来るのでありましたか? ······確か、加護のレベルが一段階上がれば可能になるでありましたか」
ルナシェアが何やら思案顔をしている。
「ルナシェア······それよりもさっきの告白のことだけど」
「す、すぐには答えなくても大丈夫でありますよ! ただ、小生も真剣だということを知ってほしいであります!」
ルナシェアの告白は、からかいや冗談などではなく本気のようだ。
オレも真剣に考えて、答えなくてはならないな。