279 シャルルア達と変態仮面男との邂逅(※)
※(注)変態男が現れます。
苦手な方はご注意ください。
(シャルルアside)
聖女セーラ殿達と、新たにやってきたアイラという人族が、龍王様と今後の話し合いをしている。
魔人族が今までにない動きを見せる今、他種族と手を組み、不測の事態に備えるべきであろうからな。
妾も今まで以上に精進しなくては。
妾は龍神様に仕える神子という立場じゃが、まだ正式なものではない。
龍神様からの6つの試練を見事制して、正式な神子となれる。
妾はまだ、半分の3つしか試練を達成しておらぬ。
4つ目の試練を受ける準備が整ったところに、神将率いる魔人族が攻め込んできたため、先延ばしになっておった。
魔人族が不穏な動きを見せる今、早くすべての試練を達成し、正式な神子とならなければ······!
そう意気込んだのじゃが······。
「な、ない······!? 試練の間の扉の鍵が······」
大切な試練のためのアイテムを失くしてしまった。一体いつ、どこで落とした!?
まったく心当たりが思い付かぬ。
「どうしたのよ、シャルルア?」
「何か探し物ですかぁ?」
妾の様子がおかしいのを気にかけて、テリアとミリィが問いかけてきた。
「龍神様の試練の間の扉の鍵がなくなってしまったのじゃ······」
城の地下には正式な神子になるための特別な部屋があり、そこで龍神様からの様々な試練を受ける。
試練の間の扉は厳重に封印が施されているため、専用の鍵がないと開くことができない。
鍵は神子となる資格の者に与えられ、試練が終わるまでは肌見離さずにしていたのじゃが······。
今代の神子の資格を持つ者は妾しかおらぬため、代わりはない。
そもそも試練の間の鍵を失くしてしまうなど、前代未聞じゃ······。
なんとしても見つけ出さなくては······!!
「どこで落としたか、心当たりはないの?」
二人に事情を話し、一緒に探してもらうことにした。テリアがそう言ってくるが心当たりはない。
最後に確認したのは、神将ナークヴァイティニアが攻めてくる少し前じゃ。
その後、色々な場所に赴いたため、どこで落としたかまるでわからぬ。
龍神様より授かった大切な鍵をなくすなど、神子失格じゃ······。
「もしかして、海に落としちゃったとかぁ?」
ミリィの言葉に妾の顔が青くなる。
魔人族から逃れるために海を渡り、ユウ達のいた大陸に着いた。
その過程で落としたのなら絶望的じゃ。
いや、じゃが鍵はちゃんと収納魔法で仕舞っていたはず。
何らかの別の魔法アイテムなどを使用して、集中が途切れん限り、落とすことなどないはずじゃ。
収納魔法は万能じゃが、魔力を限界まで消耗したり、何らかの理由で気を抜いてしまった場合などで、中身が飛び出ることが稀にある。
「じゃあ、あのナークヴァイティニアとかいう魔人と戦った場所じゃないかしら?」
テリアの言葉にハッとする。
確かに、あの激しい戦いの中では集中力が途切れて、収納魔法の中身を落とすことも、あり得るかもしれぬ。
妾はテリアとミリィと共に都を出て、神将と戦った場所までやってきた。
リュガントや他の戦士達など、普段護衛を務めている者達には内緒で、こっそりと抜け出す形となったが。
大切な鍵を失くしたなど、とても言えぬ。
神将との決戦を行なった地は、未だに戦いの爪痕が残され、荒れ果てておる。
まだ、この辺りは整備の手が回っておらぬからな。
今でも、よくあの圧倒的な強さを持っていたナークヴァイティニアに勝てたと思う。
「鍵って、手の平くらいの小さい物なんでしょ? この荒れた中から探すのは大変そうね······」
「ここにあるとは限らないですしねぇ」
テリアとミリィが言う。
確かにこの荒れた広大な土地から、あるかどうかもわからぬ小さな鍵を探すなど、大変な労力じゃ。
だが、その点は心配いらぬ。
「大丈夫じゃ、龍神様の鍵は特殊な魔力を発しておるからのう。ある程度近くにあれば、感じ取ることが出来る」
妾は目を閉じ、精神を集中させた。
テリアとミリィも同じように魔力の痕跡を探す。
この周囲にあるのなら、必ず感じ取れるはずじゃ。
ゆっくり足を進めながら、鍵の発する魔力を探す。
しばらく進むと、それらしき魔力を感じた。
やはりここにあったのか!?
妾は魔力を感じる源に手を伸ばした。
――――――――ムニョッ
ん? なんじゃ、この感触は?
弾力のある柔らかい触り心地で、少々温かみを感じる。鍵のような、硬いものではない。
「失礼、そこは私の大切な部分です。手を放してもらえますか?」
「え? ······ひゃあああっ!!?」
聞き覚えのない男の声で、妾は目を開けた。
目の前には見た事のない、妙な男が立っていた。
黒いマスクで素顔を隠し、身体はかろうじて下を隠しているだけの下着一枚の姿じゃ。
お、思わず叫んでしもうたわ······。
だ、誰じゃ? 一体何者じゃ!?
なんちゅう格好をしとるのじゃ!?
というか今、妾が触っていたモノはこの男の······。
わ、妾はまだ乙女じゃぞ!!?
そんな妾にな、なんてモノを触らせるのじゃ!!
「きゃっ······な、なに!? なんなの、この人!?」
「うわぁ······変態さんってやつですねぇ」
テリアとミリィも驚きの声をあげている。
本当に何者じゃ、この男?
そもそも、何故こんな所におるのじゃ?
············まさか魔人族の手の者か?