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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第二章 始まりの町アルネージュでの出来事
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34 男同士の裸の付き合い

 領主の息子のユーリと孤児院の子達を手合わせさせるということで第三地区に戻ってきた。



「話には聞いていたが本当に楽園のようだな」

「本当にすごいですー、最近まで邪気に冒されていたなんて信じられません」


 一緒に付いてきたグレンダさんとミウネーレが周囲を見渡して言う。

 ユーリは無言でその後ろを歩いていた。



 孤児院に着くとセーラとリンの姿があった。

 また神殿を抜け出してきたのかな?


「聖女様、リンさんもー」


 ミウネーレが二人に気付く。


「あら、こんにちはミウネーレさん、騎士隊長さんも、あとユーリ君でしたね」


 セーラもこちらに気付いて挨拶する。

 どうやらグレンダさん達とは顔見知りのようだ。


「ミウさん達がどうしてここに?」


 リンの問いにとりあえず簡単に状況を説明した。

 領主と顔合わせをしてなんだかんだでユーリがシノブに対抗心を燃やしているということを。

 セーラとリンは孤児院の子供達のレベルを知っているのでユーリを見て苦笑いをしていた。


「聖女様とリンさんはどうしてここに?」


 今度はミウネーレが二人に問う。


「わたし達は仕事が一段落したので息抜きですね。今、神殿には面倒な人が来ているので」

「面倒な人?」

「············アルケミア様です」


 リンが嫌そうな顔で言う。誰だそれ?


「私と同じく聖女候補の一人です。先日この町に来まして············」


 セーラが説明してくれた。

 そういえば聖女候補ってセーラを入れて三人いるんだっけ。でも何が面倒なんだ?


「アルケミア様は悪い方ではないんですけど聖女は選ばれし人がなるべきだとか色々うるさいんですよ。元は平民だったセーラ様よりも自分の方が聖女にふさわしいとか············そんな感じで何かとセーラ様に突っかかってくるんです」


 セーラは元平民だがそのアルケミアという人は初めから貴族だそうだ。

 それもかなり地位の高い貴族らしくそんな自分が聖女に選ばれるのは当然のことと思っているらしい。


 なんとなく想像がついた。

 確かに面倒くさそうな人だな。


「聖女アルケミア様の実力は確かだからな。片寄った考えの方ではあるが······」

「あたしも何度か話したことありますー。貴族の心得とか色々······」


 グレンダさんとミウネーレもそのアルケミアって人と面識があるみたいだな。


「そんなことよりも早くここの人達の実力を見せてほしいんですけど」


 ユーリは聖女のこととかはどうでもいいみたいだな。


「ミウ、ユーリは私が見ておくからセーラ様達と一緒にいていいぞ。久しぶりに会って色々話しもしたいだろう?」


 グレンダさんが言う。

 どうやらミウネーレはセーラ達とただの顔見知りではなく、それなりに親しいようだ。


「フム、ならばシノブ。私達の家の休憩室に案内してあげてくれ。あそこならゆっくり話ができるだろう」


 アイラ姉もそう言った。

 セーラ、リン、ミウネーレ、シノブの4人のガールズトークか。

 オレは入れそうにないな。



 そういうわけでアイラ姉以外の女性達はシノブの案内でオレ達の自宅に向かった。

 アイラ姉は孤児院の子供達を呼んでユーリと手合わせさせる。


「フム、できれば同じくらいの年の子がいいだろう。ルセ、前に出るのだ」

「はいっ!アイラ姉さん」


 子供達の一人のルセが前に出る。

 ルセはユーリやシノブと同じ13才のやんちゃな子だ。

 レベルは42。結果は言うまでもないだろう。


「ルセの勝ちだな」


 シノブの時よりもそこそこ善戦したがやはりレベル差が大きすぎたようだ。


「他の子とも試すか?」

「も、もちろんですっ」


 なかなか根性あるな。

 その後、一通りの子供達と手合わせして結果は全敗。

 中にはユーリよりも年下の子もいたのでショックは大きそうだ。


「私も手合わせしてもいいだろうか? 子供といえど手応えありそうだ」


 ユーリと子供達の手合わせを見ていたグレンダさんがそんなことを言い出した。


「ウム、私は構わないぞ。ならばこの中で一番強いのはリュウだな」


 ユーリは少し休憩させて今度はグレンダさんとリュウの手合わせだ。

 二人とも木の棒を構える。


 グレンダさんのレベルは65。リュウは51。

 ステータスはグレンダさんの方が上だ。

 そして騎士隊長の名は伊達ではなく、実戦経験もグレンダさんが勝っていた。


「そこまで、グレンダ殿の勝ちだ」

「ありがとうございますっ」


 手合わせを終えたリュウが頭を下げる。

 アイラ姉の教育の賜物だな。

 グレンダさんは他の子とも手合わせをした。


「私の部下達とも引けをとらない子達だな。正直驚いたぞ」


 さすがのグレンダさんも少し息があがっている。

 お、よく見たらレベルが66に上がってる。

 ユーリの方も17になっていた。

 今の手合わせでも経験値は得られるんだな。


 グレンダさんは満足そうな表情だがユーリの方はかなりショックを受けていた。

 天才と言われていた自分がここの子達に一度も勝てなかったんだからな。

 今までの自信が粉々になっただろう。


 まずは徹底的に心を折り身の程を思い知らせる。

 アイラ姉の教育の第一段階だな。

 かなり乱暴なやり方だとは思うが······。


「二人とも汗を流してくるといい。レイ、グレンダ殿とユーリを風呂に案内してあげてくれ」

「ああ、わかったよアイラ姉」


 アイラ姉に言われてオレは二人を風呂に案内する。


「ほう、風呂まであるのか。それは是非入りたいな」

「············」


 グレンダさんは乗り気だがユーリは無言だ。

 少しやり過ぎたんじゃないかアイラ姉?


 風呂のある建物に案内し脱衣室で服を脱ぎ中へ入る。二人とも風呂場の広さに驚いていた。

 領主邸にも風呂はあるらしいがせいぜい個人用だとか。ユーリも少しは元気出たかな。


「こんなに広い風呂は初めて見たな。お湯も出し放題とはなんとも贅沢だ」

「じ、常識外れです······」


 グレンダさんは歴戦の騎士らしい引き締まった身体だ。鍛え上げられた筋肉だな。

 男でも惚れ惚れするかもしれない。

 ············オレにそんな趣味はないけど。


 ユーリは年相応の身体付きだ。

 年上のお姉さんとかにモテそうな感じかな。


 二人にシャワーの使い方、そして石鹸、シャンプー、リンスの使い方を教える。

 貴族でも身体を洗うのは石鹸一つで、シャンプーなど髪専用のものはないらしい。

 そして汗を流した後は広々とした湯船へ浸かる。


「おお······これは最高だな」

「······気持ちいいです」


 二人ともリラックスできたようだ。

 うん、やっぱり風呂はいいな。


「レイ、と呼べばいいかな? キミとアイラ殿とシノブは兄妹なのか?」

「いえグレンダさん、オレとアイラ姉とシノブは従姉弟です。血は繋がっていませんよ」


 まあ姉弟同然のような関係だが。


「キミはアイラ殿をどう思っているんだ?」

「どう······と言われても頼りになる姉ってところですかね」

「付き合いは長いのだろ、恋心とかはないのか?」

「う~ん······オレは姉のように思ってましたから考えたことないですね」


 アイラ姉はオレのことをどう思ってるのかな?

 結構激しいスキンシップとかがたまにあるけどあくまでも手のかかる弟ってところかな?

 アイラ姉は美人だし女性としては魅力的だと思うけど············オレとアイラ姉が恋仲になる。

 想像できないな。


「グレンダさんは恋人はいないんですか?」

「私は剣一筋だったからな。恥ずかしながらまだ独り身でそういう話もない」


 それは意外だな。

 顔はかなりのイケメンだし実力も地位もある。

 女性が放っとくとは思えないが。


「あなた達は何者ですか? 孤児院の人達を鍛えたのはあなた達ですよね? あんな強さ普通じゃないです。兄さんとまともに打ち合えるなんて」


 何者って言われると答えづらいな。

 セーラとリンには話したけどまだグレンダさんやユーリに話す程付き合いが長いわけじゃないしな。


「オレ達のことはともかく、ここの子達を鍛えたのはアイラ姉だよ。頼めばユーリも鍛えてくれると思うよ。······かなり厳しいだろうけど」

「それは······お願いがしたいですね」


 ユーリは最初の生意気な感じがなくなっているな。

 あれだけ心を折られればそうなるかな?


「それなら私もお願いしたいな。どんな特訓なのかも気になる。あんな幼い子達をあそこまで強くするなんてな」

「まあその辺はアイラ姉に聞いてみますよ」


 そんなこんなで雑談を交わした。

 そろそろ温まってきたし上がるかな。


「長湯は危険ですから二人ともそろそろ上がりましょう」


 オレは身体を軽く拭き脱衣室へ向かう。

 ちょっと気を抜いていたせいか何も考えずに扉を開けた。

 本当にオレは学習しないと自分に呆れた。

 以前もそれでリンと鉢合わせしてしまったのに······。


―――――――ガラッ


「「えっ?」」


 脱衣室に人がいたのだ。

 オレとその人物が同時に声を出した。



 ちなみにその人物とはミウネーレだった。










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