270 メリッサ視点
(メリッサside)
今日はとっても楽しかった!
スミレとマティアとお腹いっぱい食べて、アチシは大満足!
でもシノブって子はあんまり食べなかったけど、少食なのかな?
ちゃんと食べないと大きくなれないだろうし、少し心配かも。
レイっていうおにーさんもあんまり食べなかったし、人族は少食なのかな?
「ずいぶん、ご機嫌じゃねえか。俺がどれだけお前を捜し回ったと思ってんだ」
「うん! もうお腹いっぱいで幸せいっぱい! また一緒に食べ回りたいな〜」
アチシがそう言ったら、バル兄は深いため息を吐いた。結局、バル兄は何も食べなかったし、お腹すいてるのかな?
「それでバル兄、用事は済んだの?」
「おう、お前を捜しながら情報収集もしたからな。ナークの落とし物は龍王の城にあるみたいだから、さっさと回収しに行くぞ」
バル兄が面倒くさそうに言った。
ま、バル兄は戦いは大好きだけど、こういう雑用みたいなのは嫌いだからね。
トゥーレの頼みじゃなけりゃ、絶対引き受けなかったと思うよ。
バル兄に引っ張られながら、龍王のいるお城の前まで来た。
うわ〜、立派なお城。
ここにいる龍王って強いのかな?
戦ってみたいな〜。
「さて、どうするかな······。神槍は城の宝物庫に封印されてるらしいが、仕方ねえ、ささっと忍び込んで回収す······」
「それじゃあ、正面突破だね! 早く行こ行こ!」
「あ、おいっ、バカ······」
「どーーーーんっ!!」
アチシは愛用の巨大ハンマーを取り出して、お城の門に思いっ切り叩きつけた。
結構重い門だったけど、派手に吹っ飛んだ。
その音を聞きつけて、龍人族の兵士がいっぱい来た! 龍人族って強いんだよね?
あのナークですらやられたみたいだし、戦ってもいいかな?
「はあ······もういいや。メリッサ、責任持ってアイツらの相手しておけよ」
バル兄が戦っていいって許可くれた。
やった〜! 久しぶりに思いっ切り戦える!
「言っとくが、なるべく殺すなよ? 俺達は戦争しに来たわけじゃないんだからな」
「わかってるよ〜。バル兄じゃないんだから、ちゃんと手加減出来るって!」
「本当かよ······」
アチシは戦いは大好きだけど、殺しは嫌いだよ。
むえきなせっしょーは駄目だって言われているからね。バル兄が戦ったら、手加減してもこの人達を殺しちゃうかもしれないしね。
龍人族の兵士達が武器を突きつけてきた。
アチシ達を見て戸惑ってるみたい。
「この気配、魔人族か!?」
「いや、男はともかく少女の方は······」
「いっぱい楽しませてね、龍人族の兵士さん!」
アチシは龍人族の兵士達に突っ込んでいった。
兵士達がアチシに気を取られているスキに、バル兄が奥の方に向かった。
う〜ん、龍人族の兵士達は、思ってたより手応えがないかな。
けど総隊長とかいう人は結構強い。
アチシでも力負けしそうなくらい。
けど、怪我をしてるみたいで、たまに動きが悪くなってる。
万全だったらもっと楽しそうなのにな〜。
そう思ってたら、総隊長の人は何かの薬を取り出して飲んだ。
薬を飲んだら身体の傷が消えて、さっきまでより動きが良くなっていた。
今飲んだのは傷を治すポーションかな?
でも、なんで今まで飲まなかったんだろ?
なんでもいいや!
それよりも、この人との戦いを楽しもう!
やっぱり戦いはこうじゃないとね!
血湧き肉の躍り食いって言うんだっけ?
なんか違う気がするけど、ま、いいか。
ちなみに、アチシが戦いを好きになったのはバル兄の影響かな。
しばらく総隊長の人と打ち合っていると、援軍がいっぱい来た。
けど、城の兵士ってわけじゃなさそう。
女の人ばっかりだし、龍人族じゃない種族も混ざってる。
「妾は龍神の神子シャルルアじゃ! 魔人族よ、お主の目的はなんじゃ!」
「アチシはメリッサ! アチシはバル兄の付き添いだからよくわかんないけどナークの落とし物を回収しに来たとか言ってたよ?」
神子ってなんだっけ?
バル兄から聞いた覚えがあるけど忘れちゃった。
まあいいや。
それよりも、この人達すごく強そう。
これならアチシも本気でやれるよね!
······と思ったら、この人達強すぎ!
いくらでも来ていいなんてウソウソ!
やっぱり一人ずつにして〜!
アチシはスキルの魔力吸収で反撃したら、それまで防がれた!?
も、もしかしてアチシ、結構ピンチ?
「み、みんな強すぎじゃない? ナークがやられるのも納得だね。一対一なら負けないけど、この人数はアチシじゃヤバいかな〜? バル兄なら大喜びしそうだけど······」
お姉さん達に囲まれちゃった······。
そんな怖い顔するのやめようよ?
「大人しく降伏するならば、命までは取りはせぬぞ」
総隊長の人が武器を突きつけてきた。
ど、どうしよう〜?
やっぱりお城の門を壊しちゃったのは、まずかったかな?
素直にごめんなさい、した方がいい?
そう思ってたら、バル兄が戻ってきた!
ナークの落とし物は見つかったみたい。
お姉さん達は一斉にバル兄の方に振り返っていた。
「ずいぶん楽しそうじゃねえか、メリッサ。俺も混ぜろよ」
バル兄が新しいオモチャを見つけたような、とびきりの笑みをうかべてる。
見ただけでお姉さん達の強さを感じ取ったみたい。
そしてお姉さん達も、バル兄の強さを感じ取ったみたい。皆、表情が引きつってる。
お姉さん達は確かに強いけど、バル兄の相手が務まるかな?
「いいぜ、久々に楽しめそうだ。メリッサ、コイツを持って下がってろ! 失くすなよ」
バル兄がナークの落とし物を投げ渡してきた。
神槍とかいう武器だっけ?
何かに使うとか言ってたような······。
まあいいや、ちゃんと収納魔法で仕舞っておこう。
それよりも、久しぶりにバル兄の戦いが見れる。
でも······お姉さん達、死ななきゃいいけど。