268 襲撃
(セーラside)
龍人族の国を襲った魔人族達は撃退され、ユウ君とエレナさんは、すでに神託を達成していたようです。
それにしても、魔王以上の力を持つ神将ですか······。
魔王を上回る者が存在する話は聞いたことが、ありますが本当だったとは······。
魔王の影に隠れて、表舞台にはまず出て来ないような存在が何故、今回はこのようなことを?
龍人族の神子であるシャルルアさんの話では、神将は魔人族の神ディヴェードを現世に降臨させることを目論んでいたようです。
ユウさん達の活躍によって、その目論みは阻止されましたが、もし実現していたら、どうなっていたことか。
今後のことについて龍人族の王様と話したいのですが、龍王様は魔人族との戦いで消耗してしまっているため、療養中のようです。
龍人族と人族は、今まであまり深い交流をしていませんでしたが、今後のことを考えると、協力関係を築いた方がいいと思います。
エンジェさんがレイさん達から特級ポーションなどを譲ってもらい、龍王様を叩き起こそうとか、何やら過激なことを言っています。
エンジェさんは龍王様と面識があるそうですけど、そんなに気安い関係なのでしょうか?
――――――――――!!!!!
シャルルアさん達と今後の話しをしていた時に突然、大きな地響きが起きました。
地震?
この近くには巨大な山があるので、地震が起きても不思議ではないかもしれません。
ですが、今の地響きは地震というよりも······。
部屋の外では、龍人族の戦士達が慌ただしくしている音や声が聞こえます。
やはり何やら非常事態のようです。
「一体何事じゃ!?」
シャルルアさんが部屋を出て、龍人族の方達に問います。私達も外に出ました。
「侵入者です! 魔人族と思われる二人組が正面門を破り、侵入してきました!」
戦士の言葉を聞き、シャルルアさんが驚きの表情をうかべました。
魔人族······撃退したと言っていた魔人族の残党でしょうか?
「二人組じゃと? たった二人で攻めてきたというのか?」
「そのようですが、恐ろしく強いらしく······」
龍人族は戦闘能力に優れた種族で、一般兵士でもレベル60を超えています。
中にはレベル100を超える者も何人かいましたし、総隊長のリュガントさんはレベル400を超えていました。
そんな龍人族の戦士が、恐ろしく強いという相手なのですか?
「セーラ殿、すまぬ。話は後じゃ、妾は戦士達の援護に向かう!」
「わたしも行くわよ、シャルルア!」
「もちろんミリィも行きますよぉ!」
そう言ってシャルルアさんが出ていき、テリアさんとミリィさんがその後を追いました。
「す、すみません、セーラさん! 私も行ってきます」
「あっ、お待ちください、エレナさん! 相手は得体が知れません、危険ですよ!?」
リンが止めようとしましたが、エレナさんもシャルルアさん達を追いかけて行ってしまいました。
「リン、私達も行きましょう。このまま放っておくわけにはいきません」
「セーラ様······わかりました。わたしが全力でお守りします!」
「やれやれ、ならばワシもお供するかの」
私の言葉にリンが頷き、エンジェさんもそれに追従しました。
しかし、たった二人で攻めて来るとは、魔人族の目的はなんでしょうか?
神将を討ち倒した勇者、ユウ君の始末?
それとも消耗しているという、龍王様を討つつもりでしょうか?
目的がはっきりしませんが、放っておくわけにはいきません。
城の正面ホールでは激しい戦闘音が響いてきました。何人もの龍人族の戦士達が倒れ伏しています。
負傷していますが、息はありますね。
エレナさんが負傷者を癒やしていたので、私も手伝います。
「にししっ! おっちゃん、なかなか強いね!」
「女子供といえど、侵入者は容赦はせぬぞっ!」
総隊長のリュガントさんが、小さな女の子と激しく打ち合っています。
リュガントさんはかなりの業物と思われる剛槍、女の子は自身の身体よりも大きなハンマーのような武器です。
あの女の子が攻めてきた魔人族ですか?
見た目はシノブさんやスミレさんくらいの年齢に思え、人族にも見えます。
それに二人組という話でしたが、もう一人の姿が見えません。
いえ、今は目の前の女の子からなんとかするべきでしょう。
小さな女の子に見えても、総隊長のリュガントさんと互角に打ち合っています。
鑑定魔法を使ったら妨害魔法によって弾かれました。私は妨害魔法を遮断して、もう一度鑑定を実行します。
[メリッサ] レベル459
〈体力〉506900/512000
〈力〉41000〈敏捷〉49500〈魔力〉◆●◇◆◇
〈スキル〉
(魔神の加護〈小〉)(身体強化〈極〉)
(◆●◇●●◆)(擬人化)(◇●◆●◆◇)
(防御貫通)(●◆◇◆◇●)
いくつか読めない部分がありますが、鑑定に成功しました。
かなり高いステータスを持っています。
スキルに(魔神の加護)を持っているので、魔人族に間違いなさそうですね。
魔人族の女の子は無邪気な笑顔をうかべながら、私達に目を向けました。




