267 それぞれの交流
バルフィーユとメリッサと別れてから、オレ達は龍人族の町の散策を再開した。
スミレとマティアは、屋台の食べ物を大量に食べていたので満足気だ。
シノブは少し、お腹が苦しそうだけど。
ついさっきリンから念話が来て、ユウ達の修羅場は、とりあえずは収まったらしい。
回復したとはいえ、ユウとジャネンは消耗が激しく、今は仲良く眠っているとのことだ。
龍人族の町の散策に、城にいたマティアという少女も連れていると報告しておいた。
やはりというか、マティアはユウの仲間らしい。
テリア達がマティアの様子を見に行ったら姿がなく、捜し回っていたようだ。
適当に町を回ったら戻ると言って、念話を切った。
さて、散策を再開したといっても、町は復旧作業の真っ最中で、主な店は営業していないみたいだな。
ドワーフが経営する武具店を見つけたので覗いてみた。龍人族の国にも、ドワーフ工房があるみたいだ。
「格好良い武具がいっぱいでござるな!」
並んでいる武具を見てシノブが言う。
龍人族の国で売っているだけあって、竜の牙や鱗など、特殊な素材で作られた武具が多い。
見た目も派手で格好良く、厨ニ心をくすぐる感じだ。
シノブは少し興奮気味に武具を見ているし、スミレとマティアも無表情ながら真剣に眺めている。
ただ、さすがにドルフさんやガルナンさんに作ってもらった魔剣や、オレの持つ聖剣を超えるような物はない。
竜の素材でも、聖剣を超えることはできないみたいだ。
「マティア殿はどんな武器を使うのでござるか?」
「······アタシは、じぶんのからだをぶきにかえる」
シノブの問いにマティアがそう答えた。
自分の身体を武器に変える?
どういう意味だろうか。
「モード、オン············ブレード」
マティアの右腕が光に包まれ、形が変化していく。光が収まると、腕が鋭い刀身のように形を変えていた。
「おおっ!? 格好良いでござるな」
「ボクもやってみたい······」
シノブとスミレが称賛の声をあげる。
マティアの右腕そのものが剣に変わっている。
何らかのスキルの力だろうか?
ユウ達の(物質具現化)とも違う感じだが。
その他にもマティアは、自身の身体を無数のコウモリのような姿に変えたりと、色々見せてくれた。
身体の形を自由自在に変えることができるらしい。
本当に何者だろうか、この子。
ユウ達と、どこでどういう出会いをしたのか気になるんだが。
シノブとスミレは、そんなマティアを興奮しながら見ていた。
(リンside)
さっきまで大騒ぎだった場も、ようやく収まりました。ユウさんとジャネンさんは体力の消耗が激しく、回復に専念するために、今は眠っています。
それにしてもユウさん、エレナさん達に散々詰め寄られていたのに、平然としていました。
幼い見た目とは裏腹に、精神が図太いようですね。
ユウさんとジャネンさんが眠りにつくと、エレナさん達は別の部屋にいる仲間の様子を見に行っていました。
しかし、その部屋に仲間の姿はなく、慌てて捜していました。
レイさんに念話を送ると、ユウさん達の仲間はレイさん達が連れ出していたようです。
そのことを言うと、みなさんホッとしていました。
「エレナさん、女神様の神託を優先したのはわかりますが、神殿関係者や、ご両親が心配していましたよ?」
セーラ様がエレナさんに苦言を呈しています。
書き置き一つ残しただけで別大陸に向かうなんて、行動力がありすぎです。
エレナさんも悪かったと思っているようで、素直に謝っています。
「エレナを責めないでくれぬか? ユウ達は妾の頼みで、この地に来てくれたのじゃ」
シャルルアさんがエレナさんを庇います。
この方は龍人族の神を崇める神子という立場で、実質、龍人族の聖女様というべき方です。
大体の事情を聞き、エレナさん達がこの大陸まで来た経緯がわかりました。
魔王をも上回る神将が率いる魔人族の襲来を受けて、ユウさん達が龍人族に手を貸したと。
最終的には神将を討ち倒し、生き残った魔人族は撤退して、龍人族の国は救われたとのことです。
魔王を上回る神将という存在にも驚きですが、その神将を討ち倒してしまうとは······。
わたし達が知らない所で、とんでもない激戦が繰り広げられていたようです。
「龍人族の王である、龍王様に会えませんか? ユウ君達について、今後のことを話し合いたいのですが······」
「龍王様は神将との戦いで消耗していて、謁見はまだ厳しい状態じゃが······」
セーラ様とシャルルアさんが色々と話し合っています。魔王を上回る神将を倒したユウさんを、魔人族達が放っておくとは思えません。
龍人族の国にこのまま匿ってもらうか、王都の本殿で守りを固めるか。
すぐには結論は出ないでしょうけど。
「ならば我がマスター達に頼み、特級ポーションと万能薬でも与えたらどうじゃ? そこの冥界の神子のような呪いの類いでなければ、効果があるじゃろう」
エンジェさんがそんな提案をしました。
確かにジャネンさんのような特殊な呪いでもない、疲労や消耗なら充分効果を発揮するでしょう。
「いや、確かに効果はあるじゃろうが······特級ポーションなど、そう簡単に手に入らぬじゃろう? 持っていたとしても簡単に譲ってくれるとは······」
シャルルアさんが戸惑いの表情で言います。
テリアさん達も似たような表情ですね。
まあ普通はそういう反応ですよね。
特級クラスのポーションや万能薬となると、希少で滅多に手に入りません。
上級でも珍しいくらいですから。
レイさんとシノブさんなら、いくらでも作り出せるので、わたしもその辺の感覚がおかしくなっています。
「マスター達なら問題あるまい。ワシからも言っておいてやろうぞ」
エンジェさんが自信満々に言いました。
わたしもレイさん達なら事情を話せば快く譲ってくれると思います。
もう一度、念話を繋げてレイさん達を呼び戻した方がいいでしょうか?