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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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266 バルフィーユとメリッサ

 龍人族の町の屋台で食べ歩きをしていたら、迷子の女の子メリッサが加わって、一緒に行動することになった。

 人見知りしないシノブ達は、すぐにメリッサと仲良くなり、楽しく食べ歩きながらお喋りをしていた。



 そこにメリッサの保護者である、お兄さんが現れた。

 メリッサを捜して、ずいぶん歩き回ったようで、かなりお怒りの様子だ。


「悪いな、うちのバカが世話になってたみたいで」


 苦笑いをうかべながら、お兄さんがそう言ってきた。柄の悪そうな顔立ちだが、悪い人じゃなさそうだ。


「俺はバルフィーユ。本当助かったぜ、あのメリッサ(ばか)はすぐに騒動を起こしやがるからな」

「オレはレイ。別に気にしなくていいよ。オレはあの子に食べ物を奢っただけだし」


 お兄さんが名乗ったので、オレも名乗り返した。

 ちなみに当人のメリッサは、スミレ達と一緒に再び屋台の食べ物を注文している。

 スミレ、マティア、メリッサはガツガツ食べまくっているが、シノブはもうお腹いっぱいの様子だ。


 オレとバルフィーユは、その様子を遠巻きに見ている。



「しっかし珍しいな。お前さんら、龍人族じゃなくて人族だろ? この町は人族にとって、住みづらい環境だと聞いていたが」


 住みづらいというのは、やはりこの気候のことだろう。冷気を放つ魔道具があるが、かなりの高級品だった。

 冷房無しで、ここに住むのは確かにキツイだろう。


「オレ達は観光で来ただけだから。メリッサから聞いたけど、バルフィーユ達も同じなんだろ?」

「まあな」


 しかし、二人で観光に来たらしいが兄妹だろうか?

 言ってはなんだが、あまり似ていない気がする。

 二人の種族はなんだろうか?

 人族にも見えるが、この言い方だと違うのだろう。


「観光はついでなんだがな。俺の知り合いが、この辺りで落とし物をしたらしくてな。それを回収しに来たんだが······それを探してる内に、どっかのメリッサ(ばか)が迷子になってな」

「落とし物? なんなら探すの手伝おうか?」

「いや、それには及ばないぜ。もうどこにあるかはわかってるからな」


 なんだろう、大事な物なのかな?

 まあ、見つかってるなら余計なことをする必要はないか。


「それよりもレイ、お前かなり強いな? 俺でも強さの底が見えないぜ」


 バルフィーユが笑みをうかべながら言う。

 ひょっとしてオレに鑑定魔法でも使ったのかな?


「そうでもないよ。オレはあんまり戦うのは好きじゃないし。バルフィーユの方こそ、相当強いんじゃないか?」


 嘘は言っていない。

 オレは戦うより、のんびりしている方が好きだし。


 バルフィーユは長身で引き締まった身体付きで、見た目だけでも相当強そうだ。

 一体何者だろうか?

 オレが鑑定出来なかった相手なんて、真の力を解放した冥王くらいだったが······。


 バルフィーユは冥王級の力の持ち主なのか?

 それとも(神眼)の効果すら弾く、強力な妨害魔法を使っているだけだろうか?

 まあ冥王級の強さを持つ奴が、そうそういるわけないよな。



「そうなのかよ? 強そうなのに変わってやがるな。力と力のぶつかり合い、命を賭けた死闘······俺はそういうのに心踊るんだが」


 バルフィーユは戦闘狂なのかな?

 獣人とかが、そういうタイプが多いと聞いた覚えがあるけど。



 その後も軽い雑談を交わしたけど、怖そうな見た目とは裏腹に、気さくで話しやすい人だった。

 好奇心旺盛なメリッサに散々振り回されるなど、愚痴のようなことも吐いていた。


「お互いに子供(ガキ)のお()りに苦労してそうだな······」

「いや、オレはそこまで苦労は······」


 シノブは口調はともかく、礼儀正しく、そんなに無茶はしない。

 スミレもアイラ姉の教育で常識を身に付けているし。マティアは今日初めて会ったので、詳しく知らないが。



「しかし、あのマティアとかいう女······昔どっかで見た覚えがあるような······。よく思い出せねえな」


 バルフィーユはボソッと、よくわからないことをつぶやいていた。








「おい、メリッサ! いつまで食ってやがる、そろそろ行くぞ!」


 いつまでも食べ続けているメリッサ達に、痺れを切らし大声で叫ぶ。


「わかったよ、バル兄。スミレ、シノブ、マティア、それにレイおにーさん。どうもありがとねっ! 今日はとっても楽しかったよ!」


 スミレもマティアもメリッサも、かなりの量を食べていたからな。

 さすがに満足したようだ。

 シノブもよく頑張って付き合ったものだ。


「このメリッサ(ばか)が迷惑して悪かったな。こいつは立て替えてもらったメシの代金だ」


 バルフィーユがそう言って、金貨を数枚渡してきた。メリッサどころか、スミレとマティアが食べた分と合わせても多すぎるくらいだが。


「ちょっと多すぎるけど?」

「とっときな。メリッサ(ばか)の迷惑料代わりも入ってる」


 そういうことなら、素直に受け取っておくか。

 スミレ達と楽しそうに食べ歩いてただけで、迷惑かけられたとは思ってないけど。



 バルフィーユはメリッサを引きずるように、連れて去っていった。

 見方によっては人攫いに見えるぞ。

 目立つ二人だったし、またどこかで会いそうな気がするな。


 



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