261 勇者の現状
龍人族の戦士達の総隊長リュガントさんの案内で、オレ達はユウのいる客室までやってきた。
龍王の城には来客用の部屋がいくつもあるのだが、ユウのいる部屋は特に豪華だ。
ここは魔人族との戦闘の影響はないみたいだ。
国を救った英雄と言われているだけあって、かなりのVIP待遇みたいだな。
扉をノックして、聖女セーラを先頭に部屋に入る。
中も豪華な造りだな。
ベッドの上にユウが寝かされている。
そのユウの周りに、二人の女の子の姿があった。
聖女エレナと、確かミリィという名の悪魔っ娘のコスプレ少女だ。
「えっ!? 聖女セーラ様にリンさん、それにレイさんまで」
エレナがこちらを見て、驚きの表情で言う。
エレナは目を覚まさないというユウに、絶えず治癒魔法をかけ続けていたみたいだ。
ミリィはそんなエレナに魔力を分け与えていたようだな。
「なんで、この人達がここにいるんですかぁ!?」
ミリィもエレナと同じ表情で言う。
なんか聖女のセーラ達よりも、オレを見て驚いているみたいだが。
テリアとシャルルアが二人に事情を話す。
「ユウ君の容態を見せてもらえますか?」
エレナとミリィが素直にその言葉を聞き、ユウの隣を開ける。
セーラがユウの額に手を置く。
事前に聞いていたように、ユウは呪いでうなされていたりはせず、ただ眠っているだけに見える。
[ユウ] レベル962
〈体力〉0/286200
〈力〉148800〈敏捷〉152250〈魔力〉180900
〈スキル〉
(物質具現化)(詠唱破棄)(限界突破)
(魔力回復速度上昇〈極〉)(身体強化〈極〉)
(聖なる守り)(勇者の資格〈5/7〉)
(龍王の加護〈大〉)
ユウのステータスを鑑定してみた。
テリア以上に大幅にレベルアップしている。
オレよりもレベルが上だ。
神将とかいう奴にトドメを刺したのがユウらしいから、一番多くの経験値を得た結果のようだ。
しかし、問題なのはユウの体力が0になっている。
ゲームなら戦闘不能状態、某国民的RPGなら死亡状態だ。
この世界のステータスでは体力が0になっても死ぬわけじゃない。
意識を失い、いわゆる気絶状態になる。
そのまましばらく休むか、治癒魔法、もしくは体力回復のポーションでも使えば回復するはずだが。
まったく回復しないというのは異常事態だろうな。
セーラがユウに「聖」属性の治癒魔法を施すが、効果があるようには見えない。
「これは······身体には異常はないが、魂が今にも消えそうなくらいに消耗しておるのう。このままでは存在そのものが消滅してしまうぞ」
エンジェが横から容態を確認する。
女神の神託にあった勇者の卵の魂の消滅の危機······。
やはりユウのことで間違いなさそうだ。
「そんなっ!? なんとかユウを助けられないんですか!? 私の「聖」魔法でも、まったく効果がないんです······」
「ユウ様が死んじゃうなんて、絶対イヤですよぉ!」
エンジェの言葉を聞き、エレナとミリィが叫ぶように訴える。
テリアとシャルルアも同じように言った。
ユウはずいぶんと慕われているみたいだな。
「······どいてくれ。某も容態を見る」
まだツラそうな様子のジャネンが前に出て来た。
ユウの身体に触れて、容態を確認している。
「やはり神剣は負担が大き過ぎたか······。魂の消耗があまりに大きい。間に合えばいいが······」
そう言うとジャネンは液体の入った透明の瓶を取り出した。
何かの薬のようだが。
〈ソウル·ポーション〈アイテムランク7〉〉
魂を癒し、肉体と精神を安らげる効果がある。
初めて見るポーションだ。
魂を癒やす薬か······そんなものがあるとは。
特級ポーションはアイテムランク5だったが、これはアイテムランク7だ。
相当に貴重な薬だということか······。
ジャネンは躊躇することなくソウル·ポーションをユウに振りかけた。
1本だけじゃなく、2本、3本と取り出し、惜しみ無くユウに使う。
それにしてもジャネンは何故、ユウのためにここまでしてくれるのだろうか?
種族が違うし、仲間の冥王はユウを始末しようとか言っていた。
ここまで必死にユウを助ける理由がない気がするのだが。
ソウル·ポーションがジワジワとユウの全身を駆け巡っているようだ。
これでユウは回復するだろうか?