260 龍王の城
龍人族の都と呼ばれる町までたどり着いた。
ここは龍人族の王である龍王の住む、この大陸最大の都市らしい。
龍王か······取り引きしたら世界の半分くれるのかなと、こんな時に、そんなくだらないことを考えてしまった。
龍王というだけあって、その力は魔王にも匹敵するらしい。
魔王に冥王に龍王······もしかして、獣王なんていうのもいるのかな?
魔王以外は世界の支配だとか、侵略なんかには興味を持たないらしいけど、この世界は恐ろしい存在が多すぎないか?
龍人族の都は、石造りの建物が多いみたいだ。
魔人族との戦いで崩れたようで、復旧作業の最中といった感じだな。
作業をしている人達は、シャルルアのように人族と一見変わらないが、角が生えていたり皮膚に鱗のような跡があったりと、人族にはない特徴がある。
戦争後の悲壮感などはなく、なかなかに賑わっている印象だ。
オレ達は龍人族の兵士の案内で進んでいく。
町の住人はシャルルアを見ると、頭を下げたりしていた。神子という立場は聖女同様に、かなり偉いみたいだな。
町の中心地には一際立派な城があった。
そこが龍王の住む城のようだ。
王都の王城も立派だったが、こちらも負けていないくらい、見る者を圧倒する外観だ。
城の入口の門番がシャルルアに敬礼して扉を開けた。オレ達のことも軽く説明しただけで、快く通してくれた。
龍人族はあまり人族とは交流がないと聞いていたけど、思ったよりも友好的だ。
ユウ達がこの国に協力したというのが効いているのかな?
「シャルルア様、テリア殿! 突然飛び出されて心配しましたぞ! 冥界の神子殿も、ご無事であられたか」
城に入ってすぐに中に居た兵士達に、シャルルア達が声をかけられた。
その中でも、総隊長と呼ばれる龍人族の兵士が号泣しそうな勢いで叫んでいる。
シャルルアとテリアは、若干引いたような苦笑いをうかべている。
[リュガント] レベル435
〈体力〉19300/257000
〈力〉45500〈敏捷〉36900〈魔力〉22000
〈スキル〉
(龍王の加護〈中〉)(竜化)(竜闘気)
(身体強化〈極〉)(龍鱗)(硬質化)
(龍槍術〈レベル9〉)
テリアとシャルルアに比べたらレベル不足な気がするが、総隊長と呼ばれるだけあってかなりの強さだ。
他の龍人族の兵士は平均レベル60〜90くらいなので、飛び抜けたステータスだ。
ただ体力の最大値がかなり減少しているし、深い傷も負っているようだが。
テリア達は神将との戦いで大幅にレベルアップしたために、これだけのレベル差があるが、本来ならば龍王を除けば龍人族の国最強の戦士だったらしい。
戦いの最中でリタイアしたために、神将を倒した経験値は得られなかったようだ。
つまりテリア達は500〜600くらい一気にレベルアップしたってことかな?
どれだけ強敵だったんだよ、その神将って······。
「そちらの方々は新たな客人ですかな?」
総隊長さんがこちらに目を向けてきた。
オレ達はそれぞれ挨拶をする。
「リヴィア教所属聖女候補のセーラです。この度は突然の来訪ですみません」
「これは聖女殿でしたか。私は戦士長を務めるリュガントと申します」
セーラと総隊長リュガントさんが頭を下げ合う。
こちらの事情を話し、勇者の下に案内してほしいとセーラが頼む。
「こちらも出来得る限りの治療を施していますが、勇者殿の意識は戻らず······。我が国の英雄に対して、情けない限りで申し訳ない······!」
話しに聞いていた通り、ユウの意識が戻る様子はないようだ。
セーラやオレの「聖」属性の治癒魔法や、特級ポーションや万能薬でなんとかなればいいのだが。
リュガントさんが引き継ぎ、オレ達をユウの下に案内してくれるそうだ。
ユウは龍王の城の特別な客室で治療を受けているらしい。
城の中も激しい戦いがあったようで、あちこち修復に大忙しになっている。
リュガントさんから色々と話しを聞けた。
龍王も神将との戦いによって消耗していて、療養中だそうだ。
龍王という響きが格好良いし、一目だけでも見てみたかったが、しょうがないか。
「くかかっ、お主が今は総隊長とはのう。以前見た時は、まだ新人のひよっこじゃったが、時の流れは早いのう」
「む? お嬢さんは一体······ぬぬっ!? ヌシは······いや、貴方はエンシェントジェリー殿か!?」
リュガントさんがエンジェを見て、驚愕の表情をうかべている。
どうやらエンジェとリュガントさんは面識があるようだ。龍王とも面識があると言っていたな。
幻獣人族といい、龍人族といい、世界中を旅したことがあると言っていただけに、エンジェは顔が広いな。
ゲンライさんのように、エンジェを恐れているという感じじゃなさそうだが。
むしろフウゲツさんみたいに敬うような態度になっている。
もしかしてエンジェってメチャクチャ偉い?
詳しい話を聞いてみたいが、今は後回しだ。
オレ達はユウが治療を受けているという客室まで、たどり着いた。