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突然異世界転移生活 ~たまに変態が出没する異世界冒険記~  作者: キューブック
第五章 幻獣人族の里 神樹の迷宮編
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256 ジャネンと冥王

「確か勇者って神将との戦いで死にかけてるんだヨネ? 今の内に始末しちゃった方がいいんじゃないカナ?」


 自称冥王が不穏な発言をした。

 この発言にテリア達が警戒の色を示した。


「始末するって······」

「ユウは妾達の恩人じゃ、おいそれと手出しはさせぬぞ。龍王様も黙ってはおらんはずじゃ」


 テリアとシャルルアが、いつでも攻撃できるように臨戦態勢に入った。

 自称冥王との力の差はわかっているみたいだが、引く気はないようだ。


 セーラとリンも、いつでも動ける態勢を取っている。


 オレも最悪の事態に備えて構える。

 今のオレのステータスならば、自称冥王とまともに戦うことも、おそらく可能だろう。


 けど、コイツを倒せたとしても、本体ではなく仮の肉体にすぎない。

 下手に怒らせて、本気で敵対することになっても面倒だ。




「僕の力を感じ取れないわけじゃなさそうダネ? その上で死にかけの勇者のために、僕と戦う気なのカナ」


 自称冥王が魔力を高めている。

 学園地下迷宮の冥王もやってきたような威圧か。

 オレは肌がピリピリする程度だが、他のみんなは緊張した表情だ。


「やめろ、テュサメレーラ。心配せずとも今の勇者に冥界と敵対するような意思はないはずだ。······それに神将を倒した勇者と、アジュカンダスを倒した人族は別だ。勇者を始末すれば、確実にその人族と敵対することになるぞ」


 ジャネンが自称冥王を止める。

 チラリと一瞬オレを見ていた気がした。


「え、そうナノ? それは不味いネ。普段なら面白そうなんだけど、今は我が神の大事な時期······。余計なトラブルは避けたいネ」


 意外とあっさり、自称冥王は高めた魔力を元に戻した。


「というわけで、今のは冗談ダヨ、ジョーダン。さっきも言ったけど、僕はコイツを助けに来たダケ。もう用は済んだから僕は帰るヨ」


 おどけた感じに自称冥王が言う。

 冗談という雰囲気ではなかったが、今は本当に敵意みたいなのは感じない。


 それにしても()()()()()()()()()······か。

 学園地下迷宮の冥王も同じことを言っていたな。

 冥界の神とやらは、何をしようとしているんだ?

 このまま放っておいて大丈夫なのかな?


「ジャネン、冥界には自力で帰って来いヨ? そこまで面倒を見る気はないかラネ」

「············もとよりそのつもりだ。それにまだ、この地での用事が済んでいない」

「ああ、()()()()()()()()尻ぬぐいダネ。ご苦労サン」


 何の話かよくわからないな。

 アジュカンダス······冥王の尻ぬぐい?


「なるべく急げヨ? もう他の冥王達(やつら)の準備も整ってきテル。手伝ってやりたいけど、僕も自分の使命で手いっぱいだかラネ」

「······言われなくてもわかっている」

「それじゃあバイバイ。龍人族の子も人族の子達も、お騒がせしタネ」


 自称冥王がそう言うと、透けていた身体がさらに薄くなっていき、完全に消えていった。

 探知魔法でも反応がなくなった。

 言葉通り、去っていったようだな。





「驚いたのう。まさか冥王が直々にやってくるとは」


 静まり返っていたところに、エンジェが口を開いた。他の皆は、まだ自称冥王の威圧の効果が残っていて、緊張した表情だ。


「エンジェ、今の奴を知ってるのか?」

「自分で言っておったように、奴は冥王の一柱じゃ。冥王テュサメレーラ。幽体(レイス)系などのアンデッドを束ねる王じゃな」


 やはり本物の冥王で間違いないようだ。

 アジュカンダスという冥王は、グール系を束ねる王だったな。

 冥王によって従えているアンデッドの種類が違うのか。


「冥界の神の目的とか、心当たりはある?」

「いや、すまぬがワシにもさっぱりじゃ」


 エンジェも冥王達が何をしようとしているのかはわからないか。

 目的がわからないと動きようがないな。

 邪魔するべきなのか、放っておくべきなのか。

 悪いことをしているわけじゃないならいいんだけど。



「············くっ」

「おっと」


 ジャネンが倒れそうになったのを支えた。

 呪いは消えたけど、ジャネンの体力は尽きる寸前だ。しばらく安静にしていた方がいいだろう。


 それにしてもジャネンの身体、ずいぶん軽いな。

 髪が蛇になっているのを除けば、小柄な普通の少女としか思えない。




 ジャネンは消耗しているし、テリア達やセーラ達も冥王から受けた緊張が残っている。

 周囲に魔物の気配もないし、しばらくここで休んだ方がいいだろう。



 現状把握のために話も聞きたいしね。





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