254 解呪不可能の呪い?
みんなで力を合わせて、ジャネンを呪いから解放してあげよう。
「アアアーーッ!!」
暴走したジャネンが、無数の蛇を放ってきた。
蛇はこの場にいる全員を無差別に襲う。
この蛇だけで、レベル100くらいの強さがありそうだ。
オレ達なら撃退は可能だが、数が多いと厄介だ。
この蛇はジャネンの髪の毛なのだが、放ったらすぐに元通りに髪が生えているので、実質無限湧きかもしれない。
「スコールアロー!!」
テリアが(物質具現化)スキルで弓矢を作り出し、連続で放った。
矢が雨のように降りそそぎ、蛇を撃退していく。
矢で貫かれた蛇は煙のように消滅した。
「セーラ様には指一本触れさせません!」
リンはセーラの盾となって、迫る蛇を撃退していた。そしてセーラはリンを信じて、魔法の詠唱をしている。
「悪しき〝邪〟を滅せよ······ホーリーリュオーラ!」
セーラが「聖」の最上級魔法を放った。
さっきよりも強力な魔法だ。
「グアアアーーーーッ!!?」
「聖」なる光を浴びてジャネンが苦痛の叫びをあげた。
······ジャネンごと消滅したりしないか?
そう心配になったが、今度は正気に戻る様子もなく、呪いの力がさらに増していた。
「聖」の最上級魔法でも駄目なのか。
「龍神の神子よ、ワシに合わせよ! あの冥界の者を抑えるぞ」
「承知した、見知らぬ人族よ!」
エンジェがシャルルアの魔力を利用してジャネンの動きを封じた。
それにしても龍神の神子?
また気になる単語が出てきたな。
いや、そんなことを気にしてないで、目の前の問題を解決しないとな。
オレの魔法の準備も整った。
「アブソルティ·サンクチュアリ!!!」
オレは魔法で、周囲一帯を「聖」なる場に変えた。
ほんの10分ほどだが、これでこの場は最上級魔法以上の「聖」属性で満ちた。
「······あ、ぐ······」
ジャネンが膝をついた。
呪いの力が弱まり、正気に戻っているように見える。
「ジャネン! 大丈夫なの!?」
「正気を取り戻したかっ!?」
テリアとシャルルアがジャネンに駆け寄る。
ちゃんと「聖」属性の効果で、呪いの力を抑えられているようだ。
「······テリア、それに······龍神の神子シャルルア······そ、某に、この地を害する意思はない······」
ジャネンが息も絶え絶えに言う。
まだ完全には呪いから解放されてないみたいだ。
「わかっておる、お主もユウ同様に、妾達龍人族の恩人じゃ! お主が呪いに冒されたのも、妾達を神将の攻撃から庇ったためじゃろう!」
何の話かはよくわからないが、この地で色々あったみたいだな。
確か聖女エレナは、龍人族の国の危機を救ってほしいという神託を受けてたんだよな。
話の内容から察するに、神将とかいう魔人族が攻めてきたのかな?
そしてどういう理由かは知らないが、ジャネンも龍人族に味方して神将と戦い、呪いを受けたと。
こんな高レベルのジャネンを呪うなんて、神将って奴は相当、ヤバい相手だったんじゃないか?
「神将とは魔神ディヴェード直属の手先のことじゃ。魔神の加護を深く受けている、例えるならば聖女や神子と似たような立場じゃな。その力は魔王をも上回るはずじゃ」
エンジェがそう教えてくれた。
魔王をも上回るって、そんなのがいるのかよ。
龍人族の国はそんな奴に攻めてこられていたのか。
「魔王よりも上の存在······ですか」
「大変な事態じゃないですか! すぐにでも本殿に戻り、報告しなければ······」
セーラとリンが言う。
魔王を上回るということは、冥王すらも上回るかもしれない相手だ。
今のオレでも倒せるかわからない。
アイラ姉達も連れてきた方がいいか······。
「大丈夫、神将はユウが討ちましたから。けど、そのせいでユウは······」
話を聞いていたテリアがそう言った。
倒した? 魔王を上回るような奴を?
一本どうやって?
もしかして、テリア達のレベルが異常に高いのは、魔王すら上回る、遥か格上の相手を倒したからか?
オレ達が冥王を倒して大幅にレベルアップしたように。
まあ、どうやってとかは今はいい。
それよりもテリアの口調が暗い。
ユウもジャネンのように呪いでも受けているのか?
オレが受けた神託によれば、魂の消滅の危機になっているんだったか。
「うぐ······シャルルアよ、今の内に······某を殺してくれ······! こ、このままでは再び呪いが暴走する······」
ジャネンの周囲に再び呪いの力が溢れてきた。
オレが使える最高の「聖」魔法でも、呪いを完全に消せないのか。
もうすぐ「聖」なる場の効果も切れそうだ。
「そんなことが出来るわけなかろう······!」
シャルルアもジャネンを手に掛けるのを躊躇っている。テリアも同様だ。
オレだって見捨てたくはない。
――――――――――!!!
どうするべきか考えていた時、突然目の前に魔法陣が浮かび上がった。
あれは確か召喚陣というやつだ。
学園地下迷宮で冥王が使っていたのと同じやつだな。
「はいはーい。なら、ここはこの僕に任せてくれないカナ?」
召喚陣から何者かが姿を現した。
なんだ? 敵か? 味方なのか?
現れたのは見た事のない、少年のような人物だった。