246 露天風呂での騒動
迷宮から脱出した後、里の露天風呂までミウとキリシェさんを案内した。
ミール達も丁度、オレ達のように入りにきたようで、後の案内はみんなに任せてオレとユーリの二人で男湯に向かった。
他に利用している人はいない時間帯だったので、男湯はオレとユーリの貸し切り状態だ。
軽く汗を流してから温泉に浸かる。
やはり天然温泉というのは、気分的にもいいものだ。ユーリも気持ち良さそうに浸かっている。
女湯の方からは楽しそうな声が響いてきている。残念ながら、会話の内容までは聞き取れないが。
ゆっくりできるのもいいけど、男はオレとユーリしかいないのが、少し寂しい気がするな。
「絶滅したと聞いていた幻獣人族が、こんなにたくさん、普通に暮らしていることに驚きましたよ」
ユーリにとって幻獣人族の里は驚きの連続だったらしい。かなり熱心に里を回っていたようだ。
神樹も早く、自分の目で見てみたいと言っている。
「ところでユーリ、いつの間にか加護が〈中〉になってるけど、シノブと何かあったのか?」
気になっていたので、せっかくだから聞いてみることにした。オレもミールとリンとの加護が〈中〉になっているのはそれなりのことをしたからだ。
肉体関係一歩手前と言える。
シノブとユーリもそこまで進んでいるのか?
「えっと······それはですね······」
言いにくそうに口ごもるユーリ。
まあ、説明しづらいことをしたのだろうけど。
――――――――――ガラッ
そんな時、入口の扉が開いた。
誰か他に利用客が来たのかな?
そう思って振り返ると············。
「うふふ、来ちゃったわ〜、レイ君、ユーリ君」
入ってきたのはキリシェさんだった。
バスタオルを巻いて、身体を隠しているだけの姿だ。
なんでキリシェさんがこっちに!?
ユーリも顔を赤くして驚いている。
「キ、キリシェさん······なんで男湯に?」
「レイ君、迷宮探索で疲れているでしょ〜? お姉さんが背中を流してあげるわよ〜」
疲れているのはキリシェさんも同じじゃないかな?
この世界は、女の人の男湯への侵入率が高すぎる気がするんだが。
お風呂が一般的じゃないからかな?
他の皆はどうしたのかな?
「皆は話に夢中だからこっそり抜けて来たのよ〜」
どうやら来たのはキリシェさんだけらしい。
もしかしたら他の皆も来たのかと思ったので、ホッとしたような、少し残念なような······。
まあわそれはいいとして。
キリシェさん、こうして見ると破壊力抜群のスタイルだ。特に胸がバスタオルからはみ出しそうなくらい······。
まずい······思わず目が行ってしまう。
「うふふ、やっぱり二人とも男の子ね〜」
目を逸らしているつもりだったが、やはり視線に気付かれてしまったらしい。
ユーリもオレと同じ気持ちのようだ。
――――――――――ガラッ
そこに、さらに侵入者が現れた。
「レイさんー! あ、あたしもこっちに来ちゃいま············ってキリシェさんー!? さ、先を越されちゃってますー!?」
ミウだった。
キリシェさんと同じく、バスタオルだけの姿だ。
「姉さんまで何してるんですかっ!?」
ユーリが顔を真っ赤にして叫んだ。
「うー······みんなに気付かれないように、こっそりと勇気を出して来たのにー······」
キリシェさん同様に、ミウもこっそり抜けてきたのか。このパターンだと、他の皆もその内来そうな気がする。
それにしても、ミウには見られたことはあったけど、見るのは初めてかも。
バスタオルの上からでも、なんとなくスタイルがわかる。キリシェさん程じゃないけど、それなりにふくらんだ胸に目が行ってしまう。
「レ、レイさんー? そんなにジッと見られると恥ずかしいんですけどー······」
しまった······つい、視線が止まっていた。
ミウも冷静になったのか、羞恥の表情になっている。
「ミ、ミウはなんで男湯に······?」
視線を誤魔化すためにミウに問いかけた。
オレも男だし、二人の裸を見てたら、湯船の中の下半身のある部分がヤバいことになりかけている。
「······あたしだけ正式な加護を受けていないのがちょっと悔しくて、思い切って来ちゃいましたー! 迷宮でも、あたしだけ足手まといになってそうでしたしー······」
ミウが顔を赤くして言う。
そういえばこのメンバーで正式な加護じゃないのは、グレンダさんとミウ、特に女の子の中ではミウだけだったな。
別に足手まといにはなってなかったけど、不公平を感じるのも仕方無いのかも······。
「うふふ、じゃあミウちゃんも一緒にレイ君の身体を洗ってあげましょう〜。大丈夫よ〜、レイ君〜。アイラにも、いつもやってることだから〜」
やってるって何を!? まずい······。
今、アイラ姉はグレンダさんとクラントールの町に行っているので、助けを期待できない。
「ユーリ君も洗ってほしいのかな〜? 仲間外れは不公平よね〜」
「い、いえ······ぼ、ぼくはその······」
ユーリもキリシェさんの迫力にたじろいでいる。
ミウも改めてテンパってきたのか、変な感じに乗り気になっていた。
男としては嬉しいシチュエーションなのかもしれないけど、このまま流されるのはまずい気がする。